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只今会議中
「夜分遅くにすまない。皆に集まってもらったのは他でもない。……本日の議題はこれだ」
夜10時。ガンマ団本部の会議室で開かれた緊急会議。この時間帯は昼間の疲れが出てくる。集まったメンバーは眠い目を擦り、欠伸を時折溢していた。
議長のキンタローを始めとし、伊達衆と呼ばれるミヤギ、トットリ、アラシヤマ、コージの四人。彼らはロの字型の長机に等間隔で席についている。そして議長の隣にはガンマ団総帥。シンタローの顔はどこか落ち込んでいる様子だ。
さて、彼らに提示された会議内容とは。キンタローがホワイトボードの半分を埋める勢いででかでかとマーカーで示した。
『ガンマ団総帥の良い所をアピールしよう』
なんだこれ。
伊達衆四人組は一同、ツッコミをすかさず入れた。こんな夜遅くに一体なんなのか。任務から帰ってきたばかりでの召集だ。これには「ふざけんな!」と叫びたくなるもの。議題の張本人が同席していなければ間違いなく声を揃えていたに違いない。
シンタローは項垂れ、頭を抱えるようにしていた。どうやらこの議題を口にしたのは本人ではなさそうだ。この男が自ら言い出すようなものじゃないな、とミヤギは一つ咳払い。
「急にどうしたんだべ?今更ガンマ団のイメージアップでもすんのか」
「そもそもアピールって誰にすっとー?」
「2週間前に此処へ来た女性だ。お前達もよく知っているはずだろう」
必要ならばターゲットの資料を提示する。そう言うとキンタローは大学ノートを懐から取り出し、キンタローはパラパラとノートを捲る。
「霧華・葉月。性別は女性。身長体重は」
「ええどす。女性のプライバシーをむやみやたらに公表するんはあきまへん」
「そうか。ならば止めておこう」
つい先日のことだ。パプワ島から弟のコタローが連れ戻された。この案件には彼らも深く関わっている。その際、島に流れ着いていたというアオイの姉も連れてきたのだ。彼女たっての希望だとシンタローは話していたが、それが本当かは疑わしい。脅して無理やり連れてきたのではと考える者も少なくない。
「そんごとより、アオイの姉さんにイイトコ見せたいって、どした?」
「ああ。どうも彼女がシンタローを避けているそうでな」
「そらぁー仕方ないっちゃ。こうして人攫いに遭ったんだら。そげな男嫌うに決まってるちゃね。なーミヤギくん」
「んだ。しかも島であいつとええ感じに暮らしとったべ。それを無理やり引き離しちまった。ありゃ嫌われてるべな」
「トットリ、ミヤギ。お前ら減給」
沈黙していたシンタローがぽそりと声を出す。唐突な宣告をされた二人を横目に、コージは己が被害を被らないよう発言を控えようと決めた。
「ふふ……あの人もわてと同じで照れ屋さんなんどすなあ」
「霧華がおめーと同じだったら気持ち悪いっつーの」
「まあ、大体話は見えたもんじゃ。つまり、シンタローの株を上げろっちゅーわけだな」
見事に的を射たコージにキンタローがこくりと頷く。機嫌悪そうにしているイトコの顔を見、わざとらしく溜息をついてみせた。
「ここ数日、誘いを断られ続けるシンタローを見ていると哀れでならない」
「んー……誘い方に問題あるとか?」
「フツーに声かけてるだけだ。お茶しないかって聞いたら先約がある。昼飯食いに行かないかって声かけたらもう食い終わった。団内の施設案内するって言えばアオイにもうしてもらったとか。昨日は廊下で挨拶しようとしたら逃げられた」
確かに目が合っていたのに。今までの惨敗歴を振り返るシンタローのモチベーションががくっと下がっていく。まさに意気消沈。
「それ、完璧に嫌われてるっちゃね」
「わしらがお茶に誘った時は来よったしのう」
「うわっバカっ、コージ!そげなこと言ったら、シンタローが傷つくべ!」
「シンタローはん、お茶ならわてと」
「よーしおめーら、歯ァ食いしばれ」
深夜の会議室は盛り上がりを見せる一方。だが、肝心の議題は全く煮詰まらない。
暴力反対。酷い。そんなんだから嫌われるんだとギャアギャア騒ぐ様をキンタローは生暖かい目で見守っていた。
「俺が思うには、単にタイミングが悪いだけだと」
「目逸らすのもか」
「アオイに聞いた話では人見知りだそうだ」
「その割にコイツらと仲良さそうじゃねーかよ」
「僕らは島で顔合わせてっとぉ。ただシンタローの見た目が怖」
トットリが「怖い」と言い切る前にミヤギが慌ててその口を手で塞いだ。地獄耳でそれを拾い上げたシンタローが「誰が怖いって?」とじろりとトットリを睨みつける。メンチを切るようなその様が女性にとって恐怖なのだ。
「ま、早い話……シンタローはんの良い所をわてらが霧華はんにそれとなーく伝えていけばよろしいんどす」
「珍しく協力的じゃのうアラシヤマ」
「ふふふ……わての最大の目的を遂行する為。それは、シンタローはんの結婚式で仲人を務めること!心友との日々を赤裸々に語らせていただきますう」
「いや呼ぶ気ねーし。つーか話が飛躍しすぎだろ……ただ、も少し話出来りゃいーなーと」
シンタローが霧華とまともに会話を交わしたのはパプワ島が最後である。
二人の間で誤解は既に解けているはずだ。もしもガンマ団そのものを恨んでいるのならば、他の者たちと気軽に話もできないはず。何か理由があってシンタローとのみぎくしゃくしている。ただその糸口が掴めずにいた。
「んー……シンタローのアピールポイント。二度死んでも生き返る男、とかどうっちゃ」
「おお、強そうなアピールじゃのう」
「カタギの娘さんがそんな物騒な男、好きになります?一緒にいたら危険や思いますわ」
「それいいな。次の求人広告に載せてもらおう」
「何いいキャッチフレーズ閃いた的な顔してやがる。やっと殺害関連の予告が減ってきたんだ。んなの載せたらまた増えっだろーが」
「全くおめーらなってねえべ。女の子口説くんならその子の好きなもんで気い引かねえとダメだべ」
同僚の話を聞いていたミヤギは自分は一味違うと胸を張る。顔がいいだけに女性関連は得意なのか。あまり期待せずに「例えば」とシンタローは投げやりに尋ねた。
「今、霧華ちゃんの部屋作ってるんだべ?」
「ああ。内装はこれからだ。思った以上に工事が捗らなくてな」
「だったら丁度いいべ。霧華ちゃんの好みにしてやればいいさ」
「あーなるほど!さっすがミヤギくん!気が利くね作戦だっちゃな」
「好みね……その辺はアオイに聞かねーとわかんねえな」
好きな色、食べ物すら知らない。なにせまともに話せていないのだから。それが自分だけかと思うと、部下たちに妬みさえ抱きそうだとシンタローは目を伏せた。
「彼女はテディベアが好きなんだろう?だったら部屋一面をテディベアで埋め尽くすと言い」
「どこのホラー映画だよ……それは流石に引くだろ」
裁縫スキルを活かして手作りのテディベアを部屋に置いたらどうか。手料理を振舞ってはどうか。花を飾る、乙女憧れの天蓋付きふかふかベッド、景色が綺麗なバルコニーを設ける。などなど、アイディアが飛び交う夜更けの会議。時計の針は23:51を回った。
「夜分遅くにすまない。皆に集まってもらったのは他でもない。……本日の議題はこれだ」
夜10時。ガンマ団本部の会議室で開かれた緊急会議。この時間帯は昼間の疲れが出てくる。集まったメンバーは眠い目を擦り、欠伸を時折溢していた。
議長のキンタローを始めとし、伊達衆と呼ばれるミヤギ、トットリ、アラシヤマ、コージの四人。彼らはロの字型の長机に等間隔で席についている。そして議長の隣にはガンマ団総帥。シンタローの顔はどこか落ち込んでいる様子だ。
さて、彼らに提示された会議内容とは。キンタローがホワイトボードの半分を埋める勢いででかでかとマーカーで示した。
『ガンマ団総帥の良い所をアピールしよう』
なんだこれ。
伊達衆四人組は一同、ツッコミをすかさず入れた。こんな夜遅くに一体なんなのか。任務から帰ってきたばかりでの召集だ。これには「ふざけんな!」と叫びたくなるもの。議題の張本人が同席していなければ間違いなく声を揃えていたに違いない。
シンタローは項垂れ、頭を抱えるようにしていた。どうやらこの議題を口にしたのは本人ではなさそうだ。この男が自ら言い出すようなものじゃないな、とミヤギは一つ咳払い。
「急にどうしたんだべ?今更ガンマ団のイメージアップでもすんのか」
「そもそもアピールって誰にすっとー?」
「2週間前に此処へ来た女性だ。お前達もよく知っているはずだろう」
必要ならばターゲットの資料を提示する。そう言うとキンタローは大学ノートを懐から取り出し、キンタローはパラパラとノートを捲る。
「霧華・葉月。性別は女性。身長体重は」
「ええどす。女性のプライバシーをむやみやたらに公表するんはあきまへん」
「そうか。ならば止めておこう」
つい先日のことだ。パプワ島から弟のコタローが連れ戻された。この案件には彼らも深く関わっている。その際、島に流れ着いていたというアオイの姉も連れてきたのだ。彼女たっての希望だとシンタローは話していたが、それが本当かは疑わしい。脅して無理やり連れてきたのではと考える者も少なくない。
「そんごとより、アオイの姉さんにイイトコ見せたいって、どした?」
「ああ。どうも彼女がシンタローを避けているそうでな」
「そらぁー仕方ないっちゃ。こうして人攫いに遭ったんだら。そげな男嫌うに決まってるちゃね。なーミヤギくん」
「んだ。しかも島であいつとええ感じに暮らしとったべ。それを無理やり引き離しちまった。ありゃ嫌われてるべな」
「トットリ、ミヤギ。お前ら減給」
沈黙していたシンタローがぽそりと声を出す。唐突な宣告をされた二人を横目に、コージは己が被害を被らないよう発言を控えようと決めた。
「ふふ……あの人もわてと同じで照れ屋さんなんどすなあ」
「霧華がおめーと同じだったら気持ち悪いっつーの」
「まあ、大体話は見えたもんじゃ。つまり、シンタローの株を上げろっちゅーわけだな」
見事に的を射たコージにキンタローがこくりと頷く。機嫌悪そうにしているイトコの顔を見、わざとらしく溜息をついてみせた。
「ここ数日、誘いを断られ続けるシンタローを見ていると哀れでならない」
「んー……誘い方に問題あるとか?」
「フツーに声かけてるだけだ。お茶しないかって聞いたら先約がある。昼飯食いに行かないかって声かけたらもう食い終わった。団内の施設案内するって言えばアオイにもうしてもらったとか。昨日は廊下で挨拶しようとしたら逃げられた」
確かに目が合っていたのに。今までの惨敗歴を振り返るシンタローのモチベーションががくっと下がっていく。まさに意気消沈。
「それ、完璧に嫌われてるっちゃね」
「わしらがお茶に誘った時は来よったしのう」
「うわっバカっ、コージ!そげなこと言ったら、シンタローが傷つくべ!」
「シンタローはん、お茶ならわてと」
「よーしおめーら、歯ァ食いしばれ」
深夜の会議室は盛り上がりを見せる一方。だが、肝心の議題は全く煮詰まらない。
暴力反対。酷い。そんなんだから嫌われるんだとギャアギャア騒ぐ様をキンタローは生暖かい目で見守っていた。
「俺が思うには、単にタイミングが悪いだけだと」
「目逸らすのもか」
「アオイに聞いた話では人見知りだそうだ」
「その割にコイツらと仲良さそうじゃねーかよ」
「僕らは島で顔合わせてっとぉ。ただシンタローの見た目が怖」
トットリが「怖い」と言い切る前にミヤギが慌ててその口を手で塞いだ。地獄耳でそれを拾い上げたシンタローが「誰が怖いって?」とじろりとトットリを睨みつける。メンチを切るようなその様が女性にとって恐怖なのだ。
「ま、早い話……シンタローはんの良い所をわてらが霧華はんにそれとなーく伝えていけばよろしいんどす」
「珍しく協力的じゃのうアラシヤマ」
「ふふふ……わての最大の目的を遂行する為。それは、シンタローはんの結婚式で仲人を務めること!心友との日々を赤裸々に語らせていただきますう」
「いや呼ぶ気ねーし。つーか話が飛躍しすぎだろ……ただ、も少し話出来りゃいーなーと」
シンタローが霧華とまともに会話を交わしたのはパプワ島が最後である。
二人の間で誤解は既に解けているはずだ。もしもガンマ団そのものを恨んでいるのならば、他の者たちと気軽に話もできないはず。何か理由があってシンタローとのみぎくしゃくしている。ただその糸口が掴めずにいた。
「んー……シンタローのアピールポイント。二度死んでも生き返る男、とかどうっちゃ」
「おお、強そうなアピールじゃのう」
「カタギの娘さんがそんな物騒な男、好きになります?一緒にいたら危険や思いますわ」
「それいいな。次の求人広告に載せてもらおう」
「何いいキャッチフレーズ閃いた的な顔してやがる。やっと殺害関連の予告が減ってきたんだ。んなの載せたらまた増えっだろーが」
「全くおめーらなってねえべ。女の子口説くんならその子の好きなもんで気い引かねえとダメだべ」
同僚の話を聞いていたミヤギは自分は一味違うと胸を張る。顔がいいだけに女性関連は得意なのか。あまり期待せずに「例えば」とシンタローは投げやりに尋ねた。
「今、霧華ちゃんの部屋作ってるんだべ?」
「ああ。内装はこれからだ。思った以上に工事が捗らなくてな」
「だったら丁度いいべ。霧華ちゃんの好みにしてやればいいさ」
「あーなるほど!さっすがミヤギくん!気が利くね作戦だっちゃな」
「好みね……その辺はアオイに聞かねーとわかんねえな」
好きな色、食べ物すら知らない。なにせまともに話せていないのだから。それが自分だけかと思うと、部下たちに妬みさえ抱きそうだとシンタローは目を伏せた。
「彼女はテディベアが好きなんだろう?だったら部屋一面をテディベアで埋め尽くすと言い」
「どこのホラー映画だよ……それは流石に引くだろ」
裁縫スキルを活かして手作りのテディベアを部屋に置いたらどうか。手料理を振舞ってはどうか。花を飾る、乙女憧れの天蓋付きふかふかベッド、景色が綺麗なバルコニーを設ける。などなど、アイディアが飛び交う夜更けの会議。時計の針は23:51を回った。