落とされた歯車 封神演義(WJ)

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1.空からの落とし物


 落ちる。
 身体が重力によって吸い寄せられるがまま、真っ逆さまに落ちていく。
 飛ぶ鳥や白い雲だとか果てのない地平線を視覚で認識出来たのは僅かな時間。落下速度に思考回路はとてもじゃないがついていけず、目の前が真っ暗になった。
 薄れていく意識の中、霧華は自らの最期を覚悟した。





 崑崙山、紫陽洞のとある場所。数年前に此処の師に弟子入りをした黄天化は空気の変化を察知した。岩肌が露出している一角。側には小さな川と滝が流れる場所もある。この場所を己の稽古場としていた。今日も今日とて鍛練に励んでいたのだが、妙な気配を感じて動きを止める。
 妖怪仙人とは違う。刺すような殺気でもない。何とも言い難いモノに天化は徐に空を仰いだ。真っ青に広がる大空。雨は降りそうにないが、と考えていた矢先にその異変の正体を見つけた。それは空に突如現れた黒い小さな点から始まり、段々と大きくなっていく。流れ星、いや隕石かと眺めていたがそうもいかなくなった。
 空から降ってくるのが人だと認識できた時にはもう天化は走り出していた。どこから落ちてきたのかは知らないが、あの速さで地面に衝突すれば仙道であろうと無事では済まない。人間だった場合は死に至る。
 天化の目と鼻の先、寸での所で滑り込み、受け止めた。反射的に目を瞑ってしまう。腕に重みを感じながらも恐る恐る目を開けた。天化の両腕に女性が横たわっていた。もしや死んでいるのでは、そう不安がよぎるも気を失っているだけのようでほっと胸を撫で下ろす。

 自分と同じ色の髪。肌は血の気が引いているせいか雪のように白い。人間界、仙界でも見たことのない、変わった服装。どこの誰なのか全く見当がつかずにいた。
 しばらく呆けていた天化は我に返り、兎に角この女性を何とかしなければ。先程滑り込んだ時に負った両腕の擦り傷も気にせずに、紫陽洞へと駆けだしていった。
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