おそ松さん
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6 SAME FACES
それは星が輝く夜だった。
いつものように屋体で話に華を咲かせている俺たちに災厄が降り注ぐとは誰も予想していなかっただろう。
「そういえば街角のお店にカラ松くんに似合いそうな服売ってたよ」
「ほう……気になる情報だ」
「ちょっと地味かもしれないけど」
「心配は無用。俺ならどんな服も着こなせるからな」
「じゃあ今度見に行く? それともお店の場所教えておこうか。売り切れたらやだもんね」
彼女は空になったグラスを静かに手放した。俺のグラスにはまだ半分以上ビールが残っている。あれほど豊かだった泡はとうに消えていた。
俺は365日自由な身の上、いつでも行動を起こせる。だが、彼女と共に行くとなると三日は先の話だ。
服と彼女とのショッピングデート。どちらを取るかなんて決まりきっている。
「この町も広いからな。是非とも案内役をお願いしたい」
「ん、わかったわ。じゃあ、来週の日曜日に10時に駅で待ち合わせ」
「最高の一日になりそうだぜ」
思いかけずデートの約束を取り付けられた。もしかして俺に気があるんじゃないのか。モテる男は辛いな。
どうやら幸運の女神が微笑んでくれているようだ。と思ったのも束の間。
ふと、俺は気配を感じて振り向いた。
暖簾がひらりと捲られ、そこに顔を覗かせたのは俺と全く同じ顔のマイブラザー。
刹那、俺たちは見つめあったまま固まった。先に動いたのは兄さんの方だった。
「いたいたあ。へーこれが噂の」
「お、おそ松兄さん……なぜここに」
「俺達の洞察力を見くびるなよ~?」
にいと不敵な笑みを浮かべた兄は俺の隣に顔を向ける。彼女は俺たちを見て目を丸くしていた。
「カラ松くん、双子だったの?」
「六つ子でーす」
五つの声が響く。兄の後ろに一斉に姿を現したマイブラザーズ。
この事態に俺は頭を抱えたくなる。まさかさっきの話も聞かれていたんじゃ。
「なんでお前らまで」
「抜け駆けはずるいよカラ松兄さん」
「くそ松が」
「最近こそこそ出掛けて行くと思ったら……やっぱりこういう事か」
「ホームラン!」
「な? やっぱ俺の言った通りだろ?」
やかましいやつらが増えたな。と、ぼやくチビ太の声が聞こえた。
全くだ。今すぐ帰ってくれ。
「え、すごい。六つ子初めて見た。すごい」
「あれ、カラ松兄さんから聞いてなかった? もー黙ってるなんてひどいよ」
「抜け駆けか?」
「別に抜け駆けしたつもりじゃ」
「ねーねー! 写真撮ろう! 六つ子初めて記念!」
「十四松良いこと言うなあ。チビ太、俺のスマホで撮ってよ」
「へいへい」
兄のスマホを渋々受け取るチビ太。すると我も我もと弟たちは自分のスマホを差し出した。
「だあーっめんどくせえだろ! おそ松から写真のデータもらえ! おら、撮るからさっさと並びやがれってんだ!」
所狭しと俺たちは二列になって並び始めた。トド松が彼女の隣をすかさずキープする。我が弟ながら抜かりがなさすぎる。
「オレ、ここー!」
「おい邪魔だくそ松」
「ほら、詰めないと写んないぞ。もっと寄って」
「とかなんとか言って、さりげなーく肩に手置くなよなーチョロ松」
「おい! 俺を追いやるなー! ここだと全く写らねえじゃないか!」
押せや押せやと彼女の周りに集まりつつ、さりげなく端へ追いやられた。
俺たちのやり取りにもはやチビ太は呆れている。
そんな時だ。女神が「こっちこっち」と俺に手招きをしてくれた。
彼女は自分の席を譲り、俺を座らせた。後ろからブーイングが聞こえるがこの際気にしない。
代わりに彼女はカウンターから顔を覗かせるような形に収まった。
「撮るぞー」
俺たちがメインの写真になってしまったが、それはそれで良いことにしよう。
彼女の笑顔が手元に残ったのだから。
それは星が輝く夜だった。
いつものように屋体で話に華を咲かせている俺たちに災厄が降り注ぐとは誰も予想していなかっただろう。
「そういえば街角のお店にカラ松くんに似合いそうな服売ってたよ」
「ほう……気になる情報だ」
「ちょっと地味かもしれないけど」
「心配は無用。俺ならどんな服も着こなせるからな」
「じゃあ今度見に行く? それともお店の場所教えておこうか。売り切れたらやだもんね」
彼女は空になったグラスを静かに手放した。俺のグラスにはまだ半分以上ビールが残っている。あれほど豊かだった泡はとうに消えていた。
俺は365日自由な身の上、いつでも行動を起こせる。だが、彼女と共に行くとなると三日は先の話だ。
服と彼女とのショッピングデート。どちらを取るかなんて決まりきっている。
「この町も広いからな。是非とも案内役をお願いしたい」
「ん、わかったわ。じゃあ、来週の日曜日に10時に駅で待ち合わせ」
「最高の一日になりそうだぜ」
思いかけずデートの約束を取り付けられた。もしかして俺に気があるんじゃないのか。モテる男は辛いな。
どうやら幸運の女神が微笑んでくれているようだ。と思ったのも束の間。
ふと、俺は気配を感じて振り向いた。
暖簾がひらりと捲られ、そこに顔を覗かせたのは俺と全く同じ顔のマイブラザー。
刹那、俺たちは見つめあったまま固まった。先に動いたのは兄さんの方だった。
「いたいたあ。へーこれが噂の」
「お、おそ松兄さん……なぜここに」
「俺達の洞察力を見くびるなよ~?」
にいと不敵な笑みを浮かべた兄は俺の隣に顔を向ける。彼女は俺たちを見て目を丸くしていた。
「カラ松くん、双子だったの?」
「六つ子でーす」
五つの声が響く。兄の後ろに一斉に姿を現したマイブラザーズ。
この事態に俺は頭を抱えたくなる。まさかさっきの話も聞かれていたんじゃ。
「なんでお前らまで」
「抜け駆けはずるいよカラ松兄さん」
「くそ松が」
「最近こそこそ出掛けて行くと思ったら……やっぱりこういう事か」
「ホームラン!」
「な? やっぱ俺の言った通りだろ?」
やかましいやつらが増えたな。と、ぼやくチビ太の声が聞こえた。
全くだ。今すぐ帰ってくれ。
「え、すごい。六つ子初めて見た。すごい」
「あれ、カラ松兄さんから聞いてなかった? もー黙ってるなんてひどいよ」
「抜け駆けか?」
「別に抜け駆けしたつもりじゃ」
「ねーねー! 写真撮ろう! 六つ子初めて記念!」
「十四松良いこと言うなあ。チビ太、俺のスマホで撮ってよ」
「へいへい」
兄のスマホを渋々受け取るチビ太。すると我も我もと弟たちは自分のスマホを差し出した。
「だあーっめんどくせえだろ! おそ松から写真のデータもらえ! おら、撮るからさっさと並びやがれってんだ!」
所狭しと俺たちは二列になって並び始めた。トド松が彼女の隣をすかさずキープする。我が弟ながら抜かりがなさすぎる。
「オレ、ここー!」
「おい邪魔だくそ松」
「ほら、詰めないと写んないぞ。もっと寄って」
「とかなんとか言って、さりげなーく肩に手置くなよなーチョロ松」
「おい! 俺を追いやるなー! ここだと全く写らねえじゃないか!」
押せや押せやと彼女の周りに集まりつつ、さりげなく端へ追いやられた。
俺たちのやり取りにもはやチビ太は呆れている。
そんな時だ。女神が「こっちこっち」と俺に手招きをしてくれた。
彼女は自分の席を譲り、俺を座らせた。後ろからブーイングが聞こえるがこの際気にしない。
代わりに彼女はカウンターから顔を覗かせるような形に収まった。
「撮るぞー」
俺たちがメインの写真になってしまったが、それはそれで良いことにしよう。
彼女の笑顔が手元に残ったのだから。
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