おそ松さん
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逢引きはおでん屋で
俺は夕方によく出掛けるようになった。橙色に黄昏る空を眺めながらの散歩も実に良いものだ。夕日に染まった雲がまた美しい。
「今夜も良い夜になりそうだ」
「……その声はカラ松か。お前最近よく来るようになったな」
「そうでもない。俺はいつも通りだ」
カウンター席についた俺は風で乱れた前髪を手櫛で直す。俺のその仕草を睨むように見てくるチビ太。
「とかなんとか言って、霧華目当てに来てんだろーが」
「おいおい。俺はおでんを食いに来てるんだぜ」
「どうだかな。おそ松達にバレても知らねえからな。で、注文は」
腹は満たされているので、まずはビールを頼もうとした時だった。暖簾がひらりと持ち上げられた。次に明るい声がカウンターに響く。まるで薄暗い闇に灯りがひとつ灯るような。
「こんばんはー。あ、カラ松くんいた」
「どうも。ここでまた会えるなんて奇遇だな」
「そうね。こう何度も会うと偶然じゃなくて必然かも」
「え、ああ……そう、だな」
思わぬ返しについ言葉を詰まらせる。
「らっしゃい。今日はビールか?」
「んー。今日はいいや。ちくわとこんにゃくください」
「あいよ」
彼女は飲む日もあれば、全く飲まない日もある。見ていてわかるのは酒に強いということ。シラフの時と比べて少しテンションが上がるぐらいで、泥酔はしない。記憶もしっかりとあり、約束したことも覚えている。つまり、酒の席だからと下手なことを言えない。
実にしっかりした女性だった。
そんな彼女と話をするのが密かな楽しみだった。自然と口元が緩んでいく。
「だいぶ冷えてきたね。体調崩してない?」
「勿論。霧華さんの方こそ風邪を引かないように気を付けて。そのカナリアのような声を失わないように」
「そうね、気を付けるわ」
「……思ったんだけどよ。霧華すげえよな。こいつの痛い発言を普通に受け止めてやがる」
痛い発言だと。俺はまた知らないうちに彼女を傷つけているというのか。しかし、痛がっている様子は全く見られないが。
「え、普通にこういう人いない?」
「いねえって」
「そうかしら」
「はあ……普通に会話してるおめえらがすげえよ」
「ふ、そんなに誉めるなよ」
「誉めてねえ!」
わかっているさ。俺がこの世で特別な存在ということを。いや、誰もがたった一人、特別な存在として生きていることを知っているさ。
俺は夕方によく出掛けるようになった。橙色に黄昏る空を眺めながらの散歩も実に良いものだ。夕日に染まった雲がまた美しい。
「今夜も良い夜になりそうだ」
「……その声はカラ松か。お前最近よく来るようになったな」
「そうでもない。俺はいつも通りだ」
カウンター席についた俺は風で乱れた前髪を手櫛で直す。俺のその仕草を睨むように見てくるチビ太。
「とかなんとか言って、霧華目当てに来てんだろーが」
「おいおい。俺はおでんを食いに来てるんだぜ」
「どうだかな。おそ松達にバレても知らねえからな。で、注文は」
腹は満たされているので、まずはビールを頼もうとした時だった。暖簾がひらりと持ち上げられた。次に明るい声がカウンターに響く。まるで薄暗い闇に灯りがひとつ灯るような。
「こんばんはー。あ、カラ松くんいた」
「どうも。ここでまた会えるなんて奇遇だな」
「そうね。こう何度も会うと偶然じゃなくて必然かも」
「え、ああ……そう、だな」
思わぬ返しについ言葉を詰まらせる。
「らっしゃい。今日はビールか?」
「んー。今日はいいや。ちくわとこんにゃくください」
「あいよ」
彼女は飲む日もあれば、全く飲まない日もある。見ていてわかるのは酒に強いということ。シラフの時と比べて少しテンションが上がるぐらいで、泥酔はしない。記憶もしっかりとあり、約束したことも覚えている。つまり、酒の席だからと下手なことを言えない。
実にしっかりした女性だった。
そんな彼女と話をするのが密かな楽しみだった。自然と口元が緩んでいく。
「だいぶ冷えてきたね。体調崩してない?」
「勿論。霧華さんの方こそ風邪を引かないように気を付けて。そのカナリアのような声を失わないように」
「そうね、気を付けるわ」
「……思ったんだけどよ。霧華すげえよな。こいつの痛い発言を普通に受け止めてやがる」
痛い発言だと。俺はまた知らないうちに彼女を傷つけているというのか。しかし、痛がっている様子は全く見られないが。
「え、普通にこういう人いない?」
「いねえって」
「そうかしら」
「はあ……普通に会話してるおめえらがすげえよ」
「ふ、そんなに誉めるなよ」
「誉めてねえ!」
わかっているさ。俺がこの世で特別な存在ということを。いや、誰もがたった一人、特別な存在として生きていることを知っているさ。