おそ松さん
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ひとつ屋根の下で
灯りのついたおでん屋台には先客がいた。暖簾をくぐった先に居たのは顔馴染みの店主と見慣れない若い女性。
二人は今まで談笑していたのか顔が綻んでいる。俺に気がつくとその顔の形のまま二人が振り向く。
「よお、カラ松。よく来たなあ」
「こんばんはー」
店主のちび太はともかく、見知らぬ女性にまで挨拶をされる。俺は思わず身構えてしまった。彼女はビールが波なみと注がれたグラスを片手にしていた。
別にこの女性の見た目が恐いわけでも、酒豪に見えたわけでもない。ただ、女性から声を掛けられたのが久方ぶりだったから。
「こんばんは。星空のキレイな夜にこんな素敵なレディに会えるとは俺はなんて幸運なんだ。隣、失礼しても?」
「あら、ありがとう。随分口の上手い方ね。どうぞ」
彼女はにこりと笑って隣を示した。俺の台詞は世辞と受け取られたようで、するりと流された。
遠慮なく彼女の隣に腰を下ろし、ビールと大根、ハンペンを頼む。
ちび太が品を用意している間、隣を盗み見る。端正な気品溢れる顔立ち。改めて言おう、綺麗な女性だ。
「おい、ちび太。此処にこんなレディが来るなんて聞いてないぜ」
「バーロー。誰がおめえらに話すかってんだ。大事な客でい」
「お兄さん、この店の常連さん?」
「ふっ……その通り。足しげく通いつめている客とは俺のこと」
ことり、と目の前にグラスと皿が置かれた。顔を上げるとじとりとした視線を感じた。
「ほー。んじゃあ今日は払ってくんだろうなあ?」
「そうだな……ふっ」
「かっこつけてんじゃねえよバーロー」
「おやっさん、ビールもう一杯」
「あいよ。霧華、飲みすぎじゃねえのか。客に向かって言うのもなんだけどよ」
彼女のグラスはすっかり空になっていた。灯りの色かと思っていたが、彼女の頬は酔いに染まっていた。
「大丈夫よ。記憶飛ばしたりしないから。自分の限界はわきまえているわ」
「そいつは有り難え。こいつらに爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいだぜ」
「あら。最近忙しくて爪の手入れしてないんだから、だーめ」
呂律が回らなくなってきているその言い方が可愛らしい。どうやらすっかり出来上がっているようだ。そのグラスのビールも何杯目なのか。
冷たいビールで喉を潤した後、湯気の立つ大根に箸を入れる。ああ、味の染みた大根は最高だな。
至福の一時を味わっている最中、隣からの視線があまりに気になるので振り向いた。
彼女と目が合う。
「お兄さん、ロックミュージシャン?」
「……へ?」
「いや、ほら。革ジャンとか着てるからそんな感じがして。デビュー済み? それともまだインディーズ? 今のうちにサイン貰っといた方がいいかしら」
「いや、その……」
只の趣味で着ているとは言い難い雰囲気だった。まあ、ミュージシャンに間違われるのも悪い気はしない。
「だーっはっはっは! カラ松がロックミュージシャン? わらっちまうぜー!」
腹を抱えながら大笑いするちび太。仰け反りすぎて踏み台から落ちそうになった。
「なんだあ。違うのね」
「落ち込む必要はないぜ。俺のサインが欲しいならいくらでも」
「カラ松のサインなんて貰ったってどうしようもねーや。なあ、霧華」
「そう? 出逢いました記念になるんじゃないかしら。ああ、でも今色紙もペンもないわ。そうだ、じゃあお兄さんの分は私が奢るわ」
なんでそうなるんだよ。ちび太の冷静な突っ込み。この女性、もしかしなくてもかなり酔ってるんじゃないか。
中々に支離滅裂なことを言い出す。だが、奢ってくれるというならば遠慮なく。
灯りのついたおでん屋台には先客がいた。暖簾をくぐった先に居たのは顔馴染みの店主と見慣れない若い女性。
二人は今まで談笑していたのか顔が綻んでいる。俺に気がつくとその顔の形のまま二人が振り向く。
「よお、カラ松。よく来たなあ」
「こんばんはー」
店主のちび太はともかく、見知らぬ女性にまで挨拶をされる。俺は思わず身構えてしまった。彼女はビールが波なみと注がれたグラスを片手にしていた。
別にこの女性の見た目が恐いわけでも、酒豪に見えたわけでもない。ただ、女性から声を掛けられたのが久方ぶりだったから。
「こんばんは。星空のキレイな夜にこんな素敵なレディに会えるとは俺はなんて幸運なんだ。隣、失礼しても?」
「あら、ありがとう。随分口の上手い方ね。どうぞ」
彼女はにこりと笑って隣を示した。俺の台詞は世辞と受け取られたようで、するりと流された。
遠慮なく彼女の隣に腰を下ろし、ビールと大根、ハンペンを頼む。
ちび太が品を用意している間、隣を盗み見る。端正な気品溢れる顔立ち。改めて言おう、綺麗な女性だ。
「おい、ちび太。此処にこんなレディが来るなんて聞いてないぜ」
「バーロー。誰がおめえらに話すかってんだ。大事な客でい」
「お兄さん、この店の常連さん?」
「ふっ……その通り。足しげく通いつめている客とは俺のこと」
ことり、と目の前にグラスと皿が置かれた。顔を上げるとじとりとした視線を感じた。
「ほー。んじゃあ今日は払ってくんだろうなあ?」
「そうだな……ふっ」
「かっこつけてんじゃねえよバーロー」
「おやっさん、ビールもう一杯」
「あいよ。霧華、飲みすぎじゃねえのか。客に向かって言うのもなんだけどよ」
彼女のグラスはすっかり空になっていた。灯りの色かと思っていたが、彼女の頬は酔いに染まっていた。
「大丈夫よ。記憶飛ばしたりしないから。自分の限界はわきまえているわ」
「そいつは有り難え。こいつらに爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいだぜ」
「あら。最近忙しくて爪の手入れしてないんだから、だーめ」
呂律が回らなくなってきているその言い方が可愛らしい。どうやらすっかり出来上がっているようだ。そのグラスのビールも何杯目なのか。
冷たいビールで喉を潤した後、湯気の立つ大根に箸を入れる。ああ、味の染みた大根は最高だな。
至福の一時を味わっている最中、隣からの視線があまりに気になるので振り向いた。
彼女と目が合う。
「お兄さん、ロックミュージシャン?」
「……へ?」
「いや、ほら。革ジャンとか着てるからそんな感じがして。デビュー済み? それともまだインディーズ? 今のうちにサイン貰っといた方がいいかしら」
「いや、その……」
只の趣味で着ているとは言い難い雰囲気だった。まあ、ミュージシャンに間違われるのも悪い気はしない。
「だーっはっはっは! カラ松がロックミュージシャン? わらっちまうぜー!」
腹を抱えながら大笑いするちび太。仰け反りすぎて踏み台から落ちそうになった。
「なんだあ。違うのね」
「落ち込む必要はないぜ。俺のサインが欲しいならいくらでも」
「カラ松のサインなんて貰ったってどうしようもねーや。なあ、霧華」
「そう? 出逢いました記念になるんじゃないかしら。ああ、でも今色紙もペンもないわ。そうだ、じゃあお兄さんの分は私が奢るわ」
なんでそうなるんだよ。ちび太の冷静な突っ込み。この女性、もしかしなくてもかなり酔ってるんじゃないか。
中々に支離滅裂なことを言い出す。だが、奢ってくれるというならば遠慮なく。