封神演義(WJ)
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独り占め
暦が十二月になると世間はクリスマスカラーに色づく。あっと言う間に染った赤と緑を眺めていると、自然にクリスマスソングを口にする。
長く人間界で生活をしている霧華にとっては至極当然の行事。馴染みの歌が聞こえると「ああ、もうそんな時期か」と今年一年を振り返るようになる。二十代を過ぎた頃から月日が経つ速さを痛感するようにもなった。
「のう、霧華。クリスマスとは家族で過ごす行事なのであろう?」
「基本的には、ね」
テレビをぼんやりと見ていた太公望がテレビコマーシャルを指し示すように尋ねた。画面に映った二人の男女が手を繋いで仲睦まじく歩いている。恋人たちのクリスマス、というワンフレーズがよく似合う二人だ。
いつしか家族で過ごす日から恋人と過ごす日に定着し、そしてそれがまた時代の移ろいで変化が生じていると。そんなことをつい最近聞いたのを霧華は思い出した。
「おぬしは良いのか?その、家族と過ごさんでも」
「うーん。残念ながら私の国ではクリスマスに実家に帰る習慣は無いの。他所の国ならクリスマス休暇っていうのがあるみたいだけど」
「そう、か……てっきりわしが居るから帰るに帰れぬのかと思っておったが」
ぽつりと漏らした言葉。太公望は肘を付いていた手の甲で口元を隠すように、目を逸らした。その彼の真意を霧華は瞬時に汲み取った。少し気恥ずかしそうに隣へ微笑みかける。
「今年は一人じゃなくて貴方が居るから寂しくないもの。クリスマスに一人でも別に関係ないわって強がってみても、やっぱり何だかんだで周りが羨ましいなあって思う事あったから」
「……それはつまり、…わしがおぬしを独占しても良いという事か」
「一緒に過ごしてくれますか?」
笑みを携えて小首を傾げてみせる。その仕草があまりにも可愛らしいので堪らず両腕を伸ばして抱きしめた。力加減に配慮する面がとても太公望らしいと、穏やかで心地の良い感覚に霧華は身を委ねていた。
「やっぱ今の無し、とかは受け付けんからの」
「私ってそんなに信用がないのかしら」
可笑しそうにそう尋ねた霧華が目線を上へと向ける。澄んだ空の色をした瞳が優しく微笑んでいた。
「まあ少なくともわしよりは信用できるかのう」
「それ、自分が嘘つきって認めてるわ。今までに思い当たる節が沢山あるみたいな言い方ね?」
的を得たような台詞に思わず太公望は言葉を詰まらせた。まるで過去の出来事を見ていたかのように思わせる。思い起こせば確かにある。数えきれない程だ。だがそれは全て策のうちの一つであり。と、言い訳を自分の中で渦巻かせている。そのうちに霧華が「冗談よ」と一つ笑った。
「そうそう、スーパーで桃のワインをこの間見かけたのよ。クリスマスの前の日に買っておくわね」
「おお!それは楽しみだ。ケーキはもう決めてしまったのか?」
「ううん。どれがいいか迷ってて……イチゴショートもいいけど、フルーツが沢山入ってるのも捨てがたいし。そうだ、一緒に買いに行く?」
「うむ、名案だ。クリスマスが待ち遠しいのう」
実はその日の為にこっそりとプレゼントを用意していた。小さな箱の包みを渡した時、彼女はどんな顔をするだろう。それを考えていた太公望に自然と笑みが綻ぶ。
この感情が嘘偽りのない愛情であることを誓おう。瞼の上にそっと口づけを落とした。
暦が十二月になると世間はクリスマスカラーに色づく。あっと言う間に染った赤と緑を眺めていると、自然にクリスマスソングを口にする。
長く人間界で生活をしている霧華にとっては至極当然の行事。馴染みの歌が聞こえると「ああ、もうそんな時期か」と今年一年を振り返るようになる。二十代を過ぎた頃から月日が経つ速さを痛感するようにもなった。
「のう、霧華。クリスマスとは家族で過ごす行事なのであろう?」
「基本的には、ね」
テレビをぼんやりと見ていた太公望がテレビコマーシャルを指し示すように尋ねた。画面に映った二人の男女が手を繋いで仲睦まじく歩いている。恋人たちのクリスマス、というワンフレーズがよく似合う二人だ。
いつしか家族で過ごす日から恋人と過ごす日に定着し、そしてそれがまた時代の移ろいで変化が生じていると。そんなことをつい最近聞いたのを霧華は思い出した。
「おぬしは良いのか?その、家族と過ごさんでも」
「うーん。残念ながら私の国ではクリスマスに実家に帰る習慣は無いの。他所の国ならクリスマス休暇っていうのがあるみたいだけど」
「そう、か……てっきりわしが居るから帰るに帰れぬのかと思っておったが」
ぽつりと漏らした言葉。太公望は肘を付いていた手の甲で口元を隠すように、目を逸らした。その彼の真意を霧華は瞬時に汲み取った。少し気恥ずかしそうに隣へ微笑みかける。
「今年は一人じゃなくて貴方が居るから寂しくないもの。クリスマスに一人でも別に関係ないわって強がってみても、やっぱり何だかんだで周りが羨ましいなあって思う事あったから」
「……それはつまり、…わしがおぬしを独占しても良いという事か」
「一緒に過ごしてくれますか?」
笑みを携えて小首を傾げてみせる。その仕草があまりにも可愛らしいので堪らず両腕を伸ばして抱きしめた。力加減に配慮する面がとても太公望らしいと、穏やかで心地の良い感覚に霧華は身を委ねていた。
「やっぱ今の無し、とかは受け付けんからの」
「私ってそんなに信用がないのかしら」
可笑しそうにそう尋ねた霧華が目線を上へと向ける。澄んだ空の色をした瞳が優しく微笑んでいた。
「まあ少なくともわしよりは信用できるかのう」
「それ、自分が嘘つきって認めてるわ。今までに思い当たる節が沢山あるみたいな言い方ね?」
的を得たような台詞に思わず太公望は言葉を詰まらせた。まるで過去の出来事を見ていたかのように思わせる。思い起こせば確かにある。数えきれない程だ。だがそれは全て策のうちの一つであり。と、言い訳を自分の中で渦巻かせている。そのうちに霧華が「冗談よ」と一つ笑った。
「そうそう、スーパーで桃のワインをこの間見かけたのよ。クリスマスの前の日に買っておくわね」
「おお!それは楽しみだ。ケーキはもう決めてしまったのか?」
「ううん。どれがいいか迷ってて……イチゴショートもいいけど、フルーツが沢山入ってるのも捨てがたいし。そうだ、一緒に買いに行く?」
「うむ、名案だ。クリスマスが待ち遠しいのう」
実はその日の為にこっそりとプレゼントを用意していた。小さな箱の包みを渡した時、彼女はどんな顔をするだろう。それを考えていた太公望に自然と笑みが綻ぶ。
この感情が嘘偽りのない愛情であることを誓おう。瞼の上にそっと口づけを落とした。