封神演義(WJ)
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5-2.追い越されて
酔いが回ってすっかり就寝モードの霧華はすやすやと眠っている。それはいいのだが、このままにしておくと風邪を引きかねない。寝室に連れて行ってやろうと背中と膝裏に腕を回して軽々と霧華を持ち上げた。が、そこであることに気が付いたというか思い出した。
霧華に部屋には絶対に入るなと言われていたのだ。それはもう何度も釘を刺されるほどに。女性の部屋に無断で入るのは気が引ける。だが、この場合は致し方ないのでは。しかし、翌朝に勝手に部屋に入ったことで怒られるのは嫌だ。
さてどうしたものか。何かいい解決方法は。もしかしたら今夜の事は覚えていないかもしれない。もし疑問に思われたなら自分で部屋に戻っていったと言えばよいか。
「何迷ってんだよ。とっとと連れていきゃいーだろ」
「いや、しかし……案外今夜のことを覚えてい」
話しかけてきた声に普通に返事をし、それからハッとして振返った。傍らにはスクリーンに浮かび上がる映像のような人物の姿。誰が見ても不健康そうだと言いかねない肌の色に目の下のクマ。長く尖った両耳にはいくつもの銀色のピアスが揺れている。
彼を見た太公望は声を張り上げそうになるのを堪える。
「って、なんでおぬしが此処にいるのだ!?」
「ヒマだからに決まってんだろ」
「ヒマって……おぬしなあ」
脱力した溜息をつき、とりあえず霧華をソファの上に寝かせることにした。このソファは背もたれを倒すことができるタイプで、平らにすればベッドの代わりにもなる。ここでいつも自分は寝ている。寒くないようにと毛布を肩までかけた。現状でできる精一杯のことはこれぐらいだ。
「っつーかよ、あーだこーだ悩んでねえでさっさと自分の女にしちまえばいい話だろうがよ」
「たわけ。こういうものは順序というものがあってだな……って聞いているのかおぬし」
魂魄の片割れである王天君は構わずにすいっと移動をして、霧華の横に降りた。頬杖をついたままその寝顔をじっと見ている。
「このお嬢ちゃんが三千年もかけてあんたが探してたやつなんだろ。仙界なり神界なりに連れてけばいいじゃねえか」
「……まだ確信が持てぬ」
「くくっ…惨めだな。"太公望"の姿の方が思い出しやすくなるかもしれないって言ってたのによ」
意を付いた発言に押し黙る太公望。不安要素がごろごろとそこら中に転がっているのだ。これを片づけずに受け入れてもらうのはこの上なく厳しい。
もう少しだけ時間が欲しいと口にした太公望に対し、思いの外快諾された。
「何日でも待ってやるさ。オレもこのお嬢ちゃんのこと嫌いじゃないからな」
他人に好意を持つとは珍しい。嫌うよりは幾分もマシかと胸を撫で下ろした瞬間、王天君が眠り姫の唇にちゅっと口づけをした。刹那、フリーズした太公望は今度こそ声を張り上げる。
「なっ何をしておる王天君!」
「いいだろ別に減るもんじゃないし、オレはお前なんだし?」
「うっ……言い返せぬ」
「じゃ、オレはまたその辺をふらついてくる。せいぜい頑張んな」
勝ち誇った憎たらしい笑みを浮かべた王天君の映像がぶんっと消えた。
先を越された感になんとも言い難い感情。向ける矛先がないので、ぐぐっと拳を握り締めていた。
いつかは全てを話さなければならない。
その時がきたら、受け入れてくれるだろうか。
おまけ
「……おかしい」
「ど、どうかしたのか?」
「ねえ、私昨日、多めに夕飯作ったよね。お鍋の中空っぽ。……気のせいだったのかしら」
「二人分しか作っておらんかったぞ(王天君め…つまみ食いしていきおったな)」
酔いが回ってすっかり就寝モードの霧華はすやすやと眠っている。それはいいのだが、このままにしておくと風邪を引きかねない。寝室に連れて行ってやろうと背中と膝裏に腕を回して軽々と霧華を持ち上げた。が、そこであることに気が付いたというか思い出した。
霧華に部屋には絶対に入るなと言われていたのだ。それはもう何度も釘を刺されるほどに。女性の部屋に無断で入るのは気が引ける。だが、この場合は致し方ないのでは。しかし、翌朝に勝手に部屋に入ったことで怒られるのは嫌だ。
さてどうしたものか。何かいい解決方法は。もしかしたら今夜の事は覚えていないかもしれない。もし疑問に思われたなら自分で部屋に戻っていったと言えばよいか。
「何迷ってんだよ。とっとと連れていきゃいーだろ」
「いや、しかし……案外今夜のことを覚えてい」
話しかけてきた声に普通に返事をし、それからハッとして振返った。傍らにはスクリーンに浮かび上がる映像のような人物の姿。誰が見ても不健康そうだと言いかねない肌の色に目の下のクマ。長く尖った両耳にはいくつもの銀色のピアスが揺れている。
彼を見た太公望は声を張り上げそうになるのを堪える。
「って、なんでおぬしが此処にいるのだ!?」
「ヒマだからに決まってんだろ」
「ヒマって……おぬしなあ」
脱力した溜息をつき、とりあえず霧華をソファの上に寝かせることにした。このソファは背もたれを倒すことができるタイプで、平らにすればベッドの代わりにもなる。ここでいつも自分は寝ている。寒くないようにと毛布を肩までかけた。現状でできる精一杯のことはこれぐらいだ。
「っつーかよ、あーだこーだ悩んでねえでさっさと自分の女にしちまえばいい話だろうがよ」
「たわけ。こういうものは順序というものがあってだな……って聞いているのかおぬし」
魂魄の片割れである王天君は構わずにすいっと移動をして、霧華の横に降りた。頬杖をついたままその寝顔をじっと見ている。
「このお嬢ちゃんが三千年もかけてあんたが探してたやつなんだろ。仙界なり神界なりに連れてけばいいじゃねえか」
「……まだ確信が持てぬ」
「くくっ…惨めだな。"太公望"の姿の方が思い出しやすくなるかもしれないって言ってたのによ」
意を付いた発言に押し黙る太公望。不安要素がごろごろとそこら中に転がっているのだ。これを片づけずに受け入れてもらうのはこの上なく厳しい。
もう少しだけ時間が欲しいと口にした太公望に対し、思いの外快諾された。
「何日でも待ってやるさ。オレもこのお嬢ちゃんのこと嫌いじゃないからな」
他人に好意を持つとは珍しい。嫌うよりは幾分もマシかと胸を撫で下ろした瞬間、王天君が眠り姫の唇にちゅっと口づけをした。刹那、フリーズした太公望は今度こそ声を張り上げる。
「なっ何をしておる王天君!」
「いいだろ別に減るもんじゃないし、オレはお前なんだし?」
「うっ……言い返せぬ」
「じゃ、オレはまたその辺をふらついてくる。せいぜい頑張んな」
勝ち誇った憎たらしい笑みを浮かべた王天君の映像がぶんっと消えた。
先を越された感になんとも言い難い感情。向ける矛先がないので、ぐぐっと拳を握り締めていた。
いつかは全てを話さなければならない。
その時がきたら、受け入れてくれるだろうか。
おまけ
「……おかしい」
「ど、どうかしたのか?」
「ねえ、私昨日、多めに夕飯作ったよね。お鍋の中空っぽ。……気のせいだったのかしら」
「二人分しか作っておらんかったぞ(王天君め…つまみ食いしていきおったな)」