がんばれゴエモン
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記憶が欠けた町娘
衝立をずらすと、壁に空いた穴が現れた。
その穴に向かって私は話しかける。
「ゴエモンさーん。いますかー」
「おー。なんでい?」
穴の向こう側からゴエモンさんの声が聞こえた。
まだご飯食べてないといいんだけど。
「良かったらお夕飯食べに来ませんか?」
「お呼ばれしちまっていいのかい」
「どうぞ。あ、まだ食べてなかったらでいいんですけど」
「ちょうど腹が減ってたところだぜ。お邪魔させてもらうとするか」
ゴエモンさんが席を立つ音を聞いてから衝立を元に戻した。
手頃な板が見つからなくて、壁にまだぽっかりと穴が空いたまま。
今のところ問題は起きてない。
夕飯はもう囲炉裏の傍に用意してある。
今は夏だから火を炊くことはない。けど、ご飯を食べる時は囲炉裏を囲んでいた。
玄関の戸がからりと開いて、ゴエモンさんがやってきた。
ゴエモンさんを出迎えて、居間に上がってもらう。
あれ、真っ先に駆け寄ってくると思った人が居ない。
「エビス丸さん、今日は居ないんですか」
「ああ、エビス丸は昼からどっかに出かけてるみてえだぜ」
「逢引ですかねえ」
「さあてな」
ゴエモンさんは苦笑いを浮かべていた。
私、何か変な事言ったかな。それにしても、料理が一人分余っちゃった。
元々みんなでご飯食べれたら、と思って作っていたから。
明日までこれ持ってくれるといいんだけど。ちょっと無理かなあ。
「おっ。なんか変わった料理だな」
「これオムライスって言うんです」
「へえ、随分ハイカラな料理じゃねえか。南蛮の料理かい?」
「南蛮…南蛮なのかなあ」
どこが起源の料理だったか、覚えてない。
日本じゃないことは確かなんだけど。
オムライスは箸じゃ上手く掴めないから、竹のスプーンを渡した。
どこの料理だったかと私は思い出そうとしていた。
「こいつは美味え!キリカは料理の天才だな」
「そうですか?有難うございます」
「…さっきから難しい顔して、どうしたんでい?」
オムライスの事を考えていたのに、段々色んな事も考えてしまった。
私の故郷はどこだったのか、好きな食べ物はなんだったとか。
「なんだかよく思い出せなくて」
「どういうことでい」
「私、こっちに来る前の記憶がどうもあやふやで、覚えてたり覚えてなかったりするんです」
「記憶喪失ってやつか?」
「そうなんですかねえ。そのうち戻るとは思うんですけど」
「そいつあ大変じゃねえか。だが、記憶ばっかしは思い出すしかねえよなあ」
がたん
今日のオムライスはちょっと味が薄かったかな。
そう思いながら食べていたら、また家の戸が開いた。
出入り口に背が低い、髷がふさふさした男の子が立っている。
彼は大きな風呂敷を背中に背負っていた。
なんだかその子に見覚えがある。気のせいかな。
「御免でござる。拙者サスケと申す」
「なんでいサスケじゃねえか」
「これはゴエモン殿。いらしたでござるか」
どうやらこの二人は知り合いみたい。
でも、どこかでこの人見たことがあるような。
「あっ!からくり屋敷に居た忍者の」
「拙者はキリカ殿と初対面でござる。屋敷に居たのは拙者の仲間でござるよ」
「じゃあ、あなたもからくり?」
「さよう。この度はじいさんが迷惑をかけて申し訳ないでござる」
サスケさんはぺこりと頭を下げた。
あ、言われてみれば手が真ん丸。屋敷に居たからくり忍者と同じ。
「おいおい、何がどうなってやがんだ?」
「掻い摘んで言えば、うちのじいさんの発明にキリカ殿が巻き込まれたのでござる」
「なんだってえ!またあのじいさんか」
「ええと、転送装置でしたっけ?」
「ってえことは、どっか遠い場所から来たってことかい」
「転送装置は転送装置でも、時代転送装置でござる。キリカ殿は別の時代から来た娘さんでござる」
これにゴエモンさんはあまり驚いた様子を見せなかった。
あのおじいさんとも知り合いってことは、度々トラブルがあって慣れてるんだろう。
「キリカ殿には記憶が無いとじいさんに聞いたのでござるが」
「ところどころ、ですけどね」
「自分が居た年号を思い出して貰わなければ、帰すにも帰せないと言っていたでござる」
「うーん…それが思い出せなくて、困ってるんです」
記憶の部分にもやがかかったみたいで、はっきりと思い出せない。
一年でもずれてしまうと歴史が変わってしまうそうだ。
「装置が復旧するまでには思い出すでござるよ」
「ま、それまで気長に待ってりゃいいじゃねえか」
「うん。お二人にはお世話かけます」
軽く頭を下げて二人に感謝の気持ちを表した。
私が頭を上げると、サスケさんも何故か頭を下げていた。
「拙者も世話になるでござる」
「え?」
「キリカ殿が帰るまでゴエモン殿の処に居候させてもらうでござる」
「なんだってえ!?」
お茶を飲んでいたゴエモンさんが噴出しそうになった。
出がらし、じゃなかったよね。大丈夫なはず。
「隣がゴエモン殿では心配でござる」
「サスケ…おめえ、おいらが頼りねえっていうのか」
「キリカ殿は大事な客人でござる。何かあってからでは遅いでござらぬか」
ここ大江戸では頻繁に事件が発生しているとサスケさんが話をしてくれた。
それを未然に防ぐ為に自分が来たのだという。
なんだか迷惑かけちゃって、ちょっと申し訳ないな。
「そういう訳で、ゴエモン殿しばらく厄介になるでござる」
「ったく…好きにしろい」
「ところで、この料理拙者も頂いて良いでござるか?」
一人分余っていたオムライスはサスケさんが食べてくれました。
因みに、エビス丸さんは茶屋で娘さんを口説いていたらしいけど、ふられちゃったみたいです。
衝立をずらすと、壁に空いた穴が現れた。
その穴に向かって私は話しかける。
「ゴエモンさーん。いますかー」
「おー。なんでい?」
穴の向こう側からゴエモンさんの声が聞こえた。
まだご飯食べてないといいんだけど。
「良かったらお夕飯食べに来ませんか?」
「お呼ばれしちまっていいのかい」
「どうぞ。あ、まだ食べてなかったらでいいんですけど」
「ちょうど腹が減ってたところだぜ。お邪魔させてもらうとするか」
ゴエモンさんが席を立つ音を聞いてから衝立を元に戻した。
手頃な板が見つからなくて、壁にまだぽっかりと穴が空いたまま。
今のところ問題は起きてない。
夕飯はもう囲炉裏の傍に用意してある。
今は夏だから火を炊くことはない。けど、ご飯を食べる時は囲炉裏を囲んでいた。
玄関の戸がからりと開いて、ゴエモンさんがやってきた。
ゴエモンさんを出迎えて、居間に上がってもらう。
あれ、真っ先に駆け寄ってくると思った人が居ない。
「エビス丸さん、今日は居ないんですか」
「ああ、エビス丸は昼からどっかに出かけてるみてえだぜ」
「逢引ですかねえ」
「さあてな」
ゴエモンさんは苦笑いを浮かべていた。
私、何か変な事言ったかな。それにしても、料理が一人分余っちゃった。
元々みんなでご飯食べれたら、と思って作っていたから。
明日までこれ持ってくれるといいんだけど。ちょっと無理かなあ。
「おっ。なんか変わった料理だな」
「これオムライスって言うんです」
「へえ、随分ハイカラな料理じゃねえか。南蛮の料理かい?」
「南蛮…南蛮なのかなあ」
どこが起源の料理だったか、覚えてない。
日本じゃないことは確かなんだけど。
オムライスは箸じゃ上手く掴めないから、竹のスプーンを渡した。
どこの料理だったかと私は思い出そうとしていた。
「こいつは美味え!キリカは料理の天才だな」
「そうですか?有難うございます」
「…さっきから難しい顔して、どうしたんでい?」
オムライスの事を考えていたのに、段々色んな事も考えてしまった。
私の故郷はどこだったのか、好きな食べ物はなんだったとか。
「なんだかよく思い出せなくて」
「どういうことでい」
「私、こっちに来る前の記憶がどうもあやふやで、覚えてたり覚えてなかったりするんです」
「記憶喪失ってやつか?」
「そうなんですかねえ。そのうち戻るとは思うんですけど」
「そいつあ大変じゃねえか。だが、記憶ばっかしは思い出すしかねえよなあ」
がたん
今日のオムライスはちょっと味が薄かったかな。
そう思いながら食べていたら、また家の戸が開いた。
出入り口に背が低い、髷がふさふさした男の子が立っている。
彼は大きな風呂敷を背中に背負っていた。
なんだかその子に見覚えがある。気のせいかな。
「御免でござる。拙者サスケと申す」
「なんでいサスケじゃねえか」
「これはゴエモン殿。いらしたでござるか」
どうやらこの二人は知り合いみたい。
でも、どこかでこの人見たことがあるような。
「あっ!からくり屋敷に居た忍者の」
「拙者はキリカ殿と初対面でござる。屋敷に居たのは拙者の仲間でござるよ」
「じゃあ、あなたもからくり?」
「さよう。この度はじいさんが迷惑をかけて申し訳ないでござる」
サスケさんはぺこりと頭を下げた。
あ、言われてみれば手が真ん丸。屋敷に居たからくり忍者と同じ。
「おいおい、何がどうなってやがんだ?」
「掻い摘んで言えば、うちのじいさんの発明にキリカ殿が巻き込まれたのでござる」
「なんだってえ!またあのじいさんか」
「ええと、転送装置でしたっけ?」
「ってえことは、どっか遠い場所から来たってことかい」
「転送装置は転送装置でも、時代転送装置でござる。キリカ殿は別の時代から来た娘さんでござる」
これにゴエモンさんはあまり驚いた様子を見せなかった。
あのおじいさんとも知り合いってことは、度々トラブルがあって慣れてるんだろう。
「キリカ殿には記憶が無いとじいさんに聞いたのでござるが」
「ところどころ、ですけどね」
「自分が居た年号を思い出して貰わなければ、帰すにも帰せないと言っていたでござる」
「うーん…それが思い出せなくて、困ってるんです」
記憶の部分にもやがかかったみたいで、はっきりと思い出せない。
一年でもずれてしまうと歴史が変わってしまうそうだ。
「装置が復旧するまでには思い出すでござるよ」
「ま、それまで気長に待ってりゃいいじゃねえか」
「うん。お二人にはお世話かけます」
軽く頭を下げて二人に感謝の気持ちを表した。
私が頭を上げると、サスケさんも何故か頭を下げていた。
「拙者も世話になるでござる」
「え?」
「キリカ殿が帰るまでゴエモン殿の処に居候させてもらうでござる」
「なんだってえ!?」
お茶を飲んでいたゴエモンさんが噴出しそうになった。
出がらし、じゃなかったよね。大丈夫なはず。
「隣がゴエモン殿では心配でござる」
「サスケ…おめえ、おいらが頼りねえっていうのか」
「キリカ殿は大事な客人でござる。何かあってからでは遅いでござらぬか」
ここ大江戸では頻繁に事件が発生しているとサスケさんが話をしてくれた。
それを未然に防ぐ為に自分が来たのだという。
なんだか迷惑かけちゃって、ちょっと申し訳ないな。
「そういう訳で、ゴエモン殿しばらく厄介になるでござる」
「ったく…好きにしろい」
「ところで、この料理拙者も頂いて良いでござるか?」
一人分余っていたオムライスはサスケさんが食べてくれました。
因みに、エビス丸さんは茶屋で娘さんを口説いていたらしいけど、ふられちゃったみたいです。