がんばれゴエモン
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通れない穴
どごおおん
物凄い音が聞こえた。部屋も揺れたってことは、地震だろうか。
だけど、辺りを見ても揺れている物は全く無かった。
「エビス丸!おめえ何してんだ!」
ゴエモンさんの怒鳴り声がした。
お隣さんだから、大きな声や物音なら日頃から聞こえてくる。
長屋の壁が薄いから仕方ないってご近所さんは言っていた。
お隣で何かあったのかな。ゴエモンさんとエビス丸さんが喧嘩したとか。
「あーあ…どうすんだよこれ」
「そないなこと言うても…どないしましょ」
それにしても、やけに声が澄んで聞こえる。
風通しが良くなったというか。
「おーい。キリカいるかー?」
はっきりとゴエモンさんの声が耳に届いた。
これ、もう家の中に居るんじゃないかってぐらい。
声は部屋の隅から聞こえた。私は菜箸を置いて、畳へ上がる。
びっくりした。部屋の壁に穴が空いていて、そこからゴエモンさんの顔が見えた。
「あの、これは一体」
「エビス丸の野郎が壁に頭突きして、穴空けちまってよ」
「…頭突きで壁に穴。石頭ですねエビス丸さん」
「そないに誉めんてぇな。照れるやさかい」
「誉めてねえ!」
鈍い音が穴から聞こえた。
穴と言っても、人一人が通れるか通れないかぐらいの穴。
だから、向こうからゴエモンさんやエビス丸さんがくぐってこれるような大きさじゃない。
「大家さんに怒られちゃいますね、こんな大きな穴空けちゃって」
「板でも打ちつけときゃあ大丈夫だろ。それより、こいつあどうしたもんか」
「板、打てば問題ないんじゃないですか?」
お互いに穴を覗き込んで、顔を見合わせていた。
ゴエモンさんの凛々しい眉が眉間に寄せられる。
「いや、おいらは問題ねえんだが…そっちが何かと困るんじゃねえかと」
「あー。そうですね。じゃあ、衝立でも立てておきます」
衝立を穴の前に立てておけば、こっちからも向こうからも見えない。
プライバシーは大事だよね。まあ、見られて困るような物もないんだけれど。
「おう、すまねえな。そんじゃあそうしてくれ。おいエビス丸、お前も謝らねえか!」
「すんまへんなあ。ところで、美味そうな匂いがさっきからしてるんやけど」
「かぼちゃの煮つけですか?今作ってるんです」
「ほにー!わてにも食べさせてくんなまし!」
ゴエモンさんの顔が押し退けられた。
変わりに穴にすっぽりはまりそうなぐらい、乗り出しているエビス丸さんの顔。
どアップの顔に一度引いてしまった。
「いいですよ。じゃあ、お手数ですけど表から来てもらえますか」
「今すぐ行きまっせ!」
「ゴエモンさんもご一緒にどうぞ」
「あ、おいっ!エビス丸!…ったくしゃあねえなあ。おいらも上がらせてもらうぜい」
「どうぞ」
私が玄関に立つ前に、戸が開いた。エビス丸さん早いなあ。
その後にゴエモンさんもやってきた。
「ほな、お邪魔しまっせ~」
「邪魔するぜい」
「いらっしゃい。今用意しますから、座って待っててください」
茶色の座布団を二枚、囲炉裏の傍に敷いた。
沸かしておいたお湯でお茶を淹れ、二人に渡す。
「ありがとよ」
「キリカさん、はようはよう」
「ふふ。食いしん坊なんですね。ちょっと待ってください」
「まったく恥ずかしいやつだぜ」
煮付けたかぼちゃを皿に三つずつ乗せる。
箸と一緒にその皿を二人に渡した。
「砂糖を入れすぎたから、甘いかもしれないです」
「ほっぺが落ちそうなぐらい美味しいでっせ~!」
「ああ、お世辞無しにこいつは美味いぜ」
「お口にあったようで良かった」
食べるのが早い早い。自分の分を食べ終えたエビス丸さんはゴエモンさんのに箸を伸ばしていた。
一つ取られたところでゴエモンさんが怒鳴りつけて、取り返そうとする。
まだかぼちゃの煮つけはあるからと私が言うと、エビス丸さんが遠慮無くそのかぼちゃを口に頬張った。
二人のやり取りが面白くて、私は笑いを零していた。
「どうしたんでい。そんなに笑って」
「なんだか可笑しくって」
こんなに笑ったの、はぐれ町に来てから初めてかもしれない。
隣がゴエモンさん達で良かったかも。
どごおおん
物凄い音が聞こえた。部屋も揺れたってことは、地震だろうか。
だけど、辺りを見ても揺れている物は全く無かった。
「エビス丸!おめえ何してんだ!」
ゴエモンさんの怒鳴り声がした。
お隣さんだから、大きな声や物音なら日頃から聞こえてくる。
長屋の壁が薄いから仕方ないってご近所さんは言っていた。
お隣で何かあったのかな。ゴエモンさんとエビス丸さんが喧嘩したとか。
「あーあ…どうすんだよこれ」
「そないなこと言うても…どないしましょ」
それにしても、やけに声が澄んで聞こえる。
風通しが良くなったというか。
「おーい。キリカいるかー?」
はっきりとゴエモンさんの声が耳に届いた。
これ、もう家の中に居るんじゃないかってぐらい。
声は部屋の隅から聞こえた。私は菜箸を置いて、畳へ上がる。
びっくりした。部屋の壁に穴が空いていて、そこからゴエモンさんの顔が見えた。
「あの、これは一体」
「エビス丸の野郎が壁に頭突きして、穴空けちまってよ」
「…頭突きで壁に穴。石頭ですねエビス丸さん」
「そないに誉めんてぇな。照れるやさかい」
「誉めてねえ!」
鈍い音が穴から聞こえた。
穴と言っても、人一人が通れるか通れないかぐらいの穴。
だから、向こうからゴエモンさんやエビス丸さんがくぐってこれるような大きさじゃない。
「大家さんに怒られちゃいますね、こんな大きな穴空けちゃって」
「板でも打ちつけときゃあ大丈夫だろ。それより、こいつあどうしたもんか」
「板、打てば問題ないんじゃないですか?」
お互いに穴を覗き込んで、顔を見合わせていた。
ゴエモンさんの凛々しい眉が眉間に寄せられる。
「いや、おいらは問題ねえんだが…そっちが何かと困るんじゃねえかと」
「あー。そうですね。じゃあ、衝立でも立てておきます」
衝立を穴の前に立てておけば、こっちからも向こうからも見えない。
プライバシーは大事だよね。まあ、見られて困るような物もないんだけれど。
「おう、すまねえな。そんじゃあそうしてくれ。おいエビス丸、お前も謝らねえか!」
「すんまへんなあ。ところで、美味そうな匂いがさっきからしてるんやけど」
「かぼちゃの煮つけですか?今作ってるんです」
「ほにー!わてにも食べさせてくんなまし!」
ゴエモンさんの顔が押し退けられた。
変わりに穴にすっぽりはまりそうなぐらい、乗り出しているエビス丸さんの顔。
どアップの顔に一度引いてしまった。
「いいですよ。じゃあ、お手数ですけど表から来てもらえますか」
「今すぐ行きまっせ!」
「ゴエモンさんもご一緒にどうぞ」
「あ、おいっ!エビス丸!…ったくしゃあねえなあ。おいらも上がらせてもらうぜい」
「どうぞ」
私が玄関に立つ前に、戸が開いた。エビス丸さん早いなあ。
その後にゴエモンさんもやってきた。
「ほな、お邪魔しまっせ~」
「邪魔するぜい」
「いらっしゃい。今用意しますから、座って待っててください」
茶色の座布団を二枚、囲炉裏の傍に敷いた。
沸かしておいたお湯でお茶を淹れ、二人に渡す。
「ありがとよ」
「キリカさん、はようはよう」
「ふふ。食いしん坊なんですね。ちょっと待ってください」
「まったく恥ずかしいやつだぜ」
煮付けたかぼちゃを皿に三つずつ乗せる。
箸と一緒にその皿を二人に渡した。
「砂糖を入れすぎたから、甘いかもしれないです」
「ほっぺが落ちそうなぐらい美味しいでっせ~!」
「ああ、お世辞無しにこいつは美味いぜ」
「お口にあったようで良かった」
食べるのが早い早い。自分の分を食べ終えたエビス丸さんはゴエモンさんのに箸を伸ばしていた。
一つ取られたところでゴエモンさんが怒鳴りつけて、取り返そうとする。
まだかぼちゃの煮つけはあるからと私が言うと、エビス丸さんが遠慮無くそのかぼちゃを口に頬張った。
二人のやり取りが面白くて、私は笑いを零していた。
「どうしたんでい。そんなに笑って」
「なんだか可笑しくって」
こんなに笑ったの、はぐれ町に来てから初めてかもしれない。
隣がゴエモンさん達で良かったかも。