がんばれゴエモン
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
隣人は歌舞伎役者
今日も良い天気。出かけていく長屋の人達と挨拶を交わした。
朝の掃き掃除も終わったし、お天道様に感謝してから長屋に戻ろう。
玄関の脇に竹箒を置いて、朝ごはんの支度を始める。
さっき洗ったお米を入れたお釜を釜戸によいしょと乗せた。
釜戸に薪をくべて、火打石で火種を作り、点火する。
火が点くまでが大変。竹の筒で息を吹き込むのだけれど、肺活量が少ない私には一苦労の作業。
中々火が回らない。一息ついているうちに小さな火がぽっと消えてしまった。
ああ、火種をまた作らないと。これも結構大変なんだよね。
火打石を手にしたところで、隣から物音が聞こえた。
私はその音に首を捻る。お隣さんは留守にしていたはず。
私が越して来た時から居なかったもの。だからお隣さんにだけ引越し挨拶をしていない。
近所の人に聞けばその家主は半年ほど留守にしているらしい。
旅行にでも行っているのかと思っていた。
帰ってきたなら挨拶に行かないと。火も消えちゃったし丁度いいや。
私は竹筒を置いて長屋の外に出た。
「にゃーん」
入り口を出てすぐ猫の鳴き声が聞こえてきた。
傍にトラ模様の猫が座っている。いつもご飯を食べに来る子だ。
足元に擦り寄ってきて早くご飯をくれとねだってきた。
「もうちょっと待ってね、先にお隣さんに挨拶してくるから」
頭を撫でると目を細めて「にゃあ」と鳴いた。
私が歩くとその後ろをついてくる。猫ってご飯欲しい時だけ懐っこい。
「御免くださーい。あ」
隣の家に声をかけてから、引越し蕎麦が手元に無い事に気がついた。
家にも買い置きが無い。今度買いに行かないと。
「入んな!」
威勢の良い声が聞こえた。そういえば、お隣さんは男の人だって聞いていた。
「失礼します」と戸をがらがらと引いて、玄関先に立つ。
玄関に脱ぎ捨てられた草履が二組。
部屋には朱色の装束を着た男の人。目元と口許の赤い化粧が印象的だ。
それと水色の甚平、というより忍者の格好をした人がいた。頭巾を巻いているのだけど、その被り方だとネズミ小僧みたい。
「おう。何か用かい、娘さん」
「これまたべっぴんな娘さんやなあ」
ネズミ小僧の人に"べっぴん"と言われたせいで、顔が熱くなった。
綺麗だなんて言われること、そんなに無いから。
「私、隣に越して来たキリカです。だいぶ前に引っ越して来たんですけど、お留守でしたからご挨拶が遅れました」
「ああ、そりゃすまねえな。ちょいと野暮用で留守にしててよ」
「わてはエビス丸や。よろしゅう頼んますわ」
ネズミ小僧が名前じゃないんだ。言われてみれば、ふくよかで恵比寿っぽいかも。
「おいらはゴエモンって言うんでい。よろしく頼むぜ」
あ。この人の目元に口許、なんか見覚えがあると思ったら。
歌舞伎役者の人だ。名前もそれっぽいし。
公演で長い間留守にしていたのかな。
「こちらこそよろしくお願いします」
あれ、歌舞伎役者だっけ?
よくよく考えたら、聞いたことある名前のような気がする。
まあ、そのうち思い出すかもしれないから、いっか。
今日も良い天気。出かけていく長屋の人達と挨拶を交わした。
朝の掃き掃除も終わったし、お天道様に感謝してから長屋に戻ろう。
玄関の脇に竹箒を置いて、朝ごはんの支度を始める。
さっき洗ったお米を入れたお釜を釜戸によいしょと乗せた。
釜戸に薪をくべて、火打石で火種を作り、点火する。
火が点くまでが大変。竹の筒で息を吹き込むのだけれど、肺活量が少ない私には一苦労の作業。
中々火が回らない。一息ついているうちに小さな火がぽっと消えてしまった。
ああ、火種をまた作らないと。これも結構大変なんだよね。
火打石を手にしたところで、隣から物音が聞こえた。
私はその音に首を捻る。お隣さんは留守にしていたはず。
私が越して来た時から居なかったもの。だからお隣さんにだけ引越し挨拶をしていない。
近所の人に聞けばその家主は半年ほど留守にしているらしい。
旅行にでも行っているのかと思っていた。
帰ってきたなら挨拶に行かないと。火も消えちゃったし丁度いいや。
私は竹筒を置いて長屋の外に出た。
「にゃーん」
入り口を出てすぐ猫の鳴き声が聞こえてきた。
傍にトラ模様の猫が座っている。いつもご飯を食べに来る子だ。
足元に擦り寄ってきて早くご飯をくれとねだってきた。
「もうちょっと待ってね、先にお隣さんに挨拶してくるから」
頭を撫でると目を細めて「にゃあ」と鳴いた。
私が歩くとその後ろをついてくる。猫ってご飯欲しい時だけ懐っこい。
「御免くださーい。あ」
隣の家に声をかけてから、引越し蕎麦が手元に無い事に気がついた。
家にも買い置きが無い。今度買いに行かないと。
「入んな!」
威勢の良い声が聞こえた。そういえば、お隣さんは男の人だって聞いていた。
「失礼します」と戸をがらがらと引いて、玄関先に立つ。
玄関に脱ぎ捨てられた草履が二組。
部屋には朱色の装束を着た男の人。目元と口許の赤い化粧が印象的だ。
それと水色の甚平、というより忍者の格好をした人がいた。頭巾を巻いているのだけど、その被り方だとネズミ小僧みたい。
「おう。何か用かい、娘さん」
「これまたべっぴんな娘さんやなあ」
ネズミ小僧の人に"べっぴん"と言われたせいで、顔が熱くなった。
綺麗だなんて言われること、そんなに無いから。
「私、隣に越して来たキリカです。だいぶ前に引っ越して来たんですけど、お留守でしたからご挨拶が遅れました」
「ああ、そりゃすまねえな。ちょいと野暮用で留守にしててよ」
「わてはエビス丸や。よろしゅう頼んますわ」
ネズミ小僧が名前じゃないんだ。言われてみれば、ふくよかで恵比寿っぽいかも。
「おいらはゴエモンって言うんでい。よろしく頼むぜ」
あ。この人の目元に口許、なんか見覚えがあると思ったら。
歌舞伎役者の人だ。名前もそれっぽいし。
公演で長い間留守にしていたのかな。
「こちらこそよろしくお願いします」
あれ、歌舞伎役者だっけ?
よくよく考えたら、聞いたことある名前のような気がする。
まあ、そのうち思い出すかもしれないから、いっか。