リズム怪盗R
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探偵と怪盗
ルネサンス様式建物の外壁に紺色と白い小さな影。
彼は窓から窓のテラスを伝って下へ降りていく。
テンポ良く飛ぶ姿はまるでしなやかな猫のよう。
二階のテラスからひらりと怪盗Rは飛び降りた。
続いて音もなく白い犬が地面に着地した。
現在の時刻は午前十一時。
怪盗業を勤しむ真逆の時間帯。
彼が昼間から怪盗として動いているのは理由がある。
昨夜耳にした『ミステール事件』というキーワード。
それに自分の父親の消失と関係があるのでは。
しかし、彼はその事件を知らなかった。
どうすれば知ることができるか。
それは簡単だ。キーワードを口にした人物の場所を探ればいい。
そこで昼間のパリ市警本部に忍び込んだというわけだ。
警視庁で必要な最低限の情報は入手した。
ミステール事件ではナポレオンの棺が盗まれた。
それには自分の父親が関与しているかもしれない。
真実を確かめるためにも、深く知った方がいい。
頭のなかでこれらの情報を整理したかった。
しかし、それは街路から飛んできたなにかによって遮断されてしまう。
それが何かと考えるより先にRが反射的に動いた。
長い足でそれを受け止め、街路樹に跳ね返った球体を飛んできた方向へ蹴り飛ばした。
「サッカーボール?」
随分と重い一球だった。
明らかに悪意を感じる。一体誰のものか。
Rはボールが転がっていく方向を見据えた。
街路樹の影からインバネスコートを着た人間が現れた。
シャーロックホームズ・ハットから短い金髪が少しだけ見えている。
「たいした度胸だな怪盗R。警察署に不法侵入とは」
凛とした真っ直ぐな声。それでいて冷静な口調。
ブルーの瞳が怪盗Rを睨み付けている。
「ここでお前を捕まえればあいつを見返してやれる」
「捕まえるって、きみが?警官には見えないけど」
「警官なんかと一緒にするな。オレはクロード、探偵だ」
Rは帽子を目深に直す。
数メートル離れた場所にいる相手を伺うように視線を向ける。
今すぐこちらに向かってくる気配はない。
だが、それもなんとか抑えている様子。それだけ敵意が剥き出しなのだ。
この様子はよく知った誰かの物と似ている気がしていた。
「素直に捕まるか、それともオレの強烈なシュートをくらうか。……それともうひとつ。今後一切キリカ姉さんに近づくな」
これは意外な発言だった。
まさか初対面の人間から彼女の名前が出てくるとは。
しかも姉だという。そんなことはRは聞いていなかった。
「姉さん?君の?」
「お前には関係ない。二度と近づくな!」
先ほどまでの冷静な喋り方は消え、感情が露になる。
加えてイライラしているのも見てとれた。
これは面白い。Rのイタズラ心が顔を見せ、わざとらしくにやにやと笑って見せた。
「どっちもごめんだし、それも無理な話だね。だって僕たち愛し合ってるから」
「知るか!」
クロードの顔が怒りに染まり、真っ赤になった。
右足を高く振り上げて、足元のボールを力任せに蹴る。
それは標的を逸れてあらぬ方向へ飛んでいく。と思いきや、まっすぐにR目掛けて飛んでいった。
Rは顔目掛けて飛んでくるボールをワンステップで避けた。
ボールが消火栓に当たって跳ね返り、主人の元へころころと転がっていく。
クロードは悔しそうに地団駄を踏み、戻ってきたボールを踏みつける様に足を乗せた。
腕を力いっぱい伸ばし、Rを指差す。
「今度こそ決めてやる!覚悟しろ怪盗R!」
「……やれやれ」
完全に頭に血が上っているようだ。
これではどう足掻いても言い逃れはできなさそうだ。
まあ、煽ったのは自分でもあるのだが。
この場から逃げるのを諦めたRは彼が満足するまで相手をしてやることにした。
肩をすくめて両腕を広げ、首を振ってみせる。
それを自分への挑発と捉えたクロードは高く、高く足を振り上げた。
ルネサンス様式建物の外壁に紺色と白い小さな影。
彼は窓から窓のテラスを伝って下へ降りていく。
テンポ良く飛ぶ姿はまるでしなやかな猫のよう。
二階のテラスからひらりと怪盗Rは飛び降りた。
続いて音もなく白い犬が地面に着地した。
現在の時刻は午前十一時。
怪盗業を勤しむ真逆の時間帯。
彼が昼間から怪盗として動いているのは理由がある。
昨夜耳にした『ミステール事件』というキーワード。
それに自分の父親の消失と関係があるのでは。
しかし、彼はその事件を知らなかった。
どうすれば知ることができるか。
それは簡単だ。キーワードを口にした人物の場所を探ればいい。
そこで昼間のパリ市警本部に忍び込んだというわけだ。
警視庁で必要な最低限の情報は入手した。
ミステール事件ではナポレオンの棺が盗まれた。
それには自分の父親が関与しているかもしれない。
真実を確かめるためにも、深く知った方がいい。
頭のなかでこれらの情報を整理したかった。
しかし、それは街路から飛んできたなにかによって遮断されてしまう。
それが何かと考えるより先にRが反射的に動いた。
長い足でそれを受け止め、街路樹に跳ね返った球体を飛んできた方向へ蹴り飛ばした。
「サッカーボール?」
随分と重い一球だった。
明らかに悪意を感じる。一体誰のものか。
Rはボールが転がっていく方向を見据えた。
街路樹の影からインバネスコートを着た人間が現れた。
シャーロックホームズ・ハットから短い金髪が少しだけ見えている。
「たいした度胸だな怪盗R。警察署に不法侵入とは」
凛とした真っ直ぐな声。それでいて冷静な口調。
ブルーの瞳が怪盗Rを睨み付けている。
「ここでお前を捕まえればあいつを見返してやれる」
「捕まえるって、きみが?警官には見えないけど」
「警官なんかと一緒にするな。オレはクロード、探偵だ」
Rは帽子を目深に直す。
数メートル離れた場所にいる相手を伺うように視線を向ける。
今すぐこちらに向かってくる気配はない。
だが、それもなんとか抑えている様子。それだけ敵意が剥き出しなのだ。
この様子はよく知った誰かの物と似ている気がしていた。
「素直に捕まるか、それともオレの強烈なシュートをくらうか。……それともうひとつ。今後一切キリカ姉さんに近づくな」
これは意外な発言だった。
まさか初対面の人間から彼女の名前が出てくるとは。
しかも姉だという。そんなことはRは聞いていなかった。
「姉さん?君の?」
「お前には関係ない。二度と近づくな!」
先ほどまでの冷静な喋り方は消え、感情が露になる。
加えてイライラしているのも見てとれた。
これは面白い。Rのイタズラ心が顔を見せ、わざとらしくにやにやと笑って見せた。
「どっちもごめんだし、それも無理な話だね。だって僕たち愛し合ってるから」
「知るか!」
クロードの顔が怒りに染まり、真っ赤になった。
右足を高く振り上げて、足元のボールを力任せに蹴る。
それは標的を逸れてあらぬ方向へ飛んでいく。と思いきや、まっすぐにR目掛けて飛んでいった。
Rは顔目掛けて飛んでくるボールをワンステップで避けた。
ボールが消火栓に当たって跳ね返り、主人の元へころころと転がっていく。
クロードは悔しそうに地団駄を踏み、戻ってきたボールを踏みつける様に足を乗せた。
腕を力いっぱい伸ばし、Rを指差す。
「今度こそ決めてやる!覚悟しろ怪盗R!」
「……やれやれ」
完全に頭に血が上っているようだ。
これではどう足掻いても言い逃れはできなさそうだ。
まあ、煽ったのは自分でもあるのだが。
この場から逃げるのを諦めたRは彼が満足するまで相手をしてやることにした。
肩をすくめて両腕を広げ、首を振ってみせる。
それを自分への挑発と捉えたクロードは高く、高く足を振り上げた。