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あめのひ
暖炉の火が真っ赤に燃えていた。火の粉がパチパチと音を立てて弾け飛ぶ。
外は雨が降っていた。しとしとと静かに降る雨が家の窓を濡らしていく。
気温も低いせいか窓ガラスが白く曇っていた。
雨が降り始める少し前、シャドウがキリカの家を訪れた。
彼の表情はいつもよりぼんやりとしていた。疲れているような、それかどこか眠そうな顔。
何か用事があるわけでもなく、ただ彼はぽつりぽつりと話をしていた。
やがて外が薄暗くなった頃だった。キリカが温かい飲み物を淹れて戻ってくると、シャドウはソファに横になっていた。
体の色と同じ瞼は閉じられており、ネコのように体を丸めて眠っていた。
もう少しで球体になってしまうのではないか。そう思えるほど彼は体を丸めていた。
キリカはシャドウを起こさないようにそっとソファに腰掛ける。
僅かな重みで座面に皺が出来た。同時に彼の頭も少しだけ沈み込む。
この青いソファは先日たぬきスーパーに注文したものだ。
一目で気に入ったこのソファはキリカのお気に入り。先程までのシャドウもゆったりとくつろいでいた。
そこを見れば彼も気に入ったのだろう。決して口には出さないが。
ソファの前にはテーブルがある。その向こう側には赤く燃えている暖炉がある。
テーブルの上に温かいマグカップを置いて、シャドウの頭に手を乗せた。
この場所はちょうど暖かくて気持ちが良いのだろう。普段見ることが出来ない、安らかな寝顔をしている。
指の背で頭を撫でると三角の両耳がぱた、ぱたと動いた。
嫌がっているようには見えないが、違和感を覚えているのだろう。
撫で続けていると眉を潜めて身じろぎした。丸められている手を握れば、小さく握り返してきた。
しかし、このまま何も掛けずに眠っていては風邪を引いてしまう。
ベッドから毛布を持ってくる為にキリカは立ち上がる。だが、繋がれた手は離れようとしなかった。
彼が薄っすらと目を開けて、キリカを見上げていた。寝惚けた眼から「行かないでくれ」と言われたような気がする。
「毛布、取ってくるから。眠ってていいよ」
なるべく音量を下げた声でキリカはそう言った。
しかしシャドウは首を僅かに横に振る。まだ覚醒しきっていない声で呟く。
「…君が傍に居てくれた方が、温かい」
「でもね、シャドウ」
キリカはソファの前にしゃがみ、シャドウと視線を合わせた。
半分しか開いていない瞼は今にも閉じてしまいそうだった。
ふと、シャドウは繋いでいた手を離して、代わりにと言わんばかりに横になったままキリカを抱き上げた。
見た目からは想像が出来ないほどの力を彼は持っていた。
抱き上げた彼女をそのまま自分の腕にすっぽりと収めてしまった。
シャドウはまるで抱き枕のようにキリカをぎゅっと抱きしめていた。
「ちょっと、シャドウ」
話しかけても返事はなかった。
彼の瞼は再び閉じられて、静かに寝息を立てていた。
この状態をどうしたものかと悩んでいたキリカだったが、心地よいぬくもりに眠気に誘われてきた。
やがて、うとうとし始めたキリカは顔をシャドウの首元に埋めて目を閉じた。
雨が上がり、目を覚ます頃には二人分の飲み物はすっかり冷めてしまっていた。
空には大きな二本の虹がかかっていた。
暖炉の火が真っ赤に燃えていた。火の粉がパチパチと音を立てて弾け飛ぶ。
外は雨が降っていた。しとしとと静かに降る雨が家の窓を濡らしていく。
気温も低いせいか窓ガラスが白く曇っていた。
雨が降り始める少し前、シャドウがキリカの家を訪れた。
彼の表情はいつもよりぼんやりとしていた。疲れているような、それかどこか眠そうな顔。
何か用事があるわけでもなく、ただ彼はぽつりぽつりと話をしていた。
やがて外が薄暗くなった頃だった。キリカが温かい飲み物を淹れて戻ってくると、シャドウはソファに横になっていた。
体の色と同じ瞼は閉じられており、ネコのように体を丸めて眠っていた。
もう少しで球体になってしまうのではないか。そう思えるほど彼は体を丸めていた。
キリカはシャドウを起こさないようにそっとソファに腰掛ける。
僅かな重みで座面に皺が出来た。同時に彼の頭も少しだけ沈み込む。
この青いソファは先日たぬきスーパーに注文したものだ。
一目で気に入ったこのソファはキリカのお気に入り。先程までのシャドウもゆったりとくつろいでいた。
そこを見れば彼も気に入ったのだろう。決して口には出さないが。
ソファの前にはテーブルがある。その向こう側には赤く燃えている暖炉がある。
テーブルの上に温かいマグカップを置いて、シャドウの頭に手を乗せた。
この場所はちょうど暖かくて気持ちが良いのだろう。普段見ることが出来ない、安らかな寝顔をしている。
指の背で頭を撫でると三角の両耳がぱた、ぱたと動いた。
嫌がっているようには見えないが、違和感を覚えているのだろう。
撫で続けていると眉を潜めて身じろぎした。丸められている手を握れば、小さく握り返してきた。
しかし、このまま何も掛けずに眠っていては風邪を引いてしまう。
ベッドから毛布を持ってくる為にキリカは立ち上がる。だが、繋がれた手は離れようとしなかった。
彼が薄っすらと目を開けて、キリカを見上げていた。寝惚けた眼から「行かないでくれ」と言われたような気がする。
「毛布、取ってくるから。眠ってていいよ」
なるべく音量を下げた声でキリカはそう言った。
しかしシャドウは首を僅かに横に振る。まだ覚醒しきっていない声で呟く。
「…君が傍に居てくれた方が、温かい」
「でもね、シャドウ」
キリカはソファの前にしゃがみ、シャドウと視線を合わせた。
半分しか開いていない瞼は今にも閉じてしまいそうだった。
ふと、シャドウは繋いでいた手を離して、代わりにと言わんばかりに横になったままキリカを抱き上げた。
見た目からは想像が出来ないほどの力を彼は持っていた。
抱き上げた彼女をそのまま自分の腕にすっぽりと収めてしまった。
シャドウはまるで抱き枕のようにキリカをぎゅっと抱きしめていた。
「ちょっと、シャドウ」
話しかけても返事はなかった。
彼の瞼は再び閉じられて、静かに寝息を立てていた。
この状態をどうしたものかと悩んでいたキリカだったが、心地よいぬくもりに眠気に誘われてきた。
やがて、うとうとし始めたキリカは顔をシャドウの首元に埋めて目を閉じた。
雨が上がり、目を覚ます頃には二人分の飲み物はすっかり冷めてしまっていた。
空には大きな二本の虹がかかっていた。