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YOU
ポポッコがふわふわと浮かんでいた。
花壇の周りをゆっくりと一周して、咲いている花に寄り添う。
ときたま水やりをしているキリカにじゃれ付いたりもした。
空の日差しがより一層強くなった気がした。雲に隠れていた太陽が顔を出したようだ。
「ポポ!」
「いってらっしゃい」
暖かい日差しを好むポポッコは風に乗って高い位置で光を浴びる。
ポポッコが気持ち良さそうに体を膨らませて、空へふわふわと飛んでいった。
花壇の花に水をやり終えたキリカはジョウロを置いて、その場にしゃがんだ。
赤や黄、橙色の花々が美しく咲いている。
不思議なことに、ポポッコが近付いた花は普段よりも活き活きとしているのだ。
花を眺めている彼女の背後に黒い影がゆっくりと近付いていた。
その彼は声もかけずにキリカの後ろに立っている。
やがて彼は膝を折って、目の前にある背中に抱きついた。
突然圧し掛かった重みにキリカは驚いたが、これがシャドウだと気づくと不思議そうに声をかけた。
「シャドウ、どうしたの?」
彼は黙ったまま何も答えなかった。
心なしか回されている腕に少しだけ力が込められたような気がした。
抱きついているというよりも、まるで、すがりついているようにも見える。
シャドウは額をぴたりと押し当てて、深く息を吸い込み、目を閉じた。
何の花かはわからないが甘い香りが空気と一緒に肺に入り込んだ。
その香りが彼女の様にも思えて、気持ちが安らいでいく。
しばらくの間、シャドウはそのままじっとしていた。
何か辛いことでもあったのだろうか。キリカがそう心配し始めた頃、ぽつりと彼は呟いた。
その言葉にキリカは優しく答えていく。
「僕はキリカのことが好きだ」
「うん」
「君に嫌われたら、僕は」
全人類に敵意の目を向けられても構わない。
同時に全てを敵に回すことになったとしても、構わない。
例え己の事を知る者達から恨まれても一向に気にはしない。
それでも、目の前にいる彼女にだけは嫌われたくない。
恐怖を与えたくはない。怯えさせたくない。
幸せそうな笑顔を曇らせたくない。
もしも、目の前から彼女が消えてしまったら。
愛しい声が聞けなくなってしまったら。
温かい手の平の体温を感じることが出来なくなったら。
考えただけで気が狂ってしまいそうだった。
彼女を失うのが怖い。己のせいで、居なくなってしまうのがコワイ。
シャドウの心音が背中越しにキリカに伝わっていた。
その音は頼りなく脈を打っており、今にも消えてしまうのではないかと思えるものだった。
キリカはシャドウの手にそっと自分の手を重ねた。その一瞬、彼の腕の力が弱まる。
その隙にキリカが振り向いて、シャドウの顔を見た。ひどく悲しそうな表情をしていた。
何故、そこまで思い詰めていたのかとキリカは疑問を抱いた。
今度は彼女がシャドウを包み込むように腕を背中に回して、ぎゅっと抱きしめた。
「…キリカ」
「シャドウは私に何か嫌がるようなこと、した覚えある?」
「いや」
「うん。私もシャドウからそんな事された覚えはないよ」
シャドウの首元に顔を寄せて目を瞑る。白く、ふわふわとした毛がくすぐったい。
目をそっと開いて、困惑している彼に笑いかけた。
「だから、私がシャドウを嫌う理由なんてないよ」
それが普通のこと。だが、シャドウは目を丸くして呆気に取られたような表情をしていた。
改めて言葉にされたことに短く頷き、もう一度その言葉を噛みしめる。
それから彼はいつものように笑ってみせた。それを見て安心したキリカも笑みを返した。
シャドウは一度目を細めてから、キリカの顎を親指で持ち上げた。
まるで花びらのように優しい口付けを一つ。彼女の頬が花のように赤くなった。
いつの間にか戻ってきていたポポッコにそれを目撃されており、キリカは焦っていた。
慌てている彼女に可笑しそうにシャドウは言う。
「言っただろう。僕はキリカのことが好きだと」
ポポッコがふわふわと浮かんでいた。
花壇の周りをゆっくりと一周して、咲いている花に寄り添う。
ときたま水やりをしているキリカにじゃれ付いたりもした。
空の日差しがより一層強くなった気がした。雲に隠れていた太陽が顔を出したようだ。
「ポポ!」
「いってらっしゃい」
暖かい日差しを好むポポッコは風に乗って高い位置で光を浴びる。
ポポッコが気持ち良さそうに体を膨らませて、空へふわふわと飛んでいった。
花壇の花に水をやり終えたキリカはジョウロを置いて、その場にしゃがんだ。
赤や黄、橙色の花々が美しく咲いている。
不思議なことに、ポポッコが近付いた花は普段よりも活き活きとしているのだ。
花を眺めている彼女の背後に黒い影がゆっくりと近付いていた。
その彼は声もかけずにキリカの後ろに立っている。
やがて彼は膝を折って、目の前にある背中に抱きついた。
突然圧し掛かった重みにキリカは驚いたが、これがシャドウだと気づくと不思議そうに声をかけた。
「シャドウ、どうしたの?」
彼は黙ったまま何も答えなかった。
心なしか回されている腕に少しだけ力が込められたような気がした。
抱きついているというよりも、まるで、すがりついているようにも見える。
シャドウは額をぴたりと押し当てて、深く息を吸い込み、目を閉じた。
何の花かはわからないが甘い香りが空気と一緒に肺に入り込んだ。
その香りが彼女の様にも思えて、気持ちが安らいでいく。
しばらくの間、シャドウはそのままじっとしていた。
何か辛いことでもあったのだろうか。キリカがそう心配し始めた頃、ぽつりと彼は呟いた。
その言葉にキリカは優しく答えていく。
「僕はキリカのことが好きだ」
「うん」
「君に嫌われたら、僕は」
全人類に敵意の目を向けられても構わない。
同時に全てを敵に回すことになったとしても、構わない。
例え己の事を知る者達から恨まれても一向に気にはしない。
それでも、目の前にいる彼女にだけは嫌われたくない。
恐怖を与えたくはない。怯えさせたくない。
幸せそうな笑顔を曇らせたくない。
もしも、目の前から彼女が消えてしまったら。
愛しい声が聞けなくなってしまったら。
温かい手の平の体温を感じることが出来なくなったら。
考えただけで気が狂ってしまいそうだった。
彼女を失うのが怖い。己のせいで、居なくなってしまうのがコワイ。
シャドウの心音が背中越しにキリカに伝わっていた。
その音は頼りなく脈を打っており、今にも消えてしまうのではないかと思えるものだった。
キリカはシャドウの手にそっと自分の手を重ねた。その一瞬、彼の腕の力が弱まる。
その隙にキリカが振り向いて、シャドウの顔を見た。ひどく悲しそうな表情をしていた。
何故、そこまで思い詰めていたのかとキリカは疑問を抱いた。
今度は彼女がシャドウを包み込むように腕を背中に回して、ぎゅっと抱きしめた。
「…キリカ」
「シャドウは私に何か嫌がるようなこと、した覚えある?」
「いや」
「うん。私もシャドウからそんな事された覚えはないよ」
シャドウの首元に顔を寄せて目を瞑る。白く、ふわふわとした毛がくすぐったい。
目をそっと開いて、困惑している彼に笑いかけた。
「だから、私がシャドウを嫌う理由なんてないよ」
それが普通のこと。だが、シャドウは目を丸くして呆気に取られたような表情をしていた。
改めて言葉にされたことに短く頷き、もう一度その言葉を噛みしめる。
それから彼はいつものように笑ってみせた。それを見て安心したキリカも笑みを返した。
シャドウは一度目を細めてから、キリカの顎を親指で持ち上げた。
まるで花びらのように優しい口付けを一つ。彼女の頬が花のように赤くなった。
いつの間にか戻ってきていたポポッコにそれを目撃されており、キリカは焦っていた。
慌てている彼女に可笑しそうにシャドウは言う。
「言っただろう。僕はキリカのことが好きだと」