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Find you.
厚い雲が空全体を覆っていた。雨こそ降ってはいないが、どんよりと暗い空だ。
短い草が生えている野原の色も薄暗かった。
何となく気が向いたのか、シャドウはこの野原に再び訪れていた。
日が照るにはまだ時間がかかるだろう。そう思いながら空を仰いだ。
以前この場所で出逢った彼女はいるだろうか。そんな淡い期待を抱きながら野原を進んでいく。
前は気がつかなかったが、野原には所々に木が生えていた。
緑が映える季節ゆえに青々とした葉が茂っていた。
野原全体を見渡すと緑以外の色があることに気がつく。
ひとつは彼が探していた人物で、もうひとつは丸っこい黄緑色の生き物。頭部に黄色い花が咲いていた。
二人はまるで地面を覗き込むように下を向いている。
左を見ては右を向き、手のひらで草の合間を探っているようだ。
「何か探しものか?」
「ポポー」
声をかければキリカが答えるよりも先に鳴き声が返ってきた。
その生き物は大きな両耳を上下にぱたぱたと揺らしている。
「シャドウ。うん、ポポッコが黄色い花をくれたんだけど…落としちゃったの」
「ポポ…」
しゃがんでみればこの辺りに小さな白い花が咲いているのが見えた。
一厘だけではなく、結構たくさん咲いているようだ。
「この辺には白い花しか咲いていない。黄色い花なら見つけやすいんじゃないか」
「それがそうでもなくて。一度紛れ込んじゃうと、中々見つからないの」
キリカは視線を再び落として花を探し始める。
ポポッコも短い手を動かしながら草を掻き分けていた。
「…そういうものなのか?」
「うん。花が裏返しになってたり、横になっていたりしたら黄色が見えないでしょ?」
「それで見つけにくくなる、というのか」
紅一点を探すのは容易い。そう考えていたが、そうでもないらしい。
しかも手から転げ落ちたものは、自分が思っていた所に落ちていない場合が多い。
いくら近辺を探しても見つからない時は遠くに落ちていることもある。
「僕も手伝おう」
「ありがとう。シャドウは…その辺りを探してもらってもいい?」
「わかった」
探し手が一人増えたところで黙々と手を動かす。
まだ数分も経たないうちにポポッコが顔を上げた。
「ポ?」
「どうしたのポポッコ?」
つられて顔を上げれば、雲の隙間から日が差し込んでいるのが見えた。
体を大きく膨らませてからポポッコはその日差しに一直線に向かっていく。
日の当たる場所まで浮かび上がると、その場でくるくると回っていた。
黄色い花を探していたというのに、突然どうしたのか。
その様子を見ていたシャドウは呆れた表情をしている。
「…彼女は随分気まぐれというか」
「ここのところ雨続きで太陽が出てなかったから。久しぶりのお日様で嬉しいんだよきっと」
ポポッコの行動を咎めずに、小さい子を見守るように微笑む。
日差しがキリカとシャドウの手元を照らし始めた頃、彼は指で一つの花を摘み上げた。
それは周りの花と同じ大きさの黄色い花だった。
「あ、それ!その花だよ、探していたの」
シャドウはキリカの両手にそっとその花を乗せた。
小さな黄色い花を愛おしそうに眺めていた彼女はシャドウに微笑んだ。
「ありがとう。珍しい花ではないけど、ポポッコがくれたものだから。見つかって良かった」
「偶々見つけたのが僕だった。ただそれだけだ」
素っ気無い物言いにおかしそうにキリカは笑う。
シャドウは顔を横へ背けているが、僅かにその頬が赤くなっていた。
「もし私が迷子になっても、シャドウなら見つけてくれそうだね」
「…ああ。必ず見つけてみせるさ」
例え数億人の中に紛れ込んでいても、見つけにくい場所だとしても。
僕は必ず君を見つけだしてみせる。
あまりにも真剣な顔でそう言うものだから、キリカの頬も薄っすらと赤みをさしていた。
やがて、光が雲を掃う様にして差し込んできた。
明るい空が広がり始め、ポポッコの体がきらきらと光りだす。
雨の雫が一粒一粒光っているかのようにそれは美しかった。
厚い雲が空全体を覆っていた。雨こそ降ってはいないが、どんよりと暗い空だ。
短い草が生えている野原の色も薄暗かった。
何となく気が向いたのか、シャドウはこの野原に再び訪れていた。
日が照るにはまだ時間がかかるだろう。そう思いながら空を仰いだ。
以前この場所で出逢った彼女はいるだろうか。そんな淡い期待を抱きながら野原を進んでいく。
前は気がつかなかったが、野原には所々に木が生えていた。
緑が映える季節ゆえに青々とした葉が茂っていた。
野原全体を見渡すと緑以外の色があることに気がつく。
ひとつは彼が探していた人物で、もうひとつは丸っこい黄緑色の生き物。頭部に黄色い花が咲いていた。
二人はまるで地面を覗き込むように下を向いている。
左を見ては右を向き、手のひらで草の合間を探っているようだ。
「何か探しものか?」
「ポポー」
声をかければキリカが答えるよりも先に鳴き声が返ってきた。
その生き物は大きな両耳を上下にぱたぱたと揺らしている。
「シャドウ。うん、ポポッコが黄色い花をくれたんだけど…落としちゃったの」
「ポポ…」
しゃがんでみればこの辺りに小さな白い花が咲いているのが見えた。
一厘だけではなく、結構たくさん咲いているようだ。
「この辺には白い花しか咲いていない。黄色い花なら見つけやすいんじゃないか」
「それがそうでもなくて。一度紛れ込んじゃうと、中々見つからないの」
キリカは視線を再び落として花を探し始める。
ポポッコも短い手を動かしながら草を掻き分けていた。
「…そういうものなのか?」
「うん。花が裏返しになってたり、横になっていたりしたら黄色が見えないでしょ?」
「それで見つけにくくなる、というのか」
紅一点を探すのは容易い。そう考えていたが、そうでもないらしい。
しかも手から転げ落ちたものは、自分が思っていた所に落ちていない場合が多い。
いくら近辺を探しても見つからない時は遠くに落ちていることもある。
「僕も手伝おう」
「ありがとう。シャドウは…その辺りを探してもらってもいい?」
「わかった」
探し手が一人増えたところで黙々と手を動かす。
まだ数分も経たないうちにポポッコが顔を上げた。
「ポ?」
「どうしたのポポッコ?」
つられて顔を上げれば、雲の隙間から日が差し込んでいるのが見えた。
体を大きく膨らませてからポポッコはその日差しに一直線に向かっていく。
日の当たる場所まで浮かび上がると、その場でくるくると回っていた。
黄色い花を探していたというのに、突然どうしたのか。
その様子を見ていたシャドウは呆れた表情をしている。
「…彼女は随分気まぐれというか」
「ここのところ雨続きで太陽が出てなかったから。久しぶりのお日様で嬉しいんだよきっと」
ポポッコの行動を咎めずに、小さい子を見守るように微笑む。
日差しがキリカとシャドウの手元を照らし始めた頃、彼は指で一つの花を摘み上げた。
それは周りの花と同じ大きさの黄色い花だった。
「あ、それ!その花だよ、探していたの」
シャドウはキリカの両手にそっとその花を乗せた。
小さな黄色い花を愛おしそうに眺めていた彼女はシャドウに微笑んだ。
「ありがとう。珍しい花ではないけど、ポポッコがくれたものだから。見つかって良かった」
「偶々見つけたのが僕だった。ただそれだけだ」
素っ気無い物言いにおかしそうにキリカは笑う。
シャドウは顔を横へ背けているが、僅かにその頬が赤くなっていた。
「もし私が迷子になっても、シャドウなら見つけてくれそうだね」
「…ああ。必ず見つけてみせるさ」
例え数億人の中に紛れ込んでいても、見つけにくい場所だとしても。
僕は必ず君を見つけだしてみせる。
あまりにも真剣な顔でそう言うものだから、キリカの頬も薄っすらと赤みをさしていた。
やがて、光が雲を掃う様にして差し込んできた。
明るい空が広がり始め、ポポッコの体がきらきらと光りだす。
雨の雫が一粒一粒光っているかのようにそれは美しかった。