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I can't say well.


 白い世界が広がっていた。
 大地、空、太陽も存在しない。境目が全く無い、ただ虚無感が漂う世界。
 己が立っている場所さえあやふやな存在を思わせている。
 彼はこの世界と正反対の色を持っていた。その黒一点だけがこの世界で目立っている。
 だが、無に等しいこの色に呑み込まれてしまいそうで背筋が震えた。

 この世界はそれほど広くもなかった。白に浮かんでいる色を見つけた彼は歩みを止める。
 人間の姿をしたその色は膝を抱えてうずくまっていた。
 そこにまた新たな色が加わる。青い星がぼんやりと浮かんでいた。
 彼はゆっくりと自転する美しいその星を眺めていた。
 間もなくその星に異変が起き始めた。大地に亀裂が走り、星が割れ始める。
 そして閃光に包まれた後、星は音も無く崩れ落ちていった。

 星が塵と化した直後、もう一つの色にも変化が起きていた。
 うずくまっていた人間の姿がぐらりと揺らいだ。
 その姿が砂となって崩れ始めた時には既に遅かった。
 駆け出した彼が手を伸ばし、彼女に触れようとした瞬間に全てが砂となり、落ちた。



 木漏れ日に照らされた小さな森の側に三角屋根の一軒家が建っていた。
 そこには多くのポケモン達が集まるという。
 聞いた話では彼女は人だけでなくポケモンや動物達にも好かれているらしい。
 自分の周りでも彼女を知らない者はいない。だが、シャドウ自身はまだ一度も話をしたことはなかった。
 シャドウは家から少し離れた場所に棒立ちしていた。
 この場所に来てもう何分も経つ。時々同じ場所をうろうろと歩いてもいた。
 ドアをノックするべきか、否か。それに悩んでいた。
 小さな溜息を漏らしたところで、誰かに肩を叩かれた。驚いてびくりと体を震わせる。

「Hey,シャドウ。何してんだよ」
「き、君か。いや、何もしていない」

 見知った青いハリネズミが口の端を上げて笑っていた。

「さっきからうろうろと。どっかのオッサンみたいに怪しいぜ」
「なっ!」

 その言葉に反論出来ずにもごもごとしていると、ソニックに腕を掴まれて引きずられていく。

「用があるんなら入ればいいだろ」
「違っ…僕は!」

 ドアを軽くノックした後、ソニックはシャドウを連れて家の中に入っていった。
 家の主であるキリカは窓際で本を読んでいたようだ。
 彼女は訪れてきた客人達に笑顔で応対した。

「あ、いらっしゃいソニック」
「Hi,キリカ。こいつが居たからついでに連れてきたぜ」

 誰を連れてきたのかと首を傾げたキリカ
 ソニックは隠れるように自分の後ろにいるシャドウを前へ押しやった。
 その姿を見たキリカは首を縦に振った。

「会うのは初めてだよね、こんにちは」
「…ああ」

 シャドウは短く答えたがすぐに視線を逸らした。
 予期せぬ出来事に対応しきれず、動揺しているようにも見える。

「二人ともどうしたの?」
「オレはデートのお誘いさ。シャドウは」

 どうしたんだ。とソニックが続ける前に彼の姿は消えていた。
 まるで風が吹いたかのように一瞬にしていなくなっていた。
 ソニックは肩をすくめて両手を広げた。



 壁時計の針が午後八時を指した頃、ドアをノックする音がした。
 こんな時間に一体誰だろうか。キリカはノックに声を返し、ドアをそっと開けた。
 玄関先に立っていたのは昼間に顔を見せたきりのシャドウだった。
 彼の顔はランプの灯りに照らされてはっきりと見えるが、体の色が夜の闇と一緒に溶け込んでいた。

「…あ、何か忘れ物?」
「いや、違う。これを届けに来た」

 シャドウは緑色で二つ折りにされた革のパスケースを差し出した。
 それを見たキリカは「あっ」と小さく声を上げる。

「私の定期入れ…やっぱりどこかに落としてたんだ」
「だいぶ前に拾ったんだが、ずっと渡しそびれていた」
「ううん、いいよ。ありがとう」

 パスケースを両手で受け取り、大事そうに握り締める。
 その様子を見ていたシャドウは彼女を見ながら言った。

「それは君にとって大切なものなんだな」
「うん。宝物、かもしれない」
「…かもしれない?」

 物憂げに目を伏せたキリカは首を小さく横に振った。
 再度お礼を言う為に顔を上げると、その頬にシャドウの手が添えられた。
 その手の熱は確かにキリカに伝わっており、またシャドウの手にもキリカが確かに在ることを感じていた。
 ふとシャドウの表情に影が差したように見えた。
 しかしそれはほんの一瞬で、ランプの火が揺れたせいかもしれなかった。
 離れていく手、そして背を向けた彼にキリカは声をかける。

「また、いつでも遊びに来てね」
「そうさせてもらう」

 しばらくの間を置いてから、シャドウはそう答えた。
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