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I'd like to~
「なあチップ。少し寄り道してもいいか?」
彼は視線と同じ高さで飛んでいる小さな彼に声をかけた。
チップと呼ばれた彼は全身を振り向かせ、小さな頭を縦に振る。
「うん、いいけど。何しに行くの?」
「ちょっと人に会いにな」
「へえ。だれだれ?どんな人?」
チップはソニックの前を忙しなく飛び回る。
彼が誰に会いに行くのか興味津々といった様子だ。
その動きを目で追うにはいささか疲れてしまう。
ソニックは片手を上げて肩をすくめた。その顔には笑みが浮かんでいる。
「大事な人さ」
「もしかして彼女?チップも会ってみたい!」
「それじゃ急ぐぜ。もたもたしてると日が暮れちまうからな」
太陽はまだ空高い位置に座していた。
先の台詞にチップは首を傾げる。
だが、彼が既に走り出していたので、慌てて羽をばたつかせて追い掛けていった。
*
昼間に出発したというのに、現地に着いた時はもう太陽が沈みかけていた。
予定ではもう少し日が高いうちに着くはずだったのだが。
あちらの世界とこの世界では多少の時間のずれが生じているのか。
青い三角屋根の家の前まで来たのはいいが、その場で躊躇していた。
もうすぐ日が暮れてしまう。
ちらちらと空を見上げる行動にチップは気づいていない。
「うわあ、変わった場所だね!ボク、ちょっと探検してくるから!」
「OK.色んなヤツがいるから気をつけろよ」
幸いなことに彼は当初の目的をすっかり忘れているようだった。
見たことの無い風景に目を輝かせ、あっという間に遠くへ羽ばたいていった。
さて、自分はどうしたものか。
チップに付いて案内でもすれば良かったか。
しかし、それでは誰かかしらに必ず会うことになる。
後に何故彼女には会いに行かなかったのか。
二人の関係に亀裂が入りかねないだろう。それだけは避けたい。
彼が戻ってくるまでどこかで昼寝でもしていようか。
この時間帯では昼寝とは言わないか。
そんなことを考えているうちに、太陽はすっぽりと山に隠れてしまった。
辺りが夕闇に包まれると、ソニックの体が闇の球体に包まれた。
それも数秒。滑らかな体毛が一瞬にしてふさふさになり、腕の筋肉が盛り上がった。
口からは鋭い犬歯が覗いている。両手からも長い爪が伸び、靴の裏にもスパイクのような棘が出ていた。
まるで狼のような姿に変貌したソニック。空の青というよりは紺色に近い青い身体。
彼が"ソニック"だと言っても信じる者は少ないかもしれない。
月が下界を照らす時間帯の姿に自身は慣れてきていた。
普段の姿よりも重い体に最初は戸惑っていたが。
それにしても、まさかこちらの世界でも状態が維持されるとは。
三角屋根の家に灯りがついた。彼女は在宅している。
この姿で会いに行っても驚かせてしまうだけだ。
ソニックは重い足取りで踵を返した。
その時、ドアベルが鳴った。家から黄色のチェックのワンピース姿のキリカが出てきた。
郵便受けから手紙を出すつもりだったのだろう。箱のフタを開けたところで、彼女の手が止まった。
久しく見ていなかった姿に胸の鼓動が高鳴る。
だが、それ以前に彼女と目が合ってしまったことに動揺を隠せずにいた。
大きく見開いた目から窺える明らかな驚嘆。
恐怖に怯えて家に飛び込むか。それとも悲鳴を上げるのか。
彼女はどちらでもなかった。
「…もしかして、ソニック?」
そのどちらでもなく、声をかけてきた。
彼女はゆっくりと歩み寄り、ソニックの瞳を覗き込んだ。
あまりにも警戒心が無い行動に溜息をつきたくなる。
「どうしてオレだってわかったんだい」
「あ、やっぱりソニックだった」
肩をすくめたソニックにキリカは目を細めた。
それから改めて彼の姿をまじまじと見つめる。
「でも、どうしたの。随分と姿が変わっちゃったけど」
「ちょっとワケありでな」
「…大丈夫なの?」
呪いにでもかかったのではないか。訝しげに彼を見つめる。
細い眉が八の字に寄せられていた。
「Don't worry.すぐに元に戻るって」
「…うん」
こんな悲しい顔を見る為に戻ってきたわけじゃない。
久しぶりに会えたのだから。
笑った顔を見せて欲しい。もっと声を聞かせて欲しい。
ソニックが彼女の頬に手を伸ばしかけた時、胸に軽い衝撃を受けた。
下を向くとキリカが自分の胸元に顔を埋めているのが見えた。
「…キリカ?」
「ふわふわだね。声もちょっと低いみたい」
「そうか?自分じゃわかんないからな」
頬を寄せてくる仕草に思わず顔を赤らめる。
彼女からこんな風に甘えてくる事は滅多になかった。
いつでも抱き寄せるのは自分の役目で、恥ずかしそうに身を寄せてくるのが彼女。
一体どうしたというのか。
「まだ用事、終わってないんだよね」
「ああ。でもすぐに終わらせて戻ってくるさ」
「うん」
少しだけ上を向いた顔には哀の色が浮かんでいた。
ああ、そうか。彼女は寂しかったんだ。
自分も会いたくて仕方が無かったから来たのではなかったか。
「寂しかったか?」
そう尋ねれば目を丸くした。そしてまた顔を埋めてしまう。
これが彼女の照れ隠しだということをソニックは知っている。
伸びてしまった爪で傷つけてしまわないよう、そっと彼女を抱きしめた。
髪の香りがふわりと漂う。何もかもが久しぶりで懐かしい気がした。
月日はそう経っていないはず。それでも何ヶ月も会っていないような気がしていた。
「もう少しだけイイ子で待っててくれよ」
「うん。…待ってる」
彼女の香りが鼻先をくすぐる。刹那、口元に温かい感触。
こんなに寂しい思いをさせていたのか。それを思うと胸が絞めつけられるような気がした。
「気をつけてね。行ってらっしゃい」
今度は自分から口付けを。
そう思った矢先に彼が戻ってきてしまった。
「ねえねえ!向こうにソニックみたいな人がいたよ!…あ!この人がソニックの彼女?」
矢継ぎ早に喋る上に、くるくると二人の周りを飛び回る。
邪魔をしてくれたなとソニックは聞こえない溜息をついた。
「キリカさんって言うんだ。そうだ、チョコ食べる?」
「なあチップ。少し寄り道してもいいか?」
彼は視線と同じ高さで飛んでいる小さな彼に声をかけた。
チップと呼ばれた彼は全身を振り向かせ、小さな頭を縦に振る。
「うん、いいけど。何しに行くの?」
「ちょっと人に会いにな」
「へえ。だれだれ?どんな人?」
チップはソニックの前を忙しなく飛び回る。
彼が誰に会いに行くのか興味津々といった様子だ。
その動きを目で追うにはいささか疲れてしまう。
ソニックは片手を上げて肩をすくめた。その顔には笑みが浮かんでいる。
「大事な人さ」
「もしかして彼女?チップも会ってみたい!」
「それじゃ急ぐぜ。もたもたしてると日が暮れちまうからな」
太陽はまだ空高い位置に座していた。
先の台詞にチップは首を傾げる。
だが、彼が既に走り出していたので、慌てて羽をばたつかせて追い掛けていった。
*
昼間に出発したというのに、現地に着いた時はもう太陽が沈みかけていた。
予定ではもう少し日が高いうちに着くはずだったのだが。
あちらの世界とこの世界では多少の時間のずれが生じているのか。
青い三角屋根の家の前まで来たのはいいが、その場で躊躇していた。
もうすぐ日が暮れてしまう。
ちらちらと空を見上げる行動にチップは気づいていない。
「うわあ、変わった場所だね!ボク、ちょっと探検してくるから!」
「OK.色んなヤツがいるから気をつけろよ」
幸いなことに彼は当初の目的をすっかり忘れているようだった。
見たことの無い風景に目を輝かせ、あっという間に遠くへ羽ばたいていった。
さて、自分はどうしたものか。
チップに付いて案内でもすれば良かったか。
しかし、それでは誰かかしらに必ず会うことになる。
後に何故彼女には会いに行かなかったのか。
二人の関係に亀裂が入りかねないだろう。それだけは避けたい。
彼が戻ってくるまでどこかで昼寝でもしていようか。
この時間帯では昼寝とは言わないか。
そんなことを考えているうちに、太陽はすっぽりと山に隠れてしまった。
辺りが夕闇に包まれると、ソニックの体が闇の球体に包まれた。
それも数秒。滑らかな体毛が一瞬にしてふさふさになり、腕の筋肉が盛り上がった。
口からは鋭い犬歯が覗いている。両手からも長い爪が伸び、靴の裏にもスパイクのような棘が出ていた。
まるで狼のような姿に変貌したソニック。空の青というよりは紺色に近い青い身体。
彼が"ソニック"だと言っても信じる者は少ないかもしれない。
月が下界を照らす時間帯の姿に自身は慣れてきていた。
普段の姿よりも重い体に最初は戸惑っていたが。
それにしても、まさかこちらの世界でも状態が維持されるとは。
三角屋根の家に灯りがついた。彼女は在宅している。
この姿で会いに行っても驚かせてしまうだけだ。
ソニックは重い足取りで踵を返した。
その時、ドアベルが鳴った。家から黄色のチェックのワンピース姿のキリカが出てきた。
郵便受けから手紙を出すつもりだったのだろう。箱のフタを開けたところで、彼女の手が止まった。
久しく見ていなかった姿に胸の鼓動が高鳴る。
だが、それ以前に彼女と目が合ってしまったことに動揺を隠せずにいた。
大きく見開いた目から窺える明らかな驚嘆。
恐怖に怯えて家に飛び込むか。それとも悲鳴を上げるのか。
彼女はどちらでもなかった。
「…もしかして、ソニック?」
そのどちらでもなく、声をかけてきた。
彼女はゆっくりと歩み寄り、ソニックの瞳を覗き込んだ。
あまりにも警戒心が無い行動に溜息をつきたくなる。
「どうしてオレだってわかったんだい」
「あ、やっぱりソニックだった」
肩をすくめたソニックにキリカは目を細めた。
それから改めて彼の姿をまじまじと見つめる。
「でも、どうしたの。随分と姿が変わっちゃったけど」
「ちょっとワケありでな」
「…大丈夫なの?」
呪いにでもかかったのではないか。訝しげに彼を見つめる。
細い眉が八の字に寄せられていた。
「Don't worry.すぐに元に戻るって」
「…うん」
こんな悲しい顔を見る為に戻ってきたわけじゃない。
久しぶりに会えたのだから。
笑った顔を見せて欲しい。もっと声を聞かせて欲しい。
ソニックが彼女の頬に手を伸ばしかけた時、胸に軽い衝撃を受けた。
下を向くとキリカが自分の胸元に顔を埋めているのが見えた。
「…キリカ?」
「ふわふわだね。声もちょっと低いみたい」
「そうか?自分じゃわかんないからな」
頬を寄せてくる仕草に思わず顔を赤らめる。
彼女からこんな風に甘えてくる事は滅多になかった。
いつでも抱き寄せるのは自分の役目で、恥ずかしそうに身を寄せてくるのが彼女。
一体どうしたというのか。
「まだ用事、終わってないんだよね」
「ああ。でもすぐに終わらせて戻ってくるさ」
「うん」
少しだけ上を向いた顔には哀の色が浮かんでいた。
ああ、そうか。彼女は寂しかったんだ。
自分も会いたくて仕方が無かったから来たのではなかったか。
「寂しかったか?」
そう尋ねれば目を丸くした。そしてまた顔を埋めてしまう。
これが彼女の照れ隠しだということをソニックは知っている。
伸びてしまった爪で傷つけてしまわないよう、そっと彼女を抱きしめた。
髪の香りがふわりと漂う。何もかもが久しぶりで懐かしい気がした。
月日はそう経っていないはず。それでも何ヶ月も会っていないような気がしていた。
「もう少しだけイイ子で待っててくれよ」
「うん。…待ってる」
彼女の香りが鼻先をくすぐる。刹那、口元に温かい感触。
こんなに寂しい思いをさせていたのか。それを思うと胸が絞めつけられるような気がした。
「気をつけてね。行ってらっしゃい」
今度は自分から口付けを。
そう思った矢先に彼が戻ってきてしまった。
「ねえねえ!向こうにソニックみたいな人がいたよ!…あ!この人がソニックの彼女?」
矢継ぎ早に喋る上に、くるくると二人の周りを飛び回る。
邪魔をしてくれたなとソニックは聞こえない溜息をついた。
「キリカさんって言うんだ。そうだ、チョコ食べる?」