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39.5℃


 ベッドは厚手の毛布と羽毛布団に覆われていた。
 そこに赤い顔をしたソニックが横になっている。
 彼の傍らではキリカが慌しく動き回っていた。
 氷枕に彼の頭を乗せ、氷のうを額に乗せる。それから毛布と布団を顎の下まで覆い被せた。

「ええと、あと必要なものは…あれと、あれと」

 ぶつぶつと独り言を零す彼女に目を向けた。

「おいおい、ちょっと大袈裟じゃないか」
「大袈裟?39度も熱があるのに!」

 ソニックが頭を傾けたせいで氷のうがずり落ちた。
 それを拾い上げて元の位置に戻す。
 キリカは心配そうにソニックを見つめた。

「早く熱が下がってくれるといいんだけど」
「Don't worry.風邪なんてすぐに治るさ」

 あくまで軽いものだと言いたげだが、その声は熱を帯びて掠れていた。
 咳はそう酷くない。高い熱と全身の倦怠感が特徴的な風邪。
 彼がこうなってしまったのには訳がある。

 一昨日、凍っていた池の上でスケートをしようという案が出た。
 その誘いに乗ったソニックが一番に氷の上へとジャンプ。
 着地時の衝撃か否か、表面が薄っすらと凍っていただけのスケートリンクに亀裂が入った。
 足元から氷点下の水面へと落下するソニック。
 一度は全身が水に浸かるものの、池の水からあっという間に解放された。
 機転を利かせたカービィが池の水を全て吸い込んだのだ。
 一瞬とはいえ、声も凍り付いてしまいそうな水の中に放り出されたのだ。
 大乱闘での疲労が溜まっていたせいか、この有様なのであった。

「まさか池の氷が割れるとはな」
「あの時はソニックの氷漬けが出来ちゃうかと思った」
「No way!そんなのゴメンだね」

 ソニックはぼんやりとしている視界を閉じた。
 瞼がまるで燃えているように熱い。
 目を開ければ自然と涙が滲んでくる。
 吐く息も普段よりずっと熱を持っているようだった。

 早いもので氷のうが液体と化してしまった。
 袋がたぷたぷと揺れている。
 彼の額からそれを取り除き、中の水を捨てて新しい氷を詰めた。
 それを再び額へと乗せて、ずり落ちないように微妙な位置調整をする。

「…ソニックは走り回ってる方が似合ってるよ」
「まるで犬みたいな言い方しないでくれよ」
「走ってる時の表情、とても嬉しそうだから。早く元気になってね」
「ああ。じっとしてるのは性に合わないからな」

 雑談をしている間にソニックの瞼は重くなっていった。
 風邪薬が効いてきたのだろう。
 曖昧な返事ばかりが続き、やがてその声は寝息へと変わった。
 こんなに静かな風は初めてだ。このまま眠ったまま目を覚まさないのではないか。
 そんな不安が脳裏によぎり、布団からはみ出ている彼の手をぎゅっと握った。
 熱い。
 その手を握ったままベッドの端に頭をもたげて、目を閉じた。

 本人が大したことはないと言っても、周りにとっては心配になるもの。
 特にそれが大切な人だった場合。余計に心配するというものだ。
 ああ、本当に熱い。自分の彼に対する熱は39度をとうに超えているかもしれない。
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