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囚われのお姫様
ある晴れた日の午後だった。
空腹に大好物のチリドッグを堪能して、さて一休みしようか。
そこへピーチがソニックに声をかけた。
「見せたいものがあるから遊びに来て欲しい」と。
試合の予定も入っていなかったので、彼は快く返事をした。
しばらく待っていて欲しいと一室に通された。
そこはきれいに掃除された客間だった。
しばらくはふかふかの椅子に腰掛けたり、壁に掛けられた絵画を見たりして時間を潰していた。
それが飽きた頃、ソニックは部屋を出て庭園を散策することにした。
美しい花々が咲き誇る庭をぐるりと一周した後、ちょうどよい木陰を見つけて昼寝をすることにした。
滑らかな表面をした幹に頭をもたげて、軽く目を瞑る。
噴水の水飛沫、小鳥の鳴き声、降り注ぐ木漏れ日。
食後というのもあってか、ソニックはすぐに夢の中へと入っていった。
ソニックが丘を駆け下りていた時だった。
自分を呼ぶ誰かの声で両目をぱちりと開けた。
辺りを見渡して、ここが丘ではなく庭園だと思い出す。
大きな欠伸と伸びを一つ。それから呼び声を探した。
意外にもその声の主は早く見つけることが出来た。
「ソニック!お部屋にいないから探したのよ」
「Sorry.ちょいと散歩してたんだ」
桃色のパラソルを差したピーチが口を尖らせていた。
彼女は普段パラソルと同じ色のドレスを身に纏っているのだが。
今日は真っ白なドレスを纏っていた。
まるでウェディングドレスのように見える。
今日はどうして白いドレスを着ているんだと彼が尋ねようとする。
だが、彼女の後からやってきたキリカの姿を見て息を呑んだ。
キリカは桃色のドレスに身を包んでいた。
普段ピーチが着ているものだ。
一瞬、錯覚を起こしそうになる。
あまりにも似合いすぎていて、頭がクラクラしていたせいかもしれない。
二の腕まで伸びる白いグローブもよく似合っている。
控えめに化粧も施され、口元のピンクのルージュも引き立っていた。
一躍、姫と化したキリカに見惚れていたのか、ソニックは言葉を失っていた。
しかしこちらの気持ちが伝わる訳もなく、彼女は不安そうに尋ねてくる。
「やっぱり変、かな」
目を逸らし、恥らうように口元に手を当てる仕草も可愛らしい。
ソニックは力一杯首を横に振る。
「カワイイ、…いや、最高にキレイだぜ」
「ほんと?ありがとう」
微笑んだ顔がいつもより何十倍もカワイイ。
しかし、どうしてキリカがドレスを着ているのか。
何か社交的なイベントが近々あっただろうか。
その訳を尋ねようとしたが、それは一陣の風に阻まれた。
北風のような冷たい風が通り抜けた後、彼らをすっぽりと覆う影が出来た。
空を見上げると大きなどんぶりの様なものが浮いていた。
白く塗られたそれには巨大な目と厚い唇がついている。
小さなプロペラがどんぶりの底についていた。これが動力源らしい。
そして地に響くような笑い声が聞こえてきた。
「ガハハハ!ピーチは頂いていくぞ!」
「…まあ!」
「なんだいありゃ?随分クレイジーなロボットだな」
地上にいる者たちの予想通りの反応に満足そうに頷くクッパ。
だが、ふと見下ろしてみると、コカメックに攫わせたはずのピーチがそこにいた。
見間違いだと首を振り、改めて地上を見る。
それから隣を見た。自分の隣には桃色のドレスを着た女性がいる。
「ナ、ナゼピーチではなく、オマエがいるんだ!」
「え、えっと」
「申し訳ありませんクッパさま。桃色の服を着ていたのでつい」
「言い訳ハ聞かん!」
どんぶり機内は意外と狭いようだ。
巨体のクッパにキリカ、そしてコカメックも乗り込んでいるので狭い。
クッパが憤怒に体を揺らすと機体も大きく揺れた。
「ええい!とにかくヒキアゲルぞ!」
クッパは機体の向きを変え、遥か彼方の空へと消えていった。
残された二人は唖然としている。一羽の鳥が前を横切った時、ピーチが事の重大さに気づいたようだ。
「大変!キリカが…マリオに知らせなくちゃ」
「Wait!その役、オレが買って出るぜ」
「ソニックが?…そうね、お願い!キリカを助けてあげて」
「OK.お茶でも用意して待っててくれよ」
ソニックは笑顔を浮かべ、軽く片目を瞑ってみせた。
そして風のような速さで駆けていった。
*
まるで瓦礫を積み上げて出来たような丘が見えた。
雑草一本すら生えるのを許されないような土質。
地面はカラカラに乾いていた。
その丘の上に石造りの城が聳えていた。
城は最近建てられたようでまだ外壁が真新しい。
外壁から所々鉛色の鎖が垂れ下がっている。
いかにも物々しい雰囲気が醸し出ていた。
この城の主は塔の一番高い部屋にいた。
石を積み上げる際に、わざとぽっかりと空けた窓から外を眺めている。
やがて大きな溜息をつき、がっくりと項垂れた。
「サラウ相手をマチガウなど…イッショウの不覚」
「このことをマリオにシラレタら、ワガハイのメンツが」
「…ハア」
大きな甲羅を背負ったその背が哀愁に満ちていた。
攫われてきた身とは言え、あまりの落ち込みぶりに心配せざるを得ない。
キリカはクッパの横に回りこみ、顔を覗き込む。
威厳ある大魔王の目に涙がきらりと浮かんでいた。
「あの、そう落ち込まないで」
「…ワガハイはどうしたら……なっ、ナンダ!」
声をかけられた事に気づかなかったのか、クッパは慌てて涙を振り払った。
今まで自分の考えに閉じこもっていたせいで、キリカの存在を忘れていたようだ。
彼女の姿を見た途端に今度は両腕を振り上げて怒り出す。
「元はとイエバ、オマエがそんなカッコウをしているからだ!」
「ご、ごめんなさい」
クッパが見間違える程、ピーチのトレードマークはこの桃色のドレスらしい。
もしかしたら、マリオも同じように彼女とピーチとを見間違えるかもしれない。
「…ワガハイのメンツをどうしてくれるんだ」
「大丈夫。誰にでも間違いはあるから、ね?」
再び落ち込んでしまったクッパにキリカは優しく声をかけた。
項垂れていたクッパは顔を上げて彼女をじっと見た。
「…オマエはなかなかいいヤツだ。ワガハイのクッパ軍団にハイッテもいいぞ!」
大きな口を開けて豪快に笑っていた。
この申し出の返答に困っていたキリカだが、ちょうどそこへコカメックが飛び込んできた。
「たいへんですクッパさま!」
「ム、どうした」
「城内のシカケがかいめつです!」
「ナンダト!マリオをクルシメルためにツクッタものが!イッタイだれだ!」
「それが…速すぎて姿をとらえられません」
微かに青い残像が見えたとコカメックが言った。
「青い」というフレーズがキリカの脳内にある姿を思い浮かばせた。
「すぐにシュウリしろ!」怒声が響いたと同時に、室内へ青い影が滑り込んできた。
それを見たクッパは後ろに仰け反りそうになった。
「オ、オマエは!」
「Hey,クッパ!キリカを返してもらいに来たぜ」
「オマエがシカケをコワシタのか!」
「ああ、あの火噴いたりするやつのことか?中々面白いアトラクションだったな」
「アトラクションではない!」
クッパが三日三晩寝ずに考えたという仕掛けを全て突破してきたという。
これにまたもやショックを受けたクッパは頭を項垂れてしまった。
「ええい!さっさとそいつをツレテいけ!」
「なんだもう終わりか?まあいいや。キリカ、帰ろうぜ」
「うん」
ソニックはキリカの手をそっと取り、手の甲に敬愛の口付けを落とした。
顔を赤らめる彼女に彼は笑ってみせる。
「しっかり掴まっててくれよ、お姫様」
細い腕でキリカを抱え上げて、ソニックは窓から躊躇いもなく飛び降りた。
彼が地面に降り立つかと思えば、あっという間にその姿は小さくなっていった。
コカメックと共に残されたクッパの背にはまた哀愁が漂っていたという。
*
「…ああ!よかった。二人とも無事ね」
庭園にはピーチとテーブルに用意されたティーセットがあった。
帰ってきたキリカをぎゅっと抱きしめるピーチ。
「ソニックはキリカの王子様ね」と微笑む。
それからピーチはキリカに何か耳打ちをしていた。
何を話しているのかは聞こえないが、キリカがぽっと顔を赤らめた。
「私はいつもそうしているわ」
ピーチが彼女の背を軽くトンと押した。
まごまごとしている様子に首を傾げるソニック。
肩をすくめて「どうしたんだ?」と尋ねる。
「その…ソニック、ありがとう」
「You're welcome.どうってことないさ」
くすくすと笑っているピーチの姿がソニックの視界に入る。
一体何だというのだろうか。思考を巡らしていた時、頬にキリカの唇が触れた。
それはほんの一瞬で、次に見た彼女の顔はリンゴの様に真っ赤になっていた。
ソニックはというと、不意打ちすぎるキスに固まってしまっていた。
ある晴れた日の午後だった。
空腹に大好物のチリドッグを堪能して、さて一休みしようか。
そこへピーチがソニックに声をかけた。
「見せたいものがあるから遊びに来て欲しい」と。
試合の予定も入っていなかったので、彼は快く返事をした。
しばらく待っていて欲しいと一室に通された。
そこはきれいに掃除された客間だった。
しばらくはふかふかの椅子に腰掛けたり、壁に掛けられた絵画を見たりして時間を潰していた。
それが飽きた頃、ソニックは部屋を出て庭園を散策することにした。
美しい花々が咲き誇る庭をぐるりと一周した後、ちょうどよい木陰を見つけて昼寝をすることにした。
滑らかな表面をした幹に頭をもたげて、軽く目を瞑る。
噴水の水飛沫、小鳥の鳴き声、降り注ぐ木漏れ日。
食後というのもあってか、ソニックはすぐに夢の中へと入っていった。
ソニックが丘を駆け下りていた時だった。
自分を呼ぶ誰かの声で両目をぱちりと開けた。
辺りを見渡して、ここが丘ではなく庭園だと思い出す。
大きな欠伸と伸びを一つ。それから呼び声を探した。
意外にもその声の主は早く見つけることが出来た。
「ソニック!お部屋にいないから探したのよ」
「Sorry.ちょいと散歩してたんだ」
桃色のパラソルを差したピーチが口を尖らせていた。
彼女は普段パラソルと同じ色のドレスを身に纏っているのだが。
今日は真っ白なドレスを纏っていた。
まるでウェディングドレスのように見える。
今日はどうして白いドレスを着ているんだと彼が尋ねようとする。
だが、彼女の後からやってきたキリカの姿を見て息を呑んだ。
キリカは桃色のドレスに身を包んでいた。
普段ピーチが着ているものだ。
一瞬、錯覚を起こしそうになる。
あまりにも似合いすぎていて、頭がクラクラしていたせいかもしれない。
二の腕まで伸びる白いグローブもよく似合っている。
控えめに化粧も施され、口元のピンクのルージュも引き立っていた。
一躍、姫と化したキリカに見惚れていたのか、ソニックは言葉を失っていた。
しかしこちらの気持ちが伝わる訳もなく、彼女は不安そうに尋ねてくる。
「やっぱり変、かな」
目を逸らし、恥らうように口元に手を当てる仕草も可愛らしい。
ソニックは力一杯首を横に振る。
「カワイイ、…いや、最高にキレイだぜ」
「ほんと?ありがとう」
微笑んだ顔がいつもより何十倍もカワイイ。
しかし、どうしてキリカがドレスを着ているのか。
何か社交的なイベントが近々あっただろうか。
その訳を尋ねようとしたが、それは一陣の風に阻まれた。
北風のような冷たい風が通り抜けた後、彼らをすっぽりと覆う影が出来た。
空を見上げると大きなどんぶりの様なものが浮いていた。
白く塗られたそれには巨大な目と厚い唇がついている。
小さなプロペラがどんぶりの底についていた。これが動力源らしい。
そして地に響くような笑い声が聞こえてきた。
「ガハハハ!ピーチは頂いていくぞ!」
「…まあ!」
「なんだいありゃ?随分クレイジーなロボットだな」
地上にいる者たちの予想通りの反応に満足そうに頷くクッパ。
だが、ふと見下ろしてみると、コカメックに攫わせたはずのピーチがそこにいた。
見間違いだと首を振り、改めて地上を見る。
それから隣を見た。自分の隣には桃色のドレスを着た女性がいる。
「ナ、ナゼピーチではなく、オマエがいるんだ!」
「え、えっと」
「申し訳ありませんクッパさま。桃色の服を着ていたのでつい」
「言い訳ハ聞かん!」
どんぶり機内は意外と狭いようだ。
巨体のクッパにキリカ、そしてコカメックも乗り込んでいるので狭い。
クッパが憤怒に体を揺らすと機体も大きく揺れた。
「ええい!とにかくヒキアゲルぞ!」
クッパは機体の向きを変え、遥か彼方の空へと消えていった。
残された二人は唖然としている。一羽の鳥が前を横切った時、ピーチが事の重大さに気づいたようだ。
「大変!キリカが…マリオに知らせなくちゃ」
「Wait!その役、オレが買って出るぜ」
「ソニックが?…そうね、お願い!キリカを助けてあげて」
「OK.お茶でも用意して待っててくれよ」
ソニックは笑顔を浮かべ、軽く片目を瞑ってみせた。
そして風のような速さで駆けていった。
*
まるで瓦礫を積み上げて出来たような丘が見えた。
雑草一本すら生えるのを許されないような土質。
地面はカラカラに乾いていた。
その丘の上に石造りの城が聳えていた。
城は最近建てられたようでまだ外壁が真新しい。
外壁から所々鉛色の鎖が垂れ下がっている。
いかにも物々しい雰囲気が醸し出ていた。
この城の主は塔の一番高い部屋にいた。
石を積み上げる際に、わざとぽっかりと空けた窓から外を眺めている。
やがて大きな溜息をつき、がっくりと項垂れた。
「サラウ相手をマチガウなど…イッショウの不覚」
「このことをマリオにシラレタら、ワガハイのメンツが」
「…ハア」
大きな甲羅を背負ったその背が哀愁に満ちていた。
攫われてきた身とは言え、あまりの落ち込みぶりに心配せざるを得ない。
キリカはクッパの横に回りこみ、顔を覗き込む。
威厳ある大魔王の目に涙がきらりと浮かんでいた。
「あの、そう落ち込まないで」
「…ワガハイはどうしたら……なっ、ナンダ!」
声をかけられた事に気づかなかったのか、クッパは慌てて涙を振り払った。
今まで自分の考えに閉じこもっていたせいで、キリカの存在を忘れていたようだ。
彼女の姿を見た途端に今度は両腕を振り上げて怒り出す。
「元はとイエバ、オマエがそんなカッコウをしているからだ!」
「ご、ごめんなさい」
クッパが見間違える程、ピーチのトレードマークはこの桃色のドレスらしい。
もしかしたら、マリオも同じように彼女とピーチとを見間違えるかもしれない。
「…ワガハイのメンツをどうしてくれるんだ」
「大丈夫。誰にでも間違いはあるから、ね?」
再び落ち込んでしまったクッパにキリカは優しく声をかけた。
項垂れていたクッパは顔を上げて彼女をじっと見た。
「…オマエはなかなかいいヤツだ。ワガハイのクッパ軍団にハイッテもいいぞ!」
大きな口を開けて豪快に笑っていた。
この申し出の返答に困っていたキリカだが、ちょうどそこへコカメックが飛び込んできた。
「たいへんですクッパさま!」
「ム、どうした」
「城内のシカケがかいめつです!」
「ナンダト!マリオをクルシメルためにツクッタものが!イッタイだれだ!」
「それが…速すぎて姿をとらえられません」
微かに青い残像が見えたとコカメックが言った。
「青い」というフレーズがキリカの脳内にある姿を思い浮かばせた。
「すぐにシュウリしろ!」怒声が響いたと同時に、室内へ青い影が滑り込んできた。
それを見たクッパは後ろに仰け反りそうになった。
「オ、オマエは!」
「Hey,クッパ!キリカを返してもらいに来たぜ」
「オマエがシカケをコワシタのか!」
「ああ、あの火噴いたりするやつのことか?中々面白いアトラクションだったな」
「アトラクションではない!」
クッパが三日三晩寝ずに考えたという仕掛けを全て突破してきたという。
これにまたもやショックを受けたクッパは頭を項垂れてしまった。
「ええい!さっさとそいつをツレテいけ!」
「なんだもう終わりか?まあいいや。キリカ、帰ろうぜ」
「うん」
ソニックはキリカの手をそっと取り、手の甲に敬愛の口付けを落とした。
顔を赤らめる彼女に彼は笑ってみせる。
「しっかり掴まっててくれよ、お姫様」
細い腕でキリカを抱え上げて、ソニックは窓から躊躇いもなく飛び降りた。
彼が地面に降り立つかと思えば、あっという間にその姿は小さくなっていった。
コカメックと共に残されたクッパの背にはまた哀愁が漂っていたという。
*
「…ああ!よかった。二人とも無事ね」
庭園にはピーチとテーブルに用意されたティーセットがあった。
帰ってきたキリカをぎゅっと抱きしめるピーチ。
「ソニックはキリカの王子様ね」と微笑む。
それからピーチはキリカに何か耳打ちをしていた。
何を話しているのかは聞こえないが、キリカがぽっと顔を赤らめた。
「私はいつもそうしているわ」
ピーチが彼女の背を軽くトンと押した。
まごまごとしている様子に首を傾げるソニック。
肩をすくめて「どうしたんだ?」と尋ねる。
「その…ソニック、ありがとう」
「You're welcome.どうってことないさ」
くすくすと笑っているピーチの姿がソニックの視界に入る。
一体何だというのだろうか。思考を巡らしていた時、頬にキリカの唇が触れた。
それはほんの一瞬で、次に見た彼女の顔はリンゴの様に真っ赤になっていた。
ソニックはというと、不意打ちすぎるキスに固まってしまっていた。