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カナヅチのヒーロー
ソニックは両足の踵を立てて急ブレーキをかけた。
キキッと小気味良い音が響き、風のように加速していたスピードが止まる。
地面に積もった落ち葉に足を取られてしまいそうになるが、そこは経験の賜物。上手くバランスを立て直した。
幾度となく来訪している家の玄関に立ち、ドアをノックしようと腕を上げる。
だがその前にドアが開いてキリカが顔を見せた。
「あ、ソニック。こんにちは」
「Hi!」
片手をひらりと振って挨拶をする。
ふと、彼女が持っている四角いピクニックバスケットに目がいった。
「そうだ、ちょうど良かった。ソニックも一緒に行かない?」
「Where are you going?」
「ドルピックタウンのビーチで遊ぼうってピーチ姫からお誘いを受けたの」
ビーチ。この単語を聞いたソニックは嫌な予感がしたという。
怪訝そうに眉を吊り上げていた。そして両肩をすくめてみせる。
「ビーチって…もうこんなに寒いのにか?」
「あっちの方はまだ暖かいから、充分泳げるみたいだよ」
「…で、キリカもそのビーチに行くっていうのか?」
「うん。大勢の方が楽しいからソニックも一緒に行こうよ」
にこにこと微笑んでいる彼女にソニックは「No.」と言えずにいた。
その一言で沈む彼女の顔が目に見えていたからだ。
「Uhmmm...OK.Let's go.」
ソニックは聞こえないように溜息を吐いてから、親指を後方に向けた。
くるりと背を向けた彼には哀愁が漂っている。だが、キリカは気づいていない。
すま村の森からしばらく歩き、着いた場所はドルピックタウンのビーチ。
先程までは秋風が頬に刺していたというのに、海が煌くこのビーチでは暑さに汗を拭うくらいであった。
場所が違うだけでこんなにも気候が違うのかと二人は驚いていた。
ビーチでは既に何人かが泳いでいるようだ。
浮き輪で浮いている者もいれば、ビーチボールで遊んでいる者もいる。
「二人ともいらっしゃい」
「今日はお誘いありがとうございます。お弁当、はりきっちゃいました」
そう言ってバスケットを持ち上げてピーチに見せた。
水着姿のピーチは上品な笑みを浮かべる。
「あら、楽しみね。パラソルを用意したからそこで休んで頂戴ね」
「はい」
後からも続々と人がやってきた。その挨拶にピーチは回っているようだ。
砂浜に大きなビーチパラソルが立てられており、その下に敷物が敷かれていた。
キリカはそこにバスケットを下ろし、ソニックも日差しから隠れるように座った。
「日差しが熱いね」
「ああ。…それにしても綺麗な海だな」
まさにエメラルドグリーンと表せる程に美しい海。
透けて見える海の中には鮮やかな魚達が泳いでいる。
急に暖かい所に来たせいか、眠気に堪えられずソニックは欠伸をした。
ここで昼寝をするのもいいなと思ったのだが。
「なんだ、お前も来ていたのか」
「オレが来ちゃ悪いかよオッサン」
目の前にスネークが現れたせいで、それも叶わず。
彼は普段のスニーキングスーツを着用しておらず、海水パンツを履いていた。
体格の良い体つきがより一層強調されている。
「いや、"カナヅチ"も海には来るもんなんだなと思ってな」
スネークのその言葉にソニックはむっと口を尖らせた。
隣にいる彼女は目を丸くして驚いている。
「え!ソニック泳げなかったの?…それなのにゴメンね、誘っちゃって」
「Don't worry.…泳ぐだけが海じゃないだろ?」
「うん、そうだけど」
本当に申し訳ないことをしたとキリカはうな垂れていた。
ソニックはいつも通りの笑みを浮かべてみせる。
「そういうオッサンはどうなんだよ、泳ぎの腕前は?」
「俺か?…真冬のアラスカの海を泳いだことならある」
「Reary?!」
スネークの目はどこか遠くを見つめているようであった。
キリカは先程よりも大きく目を見開いていた。
「任務でな。それよりも、カナヅチは放って置いて一緒に泳がないか?」
キリカを海へと誘おうとするが、彼の前に黒い針鼠が現れた。
シャドウは随分と機嫌が悪いのか、元々鋭い目つきを更に吊り上げていた。
「そこの人間、僕と勝負しろ。…あの島まで競争だ」
シャドウが示したのは海の真ん中にある小さな島だった。
この挑戦に乗ったスネークは頷いた。
「いいだろう。審判はマリオに頼むか」
二人はマリオにその旨を伝えて、スタートラインへと向かっていった。
その後姿を見送っているソニックとキリカ。
「なんだかシャドウ、随分と機嫌が悪かったね」
「まあ、理由は大体わかるけどな」
感情表現が素直だと心の内でソニックは笑っていた。
さざ波の音が心地よく、しばらくの間二人はそれを黙って聞いていた。
最初は後ろめたさから自分に付き合ってるのだと思っていた。
「キリカ、いいんだぜ?みんなと泳いでこいよ」
その為に海に来たんだろうとソニックが投げかける。
だが、キリカは不思議そうに目を瞬かせていた。
「行かないよ?だって、私泳げないもの」
「なっ…本当かよ。じゃあ、なんで」
「ソニックもさっき言ったじゃない。泳ぐだけが海じゃないって」
確かにそう言った。けれどもそれは彼女に気を遣わせないためだ。
ソニックは視線を逸らし、頬を掻いた。
「こうやって浜辺で海を眺めるのも素敵でしょ」
「…そうだな。キリカの言う通りだ」
普段、何ともなしに眺めていた海も特別に思えてくる。
これも彼女と一緒だからだとソニックは笑っていた。
「でも、どうして最初に言ってくれなかったの?」
「知られたくなかったんだ。オレが泳げないってこと。特にキリカにはさ」
「そんなに気にするようなことでもないと思うんだけど」
「ヒーローがカナヅチだなんてカッコ悪いだろ?」
少なくともここに来ている者達は皆、泳ぐことが出来る。
英雄、勇者と謳われている彼らは泳げるのに、自分は泳げない。
そのことを気にしていた。
「誰だって苦手なことやものがあるよ。勇者でもヒーローでもね」
「そう言って貰えると、救われた気がする」
誰だって好きな相手には良い所を見せようとするもの。
弱みを見せたくはない。だが、彼女はそれを認めてくれる。
「ねえ、砂でお城作ろうよ。モデルは、そうね…ピーチ城」
「OK!とびっきりでかいの作ろうぜ」
海に遊びに来るのも悪くない。ソニックがそう思えた一日だった。
ソニックは両足の踵を立てて急ブレーキをかけた。
キキッと小気味良い音が響き、風のように加速していたスピードが止まる。
地面に積もった落ち葉に足を取られてしまいそうになるが、そこは経験の賜物。上手くバランスを立て直した。
幾度となく来訪している家の玄関に立ち、ドアをノックしようと腕を上げる。
だがその前にドアが開いてキリカが顔を見せた。
「あ、ソニック。こんにちは」
「Hi!」
片手をひらりと振って挨拶をする。
ふと、彼女が持っている四角いピクニックバスケットに目がいった。
「そうだ、ちょうど良かった。ソニックも一緒に行かない?」
「Where are you going?」
「ドルピックタウンのビーチで遊ぼうってピーチ姫からお誘いを受けたの」
ビーチ。この単語を聞いたソニックは嫌な予感がしたという。
怪訝そうに眉を吊り上げていた。そして両肩をすくめてみせる。
「ビーチって…もうこんなに寒いのにか?」
「あっちの方はまだ暖かいから、充分泳げるみたいだよ」
「…で、キリカもそのビーチに行くっていうのか?」
「うん。大勢の方が楽しいからソニックも一緒に行こうよ」
にこにこと微笑んでいる彼女にソニックは「No.」と言えずにいた。
その一言で沈む彼女の顔が目に見えていたからだ。
「Uhmmm...OK.Let's go.」
ソニックは聞こえないように溜息を吐いてから、親指を後方に向けた。
くるりと背を向けた彼には哀愁が漂っている。だが、キリカは気づいていない。
すま村の森からしばらく歩き、着いた場所はドルピックタウンのビーチ。
先程までは秋風が頬に刺していたというのに、海が煌くこのビーチでは暑さに汗を拭うくらいであった。
場所が違うだけでこんなにも気候が違うのかと二人は驚いていた。
ビーチでは既に何人かが泳いでいるようだ。
浮き輪で浮いている者もいれば、ビーチボールで遊んでいる者もいる。
「二人ともいらっしゃい」
「今日はお誘いありがとうございます。お弁当、はりきっちゃいました」
そう言ってバスケットを持ち上げてピーチに見せた。
水着姿のピーチは上品な笑みを浮かべる。
「あら、楽しみね。パラソルを用意したからそこで休んで頂戴ね」
「はい」
後からも続々と人がやってきた。その挨拶にピーチは回っているようだ。
砂浜に大きなビーチパラソルが立てられており、その下に敷物が敷かれていた。
キリカはそこにバスケットを下ろし、ソニックも日差しから隠れるように座った。
「日差しが熱いね」
「ああ。…それにしても綺麗な海だな」
まさにエメラルドグリーンと表せる程に美しい海。
透けて見える海の中には鮮やかな魚達が泳いでいる。
急に暖かい所に来たせいか、眠気に堪えられずソニックは欠伸をした。
ここで昼寝をするのもいいなと思ったのだが。
「なんだ、お前も来ていたのか」
「オレが来ちゃ悪いかよオッサン」
目の前にスネークが現れたせいで、それも叶わず。
彼は普段のスニーキングスーツを着用しておらず、海水パンツを履いていた。
体格の良い体つきがより一層強調されている。
「いや、"カナヅチ"も海には来るもんなんだなと思ってな」
スネークのその言葉にソニックはむっと口を尖らせた。
隣にいる彼女は目を丸くして驚いている。
「え!ソニック泳げなかったの?…それなのにゴメンね、誘っちゃって」
「Don't worry.…泳ぐだけが海じゃないだろ?」
「うん、そうだけど」
本当に申し訳ないことをしたとキリカはうな垂れていた。
ソニックはいつも通りの笑みを浮かべてみせる。
「そういうオッサンはどうなんだよ、泳ぎの腕前は?」
「俺か?…真冬のアラスカの海を泳いだことならある」
「Reary?!」
スネークの目はどこか遠くを見つめているようであった。
キリカは先程よりも大きく目を見開いていた。
「任務でな。それよりも、カナヅチは放って置いて一緒に泳がないか?」
キリカを海へと誘おうとするが、彼の前に黒い針鼠が現れた。
シャドウは随分と機嫌が悪いのか、元々鋭い目つきを更に吊り上げていた。
「そこの人間、僕と勝負しろ。…あの島まで競争だ」
シャドウが示したのは海の真ん中にある小さな島だった。
この挑戦に乗ったスネークは頷いた。
「いいだろう。審判はマリオに頼むか」
二人はマリオにその旨を伝えて、スタートラインへと向かっていった。
その後姿を見送っているソニックとキリカ。
「なんだかシャドウ、随分と機嫌が悪かったね」
「まあ、理由は大体わかるけどな」
感情表現が素直だと心の内でソニックは笑っていた。
さざ波の音が心地よく、しばらくの間二人はそれを黙って聞いていた。
最初は後ろめたさから自分に付き合ってるのだと思っていた。
「キリカ、いいんだぜ?みんなと泳いでこいよ」
その為に海に来たんだろうとソニックが投げかける。
だが、キリカは不思議そうに目を瞬かせていた。
「行かないよ?だって、私泳げないもの」
「なっ…本当かよ。じゃあ、なんで」
「ソニックもさっき言ったじゃない。泳ぐだけが海じゃないって」
確かにそう言った。けれどもそれは彼女に気を遣わせないためだ。
ソニックは視線を逸らし、頬を掻いた。
「こうやって浜辺で海を眺めるのも素敵でしょ」
「…そうだな。キリカの言う通りだ」
普段、何ともなしに眺めていた海も特別に思えてくる。
これも彼女と一緒だからだとソニックは笑っていた。
「でも、どうして最初に言ってくれなかったの?」
「知られたくなかったんだ。オレが泳げないってこと。特にキリカにはさ」
「そんなに気にするようなことでもないと思うんだけど」
「ヒーローがカナヅチだなんてカッコ悪いだろ?」
少なくともここに来ている者達は皆、泳ぐことが出来る。
英雄、勇者と謳われている彼らは泳げるのに、自分は泳げない。
そのことを気にしていた。
「誰だって苦手なことやものがあるよ。勇者でもヒーローでもね」
「そう言って貰えると、救われた気がする」
誰だって好きな相手には良い所を見せようとするもの。
弱みを見せたくはない。だが、彼女はそれを認めてくれる。
「ねえ、砂でお城作ろうよ。モデルは、そうね…ピーチ城」
「OK!とびっきりでかいの作ろうぜ」
海に遊びに来るのも悪くない。ソニックがそう思えた一日だった。