So sweet.


「Trick or Treat!」

　十月三十一日はハロウィンの日。
　「お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞ！」と子ども達があちこちを駆け回る日だ。
　イタズラを回避する為に大人達はお菓子を用意するのだが、うっかり忘れている人もいるわけで。
　フォックスとファルコはネスとリュカのＰＫサンダーの被害に遭っていた。

「フシー」
「ピカピカチュー」

　勿論ポケモン達もこのお祭りに便乗している。
　キリカの元へやってきたフシギソウやピカチュウ、たくさんのポケモンが彼女を取り囲んでいた。
　小さな手を伸ばしてお菓子をねだっている。

「はいはい、押さないで。みんなの分ちゃんとあるから」

　ポフィンが大きな籠にたくさん詰め込まれていた。
　その籠からポフィンを一人ずつに渡していく。
　受け取ったポケモン達は嬉しそうにポフィンを食べていた。
　その笑顔を微笑ましく見守っていたキリカはある視線に気がつく。
　ルカリオがこちらをじっと見ていた。彼も参加しているのだろうか。

「ルカリオもハロウィンに参加してるの？」
「いや…キリカの作るポフィンは絶品だと聞いたものでな」
「噂されるほどでもないんだけどね。はい、ルカリオの分」
「すまない」

　ポフィンをサクッと食べたルカリオの表情は何も変わっていなかった。
　だが、尻尾がパタパタと嬉しそうに揺れているのが見えた。
　遠くからその様子を見ていたレッドも微笑んでいた。

「Trick or Treat!」

　滑らかな英語がキリカの背後から聞こえた。
　振り向けば口の端を上げて笑っているソニックが目に映った。
　それに応えようとキリカはポフィンを差し出した。

「はい」
「おいおい、オレはポケモンじゃないぜ？」
「ポフィンだって美味しいでしょ」
「まあな。でも今日はそれじゃダメだ」

　ソニックは人差し指を立てて左右に振ってみせる。
　そしてもう一度決まり文句を繰り返した。

「Trick or Treat?」
「うーん、そう言われても…今はポフィンしか持ってないし」
「Then I play a trick.OK?」

　不適な笑みを浮かべたソニックに一瞬身構えるキリカ。
　視界に青が広がったと思ったのもつかの間、彼女の唇に温かいものが触れる。
　目の前にいる彼の人差し指が口元に当てられた。

「You are so sweet.」