S・H人形劇
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いつも通り、彼らしい
「明日はロンドンを案内しよう。イギリスが初めてなら観光にうってつけだ」
そう言ったのは他の誰でもない、ホームズ自身だった。昨日のことだ。
これには日本からホームスティに来たキリカも喜んでいた。
本当ならば彼女の隣にはホームズがいるはずだ。それが今現在、彼の代わりにぼくがいる。
二時間前。ぼくらの住む221Bに依頼人が訪れた。
この時ぼくは無性に嫌な予感がしたんだ。それは見事的中。名射撃主だって目じゃないほどだ。
依頼人が持ちかけてきた事件は彼の好物である奇妙な類のもので、話に食いついていた。
狭い部屋の中をぐるぐると歩き回り、推理を始めたのだ。
もうこうなってしまっては「今日は先約があるだろ?」と言ったとしても聞く耳を持たない。
やれやれと肩をすくめて見せたぼくは黙ってキリカを連れ出した。
そして、今現在ロンドン観光に来ているというわけだ。
「やっぱり、一言伝えてから来た方が良かったんじゃないかしら」
「気にしなくていいよ。どうせ置いていったことなんて彼にとっては大したことないんだし。キリカ、本当にごめん。せっかくのロンドン観光なのに」
「大丈夫よ。一人じゃないし、隣にジョンがいるもの」
「ははっ。それは光栄だな」
ぼくたちはロンドンのバッキンガム宮殿に赴いていた。
彼女にとっては見るものすべてが新鮮なようで、頬を紅潮させて「あれは何?」「すごいわ」と驚いてばかりいた。
そんな姿も愛らしく見える。ホームズ、君は本当になぜこの場所にいないんだい。
「でも良かった」
「なにが?」
「二人とも変わってないな、と思って。ジョンが親切で優しいのも、シャーロックの癖も。私、少し安心しちゃった」
そう言って彼女がはにかんだ。久しぶりに見る彼女の笑い方にぼくも懐かしい気持ちがこみ上げてきた。
学生時代を共に三年間過ごした。キリカはぼく達と特別仲が良くて、あの人付き合いの悪いホームズも気を置いていた。
卒業したと同時に彼女は日本へ帰国したけど、またこうして会えるなんて夢のようだった。
「もう少しだけ英語の勉強をしたい」と彼女は話していたんだ。頑張りやな所は昔と変わっていない。
年を重ねたと言っても、ぼくらはあの頃と変わっていないところもあるんだ。自分ではわからなくても。
とはいえ、ホームズの悪い癖はいかがなものかと思う。
普通の女性ならデートをすっぽかされればカンカンになって怒るだろう。
それなのに彼女は顔色一つ変えずに「相変わらずね」と笑うだけだ。そんなところが変わっていないかった。
「君も相変わらず優しいね。普通の女性は約束すっぽかされたらそんな穏やかな顔してないよ」
「そう?」
「うん」
「私はただ、いつも通りだなって思ってただけよ。依頼人が来た後でも「さあ、ロンドン観光に行こうか」なんて彼が言い出したらそれこそ熱があるんじゃないかって心配しちゃう」
「ああ、まあ……それもそうだね。らしくない」
「そう、らしくないわ。事件の謎を紐解くのに夢中になって、周りのことなんて見えなくなる。それがシャーロック。そうだ、お土産に帰りにケーキでも買っていきましょう。美味しい紅茶も淹れて、三人で頂きましょうよ」
ぼくはキリカの提案に大賛成だった。有名なケーキ屋がこの辺りにあるはずだ。
それに、いくら「らしい」彼でもいささか不機嫌になっていることだろうし。
学生時代にもぼくとキリカが二人で出かけて、帰った時にホームズが盛大に拗ねていたことがあった。
きっとあの日みたいにご機嫌を損ねているに違いない。
今日はあの時と違って彼女もいるし、ケーキと紅茶もある。すぐに機嫌を取り戻すだろう。
「明日はロンドンを案内しよう。イギリスが初めてなら観光にうってつけだ」
そう言ったのは他の誰でもない、ホームズ自身だった。昨日のことだ。
これには日本からホームスティに来たキリカも喜んでいた。
本当ならば彼女の隣にはホームズがいるはずだ。それが今現在、彼の代わりにぼくがいる。
二時間前。ぼくらの住む221Bに依頼人が訪れた。
この時ぼくは無性に嫌な予感がしたんだ。それは見事的中。名射撃主だって目じゃないほどだ。
依頼人が持ちかけてきた事件は彼の好物である奇妙な類のもので、話に食いついていた。
狭い部屋の中をぐるぐると歩き回り、推理を始めたのだ。
もうこうなってしまっては「今日は先約があるだろ?」と言ったとしても聞く耳を持たない。
やれやれと肩をすくめて見せたぼくは黙ってキリカを連れ出した。
そして、今現在ロンドン観光に来ているというわけだ。
「やっぱり、一言伝えてから来た方が良かったんじゃないかしら」
「気にしなくていいよ。どうせ置いていったことなんて彼にとっては大したことないんだし。キリカ、本当にごめん。せっかくのロンドン観光なのに」
「大丈夫よ。一人じゃないし、隣にジョンがいるもの」
「ははっ。それは光栄だな」
ぼくたちはロンドンのバッキンガム宮殿に赴いていた。
彼女にとっては見るものすべてが新鮮なようで、頬を紅潮させて「あれは何?」「すごいわ」と驚いてばかりいた。
そんな姿も愛らしく見える。ホームズ、君は本当になぜこの場所にいないんだい。
「でも良かった」
「なにが?」
「二人とも変わってないな、と思って。ジョンが親切で優しいのも、シャーロックの癖も。私、少し安心しちゃった」
そう言って彼女がはにかんだ。久しぶりに見る彼女の笑い方にぼくも懐かしい気持ちがこみ上げてきた。
学生時代を共に三年間過ごした。キリカはぼく達と特別仲が良くて、あの人付き合いの悪いホームズも気を置いていた。
卒業したと同時に彼女は日本へ帰国したけど、またこうして会えるなんて夢のようだった。
「もう少しだけ英語の勉強をしたい」と彼女は話していたんだ。頑張りやな所は昔と変わっていない。
年を重ねたと言っても、ぼくらはあの頃と変わっていないところもあるんだ。自分ではわからなくても。
とはいえ、ホームズの悪い癖はいかがなものかと思う。
普通の女性ならデートをすっぽかされればカンカンになって怒るだろう。
それなのに彼女は顔色一つ変えずに「相変わらずね」と笑うだけだ。そんなところが変わっていないかった。
「君も相変わらず優しいね。普通の女性は約束すっぽかされたらそんな穏やかな顔してないよ」
「そう?」
「うん」
「私はただ、いつも通りだなって思ってただけよ。依頼人が来た後でも「さあ、ロンドン観光に行こうか」なんて彼が言い出したらそれこそ熱があるんじゃないかって心配しちゃう」
「ああ、まあ……それもそうだね。らしくない」
「そう、らしくないわ。事件の謎を紐解くのに夢中になって、周りのことなんて見えなくなる。それがシャーロック。そうだ、お土産に帰りにケーキでも買っていきましょう。美味しい紅茶も淹れて、三人で頂きましょうよ」
ぼくはキリカの提案に大賛成だった。有名なケーキ屋がこの辺りにあるはずだ。
それに、いくら「らしい」彼でもいささか不機嫌になっていることだろうし。
学生時代にもぼくとキリカが二人で出かけて、帰った時にホームズが盛大に拗ねていたことがあった。
きっとあの日みたいにご機嫌を損ねているに違いない。
今日はあの時と違って彼女もいるし、ケーキと紅茶もある。すぐに機嫌を取り戻すだろう。