S・H人形劇
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No Time Limits.
その事実を知ったのは暮れの十二月のことだった。
ぼくたちの学生生活も残り少し。泣いても笑っても時間は待ってくれない。
六年生のぼくらはそれぞれ進路が決まりつつあった。
「シャーロックはここを卒業したらどうするの?」
「ぼくは大学へ行く。その後は探偵業を開業するつもりさ」
「貴方にぴったり、ううん。それは貴方にしか出来ないわね」
「まだどの辺に住むかは決めていないけどね。君はどうするんだ?」
ぼくがそう尋ねると、彼女は顔を僅かに曇らせた。それも一瞬だけ。
次に言葉を発した時にはいつもの彼女だった。
ぼくはその時から嫌な予感を察知した。
「私、卒業したら……日本に帰ろうと思うの」
ぼくはすっかり忘れていた。彼女が日本人で、生まれも育ちも日本だということを。
長い間一緒に過ごしてきたせいもあるし、彼女がぼくらの生活にあまりにも馴染んでいたせいもあるだろう。
「……そういえば、君が日本人だったことをすっかり忘れていた。だって、君は育ちがイギリスだと言ってもおかしくないぐらい英語も上達したよ」
「ありがとうシャーロック。嬉しいわ」
彼女は照れくさそうに笑った。
ぼくは矢継ぎ早に次の質問を投げかけた。
「それで、日本に戻ってどうするんだい」
「うん。この経験を活かして、通訳関係の仕事ができたらって考えてる。叔母様も賛成してくださったわ」
「そうか。いいんじゃないかな。君に向いていると思うよ」
「貴方にそう言われると、少し自信が出てきそう。不思議ね」
突然、胸がずしりと圧迫されたように痛んだ。
ここ数年で何度か感じたことのある痛みだ。ある時、決まったように突然くる。
最初は心臓や循環器に異常を疑ったけど。それはどうやら違うようだった。
「あ、そろそろ戻るわね。教頭先生の見回り始まる前に。先生、見回り始めるの早いから……それじゃあ、また明日。おやすみなさい」
「おやすみ」
生活指導がモリアーティ教頭になってから夜の見回りが特に厳しくなった。
だからつい話に夢中になって遅くなると厄介なことになる。
過去にも彼女はぼくの事でロイロット先生に怒られていた。
これ以上、ぼくのせいで彼女が咎められるのは正直嫌なんだ。
今の時刻は午後八時半。モリアーティ教頭が見回りを始めるのは午後八時四十五分前後。
ここから彼女の部屋まで充分時間がある。恐らくは見つかる前に滑り込める。
外出している同室の彼も今に戻ってくるだろう。と、予測を立てていたら部屋のドアが開いて、ワトソンが入ってきた。
「ただいま」
「お帰り。今夜は随分長話していたみたいだね」
「いつもと同じぐらいだよ。君こそ、彼女と長話してたじゃないか。さっき階段でキリカとすれ違ったよ」
「本当はもう少し早く返したかったんだけど。話が長引いたんだ。彼女、卒業したら日本へ帰るそうだよ」
「ええっ!」
ワトソンは大げさに驚いていた。きっとぼくと同じ考えを持っていたからだろう。
「彼女の国籍はまだ日本にあるんだ」と言えば、納得したように頷いた。
「あ、ああ……そうか。彼女日本人だっけ。すっかり忘れてたよ。ぼくらの生活に溶け込んでたからね」
「まったくだ」
「……で、君はどうするんだい」
「どうするって?」
ぼくが一言そう返すと彼はまた大げさに溜息をついた。
彼はいちいちぼくの発言にオーバーリアクションを見せる。
「彼女、卒業したら日本へ帰るんだろ。つまり、卒業したらもう会えないってことだよ」
「永遠に会えないってワケじゃない」
「それはそうだけど。……ホームズ、そういうの屁理屈って言うんだ。イギリスから日本までは遠すぎる。気軽に会える距離じゃない」
そんなこと君だってわかってるだろ、とワトソンは言った。
わかっているさ。百も承知だ。
「それと君の話に何の関係が?」
「大有りさ。彼女が帰る前に自分の気持ちを伝えた方がいい。ぜったいにだ」
ぼくはワトソンから目を逸らした。
気持ちを伝えるって簡単に言うけど、具体的には何をどうすればいい。
「ホームズ。いい加減素直になったら?君たちのこと、見てれば分かるよ。三日、いや三年も一緒に過ごしてればね。友達だもの」
「だったら君も知ってるだろう。ぼくが女性嫌いだってことを」
「でも彼女は違う。特別だ。ぼく、前にも聞いたよね。あの時君はどうして彼女に自ら話しかけにいったのかって」
「……」
「その時、君は答えなかった。でも、今はもう答えはわかってるんだろう?」
あれから三年の月日が経った。それだけの時間をかけて、その答えはもう導き出している。
答えが出たからと言って、ぼくにはどうすることもできない。
もやもやした気持ちや、胸の痛み。その謎が解けただけで充分じゃないだろうか。
「……ぼくにはこれ以上のことは言えないよ。あとは君が自分でどうにかするしかないんだ」
「君は本当に、お節介だ」
「お褒めの言葉として受け取っておくよ。じゃあ、おやすみっ」
いささかワトソンの機嫌を損ねたようだ。
彼はぼくの煮え切らない態度に痺れを切らして、踵を返してロフトベッドに上がっていった。
彼との会話が終了した後、ぼくはソファに背中を預けた。
天井の隅に染みが見える。あの頃に比べて随分と染みも増えた。雨漏りが何回かあったせいだ。
ぼんやりと天井を眺めていたぼくは目を閉じて、少し思案に耽ることにした。
*
暇な休み時間だった。
いつもなら中庭に出ている。けど、今日は外に出る気分じゃなかった。
外はもうだいぶ寒いし、身体が冷え切ってしまう。
部屋の窓から外を見下ろしても、今日に限って通行人は少ない。
話し相手になるワトソンは次の授業の準備だと忙しそうに出て行った。
ぼくは暇を持て余していた。
曇っていた窓ガラスを小さな円状に拭いても、すぐに白く曇ってしまう。
ぼくはロフトに上がって、自分のスペースの棚に手を伸ばした。
愛用のヴァイオリンと弓を手にし、一階へ降りる。
左肩にヴァイオリンを乗せ、調弦を済ませる。それから弓で弦に触れた。
楽譜はないけど、頭に自然と浮かんだ曲のワンフレーズを静かに奏で始めた。
しばらくの間、気ままに思うまま弾いていた。
夢中になっていたのか、来客にも気づかず、彼女の拍手の音でぼくは振り返った。
このシーンにデジャヴを感じる。場所は違えど、あの日と同じ景色だ。
「いつ聞いてもシャーロックのヴァイオリンは素敵ね。……なんだか前にもこんなことあったわね。懐かしいな」
「ぼくもそう思っていたよ」
「ねえ、聞いてもいい?どうしてあの時、日本の曲を知っていたの。あの曲そんなに有名でもなかったと思う」
「そんなの簡単さ。君が歌っていたから。あの頃、君は時々音楽室で口ずさんでいた。それを聞いて、弾いたんだ」
なぜ知っていたのか、と聞かれたことに順を追って説明しただけだった。
それなのに彼女は驚いた表情をして、それから「音感が良いのね」と言った。
君の歌が上手いからだよ。そう言いかけて言葉を飲み込んだ。
「やっぱり聞かれてたのね。あの時はどうして知ってるんだろうって不思議だったわ。……正直、三年もイギリスで暮らせたなんて信じられない。あの時、二人が励ましてくれなかったら、私今ここに居なかったと思う」
「ぼくらは何もしていない。ただ、君のそばに居ただけだ」
「それだけでとても心強かった。二人には感謝しきれないわ。本当に、ありがとう」
ワトソンから度々聞かれることがあった。「どうして彼女のそばにいるのか」って。
だからぼくはオウム返しに彼に尋ねた。すると彼は「友達だからさ」と答えた。
ぼくはその質問にすぐには答えられなかった。
彼のように”友達”の一言で済むのか。いや、”親友”と表してもおかしくはない。
ただ、ここまでわかっていても、ぼくは答えることができなかった。どうしてなのか。
考えれば考えるほど感情がかき乱される。それが堪らなく嫌だった。
『君、だいぶ変わったよね。どこがって聞かれたら上手く言えないけど……雰囲気?』
いつだったか、ワトソンにそう言われたことがある。
根拠がないことを言われても実感はできなかった。
ぼく自身は考え方、態度、喋り方も何一つ変えたつもりはない。
ただ、もしも影響されているとしたらその要因は彼女だ。
「ぼくの方こそ。君に逢わなければぼくはここまで変わっていなかった。良くも、悪くも」
「お互い様、かしら?でも、私こそ何もしてないわ」
「ぼくは君に数え切れないぐらい色んなものを貰ったよ。多分、君は気づいていないんだろうけどね」
三年という月日は長くもあり、短くもあった。
そして、卒業まであと少し。やがて彼女は日本へ帰国する。
彼女は日本人で、成すべき目標があって、前向きに生きている。
ぼくが引き止める理由がどこにあるだろう。ぼくの気持ちはきっと足枷にしかならない。
「キリカ。ぼくのそばにいてくれてありがとう。……卒業式の日にはきっと上手く言えないだろうから、今言っておこうと思ってね」
彼女はぼくにとって空気みたいな存在なんだ。
なくてはならない、けれど一箇所に留めておくことは決してできないのだよ、ワトソン君。
これがぼくの答えだ。最初からタイムリミットなんてぼくには関係ないよ。
その事実を知ったのは暮れの十二月のことだった。
ぼくたちの学生生活も残り少し。泣いても笑っても時間は待ってくれない。
六年生のぼくらはそれぞれ進路が決まりつつあった。
「シャーロックはここを卒業したらどうするの?」
「ぼくは大学へ行く。その後は探偵業を開業するつもりさ」
「貴方にぴったり、ううん。それは貴方にしか出来ないわね」
「まだどの辺に住むかは決めていないけどね。君はどうするんだ?」
ぼくがそう尋ねると、彼女は顔を僅かに曇らせた。それも一瞬だけ。
次に言葉を発した時にはいつもの彼女だった。
ぼくはその時から嫌な予感を察知した。
「私、卒業したら……日本に帰ろうと思うの」
ぼくはすっかり忘れていた。彼女が日本人で、生まれも育ちも日本だということを。
長い間一緒に過ごしてきたせいもあるし、彼女がぼくらの生活にあまりにも馴染んでいたせいもあるだろう。
「……そういえば、君が日本人だったことをすっかり忘れていた。だって、君は育ちがイギリスだと言ってもおかしくないぐらい英語も上達したよ」
「ありがとうシャーロック。嬉しいわ」
彼女は照れくさそうに笑った。
ぼくは矢継ぎ早に次の質問を投げかけた。
「それで、日本に戻ってどうするんだい」
「うん。この経験を活かして、通訳関係の仕事ができたらって考えてる。叔母様も賛成してくださったわ」
「そうか。いいんじゃないかな。君に向いていると思うよ」
「貴方にそう言われると、少し自信が出てきそう。不思議ね」
突然、胸がずしりと圧迫されたように痛んだ。
ここ数年で何度か感じたことのある痛みだ。ある時、決まったように突然くる。
最初は心臓や循環器に異常を疑ったけど。それはどうやら違うようだった。
「あ、そろそろ戻るわね。教頭先生の見回り始まる前に。先生、見回り始めるの早いから……それじゃあ、また明日。おやすみなさい」
「おやすみ」
生活指導がモリアーティ教頭になってから夜の見回りが特に厳しくなった。
だからつい話に夢中になって遅くなると厄介なことになる。
過去にも彼女はぼくの事でロイロット先生に怒られていた。
これ以上、ぼくのせいで彼女が咎められるのは正直嫌なんだ。
今の時刻は午後八時半。モリアーティ教頭が見回りを始めるのは午後八時四十五分前後。
ここから彼女の部屋まで充分時間がある。恐らくは見つかる前に滑り込める。
外出している同室の彼も今に戻ってくるだろう。と、予測を立てていたら部屋のドアが開いて、ワトソンが入ってきた。
「ただいま」
「お帰り。今夜は随分長話していたみたいだね」
「いつもと同じぐらいだよ。君こそ、彼女と長話してたじゃないか。さっき階段でキリカとすれ違ったよ」
「本当はもう少し早く返したかったんだけど。話が長引いたんだ。彼女、卒業したら日本へ帰るそうだよ」
「ええっ!」
ワトソンは大げさに驚いていた。きっとぼくと同じ考えを持っていたからだろう。
「彼女の国籍はまだ日本にあるんだ」と言えば、納得したように頷いた。
「あ、ああ……そうか。彼女日本人だっけ。すっかり忘れてたよ。ぼくらの生活に溶け込んでたからね」
「まったくだ」
「……で、君はどうするんだい」
「どうするって?」
ぼくが一言そう返すと彼はまた大げさに溜息をついた。
彼はいちいちぼくの発言にオーバーリアクションを見せる。
「彼女、卒業したら日本へ帰るんだろ。つまり、卒業したらもう会えないってことだよ」
「永遠に会えないってワケじゃない」
「それはそうだけど。……ホームズ、そういうの屁理屈って言うんだ。イギリスから日本までは遠すぎる。気軽に会える距離じゃない」
そんなこと君だってわかってるだろ、とワトソンは言った。
わかっているさ。百も承知だ。
「それと君の話に何の関係が?」
「大有りさ。彼女が帰る前に自分の気持ちを伝えた方がいい。ぜったいにだ」
ぼくはワトソンから目を逸らした。
気持ちを伝えるって簡単に言うけど、具体的には何をどうすればいい。
「ホームズ。いい加減素直になったら?君たちのこと、見てれば分かるよ。三日、いや三年も一緒に過ごしてればね。友達だもの」
「だったら君も知ってるだろう。ぼくが女性嫌いだってことを」
「でも彼女は違う。特別だ。ぼく、前にも聞いたよね。あの時君はどうして彼女に自ら話しかけにいったのかって」
「……」
「その時、君は答えなかった。でも、今はもう答えはわかってるんだろう?」
あれから三年の月日が経った。それだけの時間をかけて、その答えはもう導き出している。
答えが出たからと言って、ぼくにはどうすることもできない。
もやもやした気持ちや、胸の痛み。その謎が解けただけで充分じゃないだろうか。
「……ぼくにはこれ以上のことは言えないよ。あとは君が自分でどうにかするしかないんだ」
「君は本当に、お節介だ」
「お褒めの言葉として受け取っておくよ。じゃあ、おやすみっ」
いささかワトソンの機嫌を損ねたようだ。
彼はぼくの煮え切らない態度に痺れを切らして、踵を返してロフトベッドに上がっていった。
彼との会話が終了した後、ぼくはソファに背中を預けた。
天井の隅に染みが見える。あの頃に比べて随分と染みも増えた。雨漏りが何回かあったせいだ。
ぼんやりと天井を眺めていたぼくは目を閉じて、少し思案に耽ることにした。
*
暇な休み時間だった。
いつもなら中庭に出ている。けど、今日は外に出る気分じゃなかった。
外はもうだいぶ寒いし、身体が冷え切ってしまう。
部屋の窓から外を見下ろしても、今日に限って通行人は少ない。
話し相手になるワトソンは次の授業の準備だと忙しそうに出て行った。
ぼくは暇を持て余していた。
曇っていた窓ガラスを小さな円状に拭いても、すぐに白く曇ってしまう。
ぼくはロフトに上がって、自分のスペースの棚に手を伸ばした。
愛用のヴァイオリンと弓を手にし、一階へ降りる。
左肩にヴァイオリンを乗せ、調弦を済ませる。それから弓で弦に触れた。
楽譜はないけど、頭に自然と浮かんだ曲のワンフレーズを静かに奏で始めた。
しばらくの間、気ままに思うまま弾いていた。
夢中になっていたのか、来客にも気づかず、彼女の拍手の音でぼくは振り返った。
このシーンにデジャヴを感じる。場所は違えど、あの日と同じ景色だ。
「いつ聞いてもシャーロックのヴァイオリンは素敵ね。……なんだか前にもこんなことあったわね。懐かしいな」
「ぼくもそう思っていたよ」
「ねえ、聞いてもいい?どうしてあの時、日本の曲を知っていたの。あの曲そんなに有名でもなかったと思う」
「そんなの簡単さ。君が歌っていたから。あの頃、君は時々音楽室で口ずさんでいた。それを聞いて、弾いたんだ」
なぜ知っていたのか、と聞かれたことに順を追って説明しただけだった。
それなのに彼女は驚いた表情をして、それから「音感が良いのね」と言った。
君の歌が上手いからだよ。そう言いかけて言葉を飲み込んだ。
「やっぱり聞かれてたのね。あの時はどうして知ってるんだろうって不思議だったわ。……正直、三年もイギリスで暮らせたなんて信じられない。あの時、二人が励ましてくれなかったら、私今ここに居なかったと思う」
「ぼくらは何もしていない。ただ、君のそばに居ただけだ」
「それだけでとても心強かった。二人には感謝しきれないわ。本当に、ありがとう」
ワトソンから度々聞かれることがあった。「どうして彼女のそばにいるのか」って。
だからぼくはオウム返しに彼に尋ねた。すると彼は「友達だからさ」と答えた。
ぼくはその質問にすぐには答えられなかった。
彼のように”友達”の一言で済むのか。いや、”親友”と表してもおかしくはない。
ただ、ここまでわかっていても、ぼくは答えることができなかった。どうしてなのか。
考えれば考えるほど感情がかき乱される。それが堪らなく嫌だった。
『君、だいぶ変わったよね。どこがって聞かれたら上手く言えないけど……雰囲気?』
いつだったか、ワトソンにそう言われたことがある。
根拠がないことを言われても実感はできなかった。
ぼく自身は考え方、態度、喋り方も何一つ変えたつもりはない。
ただ、もしも影響されているとしたらその要因は彼女だ。
「ぼくの方こそ。君に逢わなければぼくはここまで変わっていなかった。良くも、悪くも」
「お互い様、かしら?でも、私こそ何もしてないわ」
「ぼくは君に数え切れないぐらい色んなものを貰ったよ。多分、君は気づいていないんだろうけどね」
三年という月日は長くもあり、短くもあった。
そして、卒業まであと少し。やがて彼女は日本へ帰国する。
彼女は日本人で、成すべき目標があって、前向きに生きている。
ぼくが引き止める理由がどこにあるだろう。ぼくの気持ちはきっと足枷にしかならない。
「キリカ。ぼくのそばにいてくれてありがとう。……卒業式の日にはきっと上手く言えないだろうから、今言っておこうと思ってね」
彼女はぼくにとって空気みたいな存在なんだ。
なくてはならない、けれど一箇所に留めておくことは決してできないのだよ、ワトソン君。
これがぼくの答えだ。最初からタイムリミットなんてぼくには関係ないよ。