鋼の錬金術師
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
優しい人と強がりな人
テレビの中で若い男性二人組の芸能人が喋っている。
片方は背が高くて細い。もう一人はぽっちゃりとした体形。
この二人は最近流行りだしたお笑い芸人。
一週間のうちに割とテレビで見かけるようになった。
私も結構好きで、この二人が司会やゲストで出演していたらチャンネルを変えずに見ているぐらい。
大抵は茶碗洗いや洗濯物を畳む、など何かしながらだけど。
今日はご当地の食べ物や風習を紹介するレギュラー番組に二人が出ていた。
エドが隣で「あれ美味そうだな~」「あんなもん食えるのかよ」と素直な感想を口にしている。
それに私は適当すぎない相槌を打っていた。
いつものようにソファに並んで寄りかかって、珈琲を飲む。
ああ、もう十時を過ぎている。
そろそろ明日の用意と寝る準備をしないといけない。
そう考えたら少し憂うつだった。
「なあ、キリカ」
「うん?」
「オレの気のせいだったらいいんだけどさ。もしかして、具合悪かったりするのか」
「どこも悪くないし、むしろ元気だよ」
「嘘だ。じゃあ、さっきの溜め息はなんだよ」
「私、溜め息なんかついてた?」
「さっきので十回目」
驚いてしまった。
観察力が鋭いと思っていたけど、ここまでとは思わなかった。
私のことをよく見ている。
溜め息をついていても、自分じゃせいぜい二、三回だと思ってたから。
エドには隠し事が出来なさそう。
「少し疲れてるだけよ」
「それ、前にも聞いた気がするけど」
「そうだったかな。ちょっと最近仕事が忙しくてね」
ある日を境に日常の業務がぐっと増えた。
だいぶ慣れては来たけど、以前に比べて疲労を強く感じる。
自分ではストレスを貯めないようにと気を配っている。
それでもやっぱり見えない所で貯まっているんだろう。
溜め息の数が証拠。
目眩の回数も増えたなんてエドには言えない。
「少しは頼ってくれたっていいんじゃないの。一人で溜め込んでたら辛いだけだろ。話し相手いるんだからさ」
ここに。と、エドが自分の胸に手のひらを当てた。
至って真面目な表情。そこから私を本当に心配してくれている様子が汲み取れた。
貴方は知らない。
ただそこにいるだけで私がどれだけ救われているかを。
ただ、私の愚痴とか泣き言を話したら敬遠されそうで。黙っていた。
そんなに優しくされたら、私。
黙っていた私にエドはこれ以上聞くことを諦めたように目をそらす。
「無理にとは言わねえけど。……聞いて欲しくなったらいつでも言ってくれ」
「うん。……エドは優しいね」
「優しいのはキリカの方だろ」
「え?」
私のどこが優しいのだろう。
純粋にそんな疑問が浮かんだ。
思い当たる節は特にない。
流石に自分が意地悪い人間だとは思っていないけど。
「優しいからそんなに悩んでんだろ。優しくない人間はそんなに悩んだりしないからな」
つい、涙があふれそうになった。
最近はちょっとしたことで涙腺が緩みがちになっていけない。
私は「ありがとう」と口にしたつもりが、それは声にもならない掠れた音になっていた。
抱えていたクッションに顔をうずめて、両腕でそれを抱きしめた。
テレビからは笑い声が聞こえる。
ふと、頭に温かい重みを感じた。
まるで泣きじゃくっている子どものようだ。
涙で濡らしたクッション、明日には乾いていますように。
テレビの中で若い男性二人組の芸能人が喋っている。
片方は背が高くて細い。もう一人はぽっちゃりとした体形。
この二人は最近流行りだしたお笑い芸人。
一週間のうちに割とテレビで見かけるようになった。
私も結構好きで、この二人が司会やゲストで出演していたらチャンネルを変えずに見ているぐらい。
大抵は茶碗洗いや洗濯物を畳む、など何かしながらだけど。
今日はご当地の食べ物や風習を紹介するレギュラー番組に二人が出ていた。
エドが隣で「あれ美味そうだな~」「あんなもん食えるのかよ」と素直な感想を口にしている。
それに私は適当すぎない相槌を打っていた。
いつものようにソファに並んで寄りかかって、珈琲を飲む。
ああ、もう十時を過ぎている。
そろそろ明日の用意と寝る準備をしないといけない。
そう考えたら少し憂うつだった。
「なあ、キリカ」
「うん?」
「オレの気のせいだったらいいんだけどさ。もしかして、具合悪かったりするのか」
「どこも悪くないし、むしろ元気だよ」
「嘘だ。じゃあ、さっきの溜め息はなんだよ」
「私、溜め息なんかついてた?」
「さっきので十回目」
驚いてしまった。
観察力が鋭いと思っていたけど、ここまでとは思わなかった。
私のことをよく見ている。
溜め息をついていても、自分じゃせいぜい二、三回だと思ってたから。
エドには隠し事が出来なさそう。
「少し疲れてるだけよ」
「それ、前にも聞いた気がするけど」
「そうだったかな。ちょっと最近仕事が忙しくてね」
ある日を境に日常の業務がぐっと増えた。
だいぶ慣れては来たけど、以前に比べて疲労を強く感じる。
自分ではストレスを貯めないようにと気を配っている。
それでもやっぱり見えない所で貯まっているんだろう。
溜め息の数が証拠。
目眩の回数も増えたなんてエドには言えない。
「少しは頼ってくれたっていいんじゃないの。一人で溜め込んでたら辛いだけだろ。話し相手いるんだからさ」
ここに。と、エドが自分の胸に手のひらを当てた。
至って真面目な表情。そこから私を本当に心配してくれている様子が汲み取れた。
貴方は知らない。
ただそこにいるだけで私がどれだけ救われているかを。
ただ、私の愚痴とか泣き言を話したら敬遠されそうで。黙っていた。
そんなに優しくされたら、私。
黙っていた私にエドはこれ以上聞くことを諦めたように目をそらす。
「無理にとは言わねえけど。……聞いて欲しくなったらいつでも言ってくれ」
「うん。……エドは優しいね」
「優しいのはキリカの方だろ」
「え?」
私のどこが優しいのだろう。
純粋にそんな疑問が浮かんだ。
思い当たる節は特にない。
流石に自分が意地悪い人間だとは思っていないけど。
「優しいからそんなに悩んでんだろ。優しくない人間はそんなに悩んだりしないからな」
つい、涙があふれそうになった。
最近はちょっとしたことで涙腺が緩みがちになっていけない。
私は「ありがとう」と口にしたつもりが、それは声にもならない掠れた音になっていた。
抱えていたクッションに顔をうずめて、両腕でそれを抱きしめた。
テレビからは笑い声が聞こえる。
ふと、頭に温かい重みを感じた。
まるで泣きじゃくっている子どものようだ。
涙で濡らしたクッション、明日には乾いていますように。