S・H人形劇
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I like here,and them.
よく晴れた休日のことだった。
その日はホームズの依頼人が殆ど来なかった。
いつもなら廊下をずらりと並ぶぐらい相談をする生徒が来るのに、今日は数えるのに片手で足りたぐらいだ。
午前十時半を回る頃にはぱったりと客足が途絶えた。
「今日は依頼人が少なかったね」
「多い日はティータイムまでかかるものね。今日はゆっくりできそうで良かった」
「まったくだよ」
最後の依頼人が来た後、少ししてから別のお客さんがきた。キリカだ。
彼女はよく221Bの部屋に来るようになった。その一番の理由はぼくらの話を聞きにくるため。いつも真剣にぼくらの話を聞いてくれる。
彼女が笑うたびにぼくは嬉しくなった。何より話を聞いてくれるのがとても嬉しい。
なにせルームメイトは話しかけても聞いているのか聞いてないのか。聞いていないことの方が多い。
その彼は依頼人が来ない日は退屈を持て余していたけど、今はそうでもないみたいだ。
「キリカ、見てごらん。一週間前よりもだいぶ成長している」
「……わあ!本当ね。形もキレイだし、まるで宝石みたい」
「これは透明だけど、クロムミョウバンを加えればアメジストの様な色に着色することもできる」
「へえ……すごいのね。シャーロックは私の知らないこと何でも知ってる」
「ぼくだって最初は知らなかった。自分でやってみて初めてわかることもあるんだ」
ホームズとキリカはビーカーの中を覗き込んでいた。ビーカーの中には三センチ位の八面体の結晶が釣り下がっている。
ちょうど一週間前にミョウバンの結晶を作る実験を始めたんだ。最初は虫眼鏡で見ないとわからないぐらいの大きさだったけど、日に日に大きくなっていった。今じゃ彼女が言うようにまるで宝石みたいに透明できれいな結晶になった。
ホームズが「もう少し大きくできるかもしれない」と呟いた。
ぼくたちはいつからかお互いをファーストネームで呼び合うようになっていた。
ホームズとぼくは変わらずファミリーネームで呼んでいるけど。お互いその方が呼びやすいんだ。
もし、今ホームズから「ジョン」と呼ばれてもぼくは振り向かないかもしれない。
ふと廊下から陽気な歌声が聞こえてきた。その歌声は段々近づいてくる。
やがてそれはぼくらの部屋の前で立ち止まり、軽快なノックが聞こえた。
ぼくが「どうぞ」と答えるとハドソン夫人が歌いながら入ってきた。
手に大きなトレイを持っている。トレイには紅茶のポットとティーカップが三つ。それと山盛りのクッキーが乗っていた。
「お茶の時間よ~シャーロック」
ハドソン夫人はその場でくるりと回って、トレイをソファの前にあるテーブルに置いた。
いつも陽気に歌って踊りながらで、よく落とさないなあと感心してしまう。
夫人はぼくらの顔を順番に見てからキリカに向かってにっこり微笑んだ。
「ごきげんよう、キリカ。良かったここに居たのね。カップが無駄にならなくてすんだわあ」
「ごきげんよう、ハドソン夫人」
「今日はココアのクッキーを焼いてみたのよ。今お茶を淹れるわね」
「いつもすみませんハドソン夫人」
ホームズはハドソン夫人に気に入られている。そのおかげでこうしてお茶の時間にありつけるんだけど。
キリカが散らかってるテーブルの上を片付けている間に紅茶のいい香りが漂ってきた。
三人分の紅茶を淹れ終えた夫人がまた歌を口ずさみながらくるりと回り、キリカの頭を優しく撫でる。
撫でられているキリカは少し恥ずかしそうにしていた。
「本当に良かった。この間よりも顔色がいいわね。きっとここの暮らしに慣れてきたからね」
「あ、おかげ様で」
「いいお友達もできたみたいだし」
にこにこと笑うハドソン夫人はぼくとホームズの顔を見比べた。
ホームズは黙って紅茶を飲んでいる。きっとこの話も聞いていない。
ハドソン夫人の言葉にキリカはカップに手を添えて、柔らかく微笑んだ。
「私、この部屋も二人のことも大好きです」
「そう言われるとなんだか照れるなあ。ぼくももちろん、キリカのことが大好きだよ。大事な友達だからね」
ねえ、ホームズ。と彼にも話を投げかけた。けれど、ぼくが目を向けた時には既に彼は椅子ごと後ろを向いてしまっていた。
窓の方を眺めながら紅茶を飲んでいるようだった。ほらまた話を聞いていない。
良い香りの紅茶に夢中なんだ。と、てっきりぼくはそう思っていた。でも、よく見たらホームズの耳が赤く染まっている。
部屋が暑いのかな、それとも熱があるとか。いや、違う。これはもしかして。
「あなた達がキリカと仲良しになってくれて、私本当に嬉しいわ!これからも仲良くしてあげてね!」
「は、はい」
ぼくの推理が一つに纏まろうとした時、急に夫人が抱きついてきたから危うく紅茶を零しそうになった。
もう一度ホームズを盗み見た。彼はいつの間にかこちらを向いていて、何食わぬ顔でココアクッキーに手を伸ばしていた。
彼女はぼくらの事をlikeの意味で好きだと言ったんだと思う。
でも、もしかしたらホームズは。
今度この話を彼にしてみよう。思わぬ表情が見られるかもしれない。
とりあえずこの推理は置いといて、今は焼きたてのココアクッキーを味わうことにした。
よく晴れた休日のことだった。
その日はホームズの依頼人が殆ど来なかった。
いつもなら廊下をずらりと並ぶぐらい相談をする生徒が来るのに、今日は数えるのに片手で足りたぐらいだ。
午前十時半を回る頃にはぱったりと客足が途絶えた。
「今日は依頼人が少なかったね」
「多い日はティータイムまでかかるものね。今日はゆっくりできそうで良かった」
「まったくだよ」
最後の依頼人が来た後、少ししてから別のお客さんがきた。キリカだ。
彼女はよく221Bの部屋に来るようになった。その一番の理由はぼくらの話を聞きにくるため。いつも真剣にぼくらの話を聞いてくれる。
彼女が笑うたびにぼくは嬉しくなった。何より話を聞いてくれるのがとても嬉しい。
なにせルームメイトは話しかけても聞いているのか聞いてないのか。聞いていないことの方が多い。
その彼は依頼人が来ない日は退屈を持て余していたけど、今はそうでもないみたいだ。
「キリカ、見てごらん。一週間前よりもだいぶ成長している」
「……わあ!本当ね。形もキレイだし、まるで宝石みたい」
「これは透明だけど、クロムミョウバンを加えればアメジストの様な色に着色することもできる」
「へえ……すごいのね。シャーロックは私の知らないこと何でも知ってる」
「ぼくだって最初は知らなかった。自分でやってみて初めてわかることもあるんだ」
ホームズとキリカはビーカーの中を覗き込んでいた。ビーカーの中には三センチ位の八面体の結晶が釣り下がっている。
ちょうど一週間前にミョウバンの結晶を作る実験を始めたんだ。最初は虫眼鏡で見ないとわからないぐらいの大きさだったけど、日に日に大きくなっていった。今じゃ彼女が言うようにまるで宝石みたいに透明できれいな結晶になった。
ホームズが「もう少し大きくできるかもしれない」と呟いた。
ぼくたちはいつからかお互いをファーストネームで呼び合うようになっていた。
ホームズとぼくは変わらずファミリーネームで呼んでいるけど。お互いその方が呼びやすいんだ。
もし、今ホームズから「ジョン」と呼ばれてもぼくは振り向かないかもしれない。
ふと廊下から陽気な歌声が聞こえてきた。その歌声は段々近づいてくる。
やがてそれはぼくらの部屋の前で立ち止まり、軽快なノックが聞こえた。
ぼくが「どうぞ」と答えるとハドソン夫人が歌いながら入ってきた。
手に大きなトレイを持っている。トレイには紅茶のポットとティーカップが三つ。それと山盛りのクッキーが乗っていた。
「お茶の時間よ~シャーロック」
ハドソン夫人はその場でくるりと回って、トレイをソファの前にあるテーブルに置いた。
いつも陽気に歌って踊りながらで、よく落とさないなあと感心してしまう。
夫人はぼくらの顔を順番に見てからキリカに向かってにっこり微笑んだ。
「ごきげんよう、キリカ。良かったここに居たのね。カップが無駄にならなくてすんだわあ」
「ごきげんよう、ハドソン夫人」
「今日はココアのクッキーを焼いてみたのよ。今お茶を淹れるわね」
「いつもすみませんハドソン夫人」
ホームズはハドソン夫人に気に入られている。そのおかげでこうしてお茶の時間にありつけるんだけど。
キリカが散らかってるテーブルの上を片付けている間に紅茶のいい香りが漂ってきた。
三人分の紅茶を淹れ終えた夫人がまた歌を口ずさみながらくるりと回り、キリカの頭を優しく撫でる。
撫でられているキリカは少し恥ずかしそうにしていた。
「本当に良かった。この間よりも顔色がいいわね。きっとここの暮らしに慣れてきたからね」
「あ、おかげ様で」
「いいお友達もできたみたいだし」
にこにこと笑うハドソン夫人はぼくとホームズの顔を見比べた。
ホームズは黙って紅茶を飲んでいる。きっとこの話も聞いていない。
ハドソン夫人の言葉にキリカはカップに手を添えて、柔らかく微笑んだ。
「私、この部屋も二人のことも大好きです」
「そう言われるとなんだか照れるなあ。ぼくももちろん、キリカのことが大好きだよ。大事な友達だからね」
ねえ、ホームズ。と彼にも話を投げかけた。けれど、ぼくが目を向けた時には既に彼は椅子ごと後ろを向いてしまっていた。
窓の方を眺めながら紅茶を飲んでいるようだった。ほらまた話を聞いていない。
良い香りの紅茶に夢中なんだ。と、てっきりぼくはそう思っていた。でも、よく見たらホームズの耳が赤く染まっている。
部屋が暑いのかな、それとも熱があるとか。いや、違う。これはもしかして。
「あなた達がキリカと仲良しになってくれて、私本当に嬉しいわ!これからも仲良くしてあげてね!」
「は、はい」
ぼくの推理が一つに纏まろうとした時、急に夫人が抱きついてきたから危うく紅茶を零しそうになった。
もう一度ホームズを盗み見た。彼はいつの間にかこちらを向いていて、何食わぬ顔でココアクッキーに手を伸ばしていた。
彼女はぼくらの事をlikeの意味で好きだと言ったんだと思う。
でも、もしかしたらホームズは。
今度この話を彼にしてみよう。思わぬ表情が見られるかもしれない。
とりあえずこの推理は置いといて、今は焼きたてのココアクッキーを味わうことにした。