鋼の錬金術師
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A little years ago. 前編
彼女と面識があったのは何年前のことだったか。
不思議なことに記憶が曖昧で不鮮明になっていた。
これが時の流れ、風化というものなのだろうか。
彼女は同期でもあり、私の部下だった。
明朗快活、男勝り。強い信念を持った彼女の目は力強い。
そして、時に相手を思いやる優しい目を持っていたことを覚えている。
私と同じように国家錬金術師でもあった。
「マスタング少佐、手を貸しましょうか」
私の目の前に白い手が差し出された。
上司の私にこんなことを言ってくるのは彼女だけだった。
「結構。君には私がそんなに疲れているように見えるのかね」
「いいえ。あの岬まで全速力で駆け抜けていけるほど余力をお持ちだと思っています」
「……それでは村に着くまでに倒れてしまうだろ」
「少佐ならいけると思いますけど」
「一応誉め言葉として受け取っておこう」
この時、私たちは上の命令である村の偵察に赴いていた。
私一人で充分だと申し出たはずが、彼女も同行することになってしまったのだ。
「僭越ながら私もお供致します。少佐は雨の日は無能でいらっしゃいますからね」
その一言に反論ができずにいた。
湿気が多い日は得意の炎を練成することができない。
周囲も「それもそうだ」と賛同し、結果私は彼女と共に遠征することになったのだ。
「君は随分と体力があるんだな」
「そうですか?軍人なら基礎体力があって当然だと思いますけどね」
「私が言いたいのはそうではなく、女性の割りに体力があると」
「それはそうですよ。私の錬金術は体力がなければ務まりませんから。少佐、私はこの先を見てきます。早く追いついてきてくださいね」
彼女は悪びれた様子がまったくなく、そう言うと私の肩をぽんと叩いた。
すると途端に肩の重荷が軽くなる。今までの疲れが嘘のように消え去った。
かなり先の方に彼女の姿が見えた。
彼女の二つ名は 慈悲の錬金術師。
触れた相手の身体を癒すことができる力を持つ。
彼女の力を錬金術と呼ぶには相応しくないかもしれない。
法力、癒しの力、女神の御手。様々な通り名があった。
しかし、相手の疲労を癒すという力は当然術者にかかる負担は大きかった。
体力、精神力共に強くなければ自我を保っていられないものだ。
彼女ならその心配は要らない。
いままでずっと見てきた私が言うのだから、間違いない。
そう、信じていた。
彼女と面識があったのは何年前のことだったか。
不思議なことに記憶が曖昧で不鮮明になっていた。
これが時の流れ、風化というものなのだろうか。
彼女は同期でもあり、私の部下だった。
明朗快活、男勝り。強い信念を持った彼女の目は力強い。
そして、時に相手を思いやる優しい目を持っていたことを覚えている。
私と同じように国家錬金術師でもあった。
「マスタング少佐、手を貸しましょうか」
私の目の前に白い手が差し出された。
上司の私にこんなことを言ってくるのは彼女だけだった。
「結構。君には私がそんなに疲れているように見えるのかね」
「いいえ。あの岬まで全速力で駆け抜けていけるほど余力をお持ちだと思っています」
「……それでは村に着くまでに倒れてしまうだろ」
「少佐ならいけると思いますけど」
「一応誉め言葉として受け取っておこう」
この時、私たちは上の命令である村の偵察に赴いていた。
私一人で充分だと申し出たはずが、彼女も同行することになってしまったのだ。
「僭越ながら私もお供致します。少佐は雨の日は無能でいらっしゃいますからね」
その一言に反論ができずにいた。
湿気が多い日は得意の炎を練成することができない。
周囲も「それもそうだ」と賛同し、結果私は彼女と共に遠征することになったのだ。
「君は随分と体力があるんだな」
「そうですか?軍人なら基礎体力があって当然だと思いますけどね」
「私が言いたいのはそうではなく、女性の割りに体力があると」
「それはそうですよ。私の錬金術は体力がなければ務まりませんから。少佐、私はこの先を見てきます。早く追いついてきてくださいね」
彼女は悪びれた様子がまったくなく、そう言うと私の肩をぽんと叩いた。
すると途端に肩の重荷が軽くなる。今までの疲れが嘘のように消え去った。
かなり先の方に彼女の姿が見えた。
彼女の二つ名は 慈悲の錬金術師。
触れた相手の身体を癒すことができる力を持つ。
彼女の力を錬金術と呼ぶには相応しくないかもしれない。
法力、癒しの力、女神の御手。様々な通り名があった。
しかし、相手の疲労を癒すという力は当然術者にかかる負担は大きかった。
体力、精神力共に強くなければ自我を保っていられないものだ。
彼女ならその心配は要らない。
いままでずっと見てきた私が言うのだから、間違いない。
そう、信じていた。