鋼の錬金術師
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あたたかい手を繋いで
「ありがとうございます」
貸し出しカウンターのお姉さんから本の山を受け取った。
それを空いている机まで運んでから、エコバックを取り出す。
大小ある本をエコバックに収まりよく詰めていく。
一つの袋に収まったのだけど、やっぱり二つに分けた方が良かったかも。
片手で持つには重い。
もうひとつ花柄のエコバックを鞄から出そうと思っていたら、目の前から本の袋が消えた。
エドがその袋を重さなんてなんのその。軽そうに持っている。
「エド、半分持つよ」
「いいよ。自分で読むやつだし」
「そう?」
「レディに荷物を持たせるのはマナー違反、ってやつだからな」
エドは変な顔をしながら誰かの口調を真似るように喋った。
少し大人っぽい感じの雰囲気の人。
でも、その言い方と表情からその人のことをあまり好いていないみたい。
誰かの真似かと聞いてみたら、逆に聞き返されてしまった。
「誰かの受け売り?」
「え、なんで」
「今、エドじゃない声が出てた」
「そんな気色悪い声出てたか?」
「うん」
きっと気づかないうちに真似をしていたんだろうな。
彼は心底嫌そうな、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
土曜日の午後。
こうやって二人で図書館に通うのが習慣になっていた。
もう何回目になるだろう。まだ片手で数えるぐらいしかないのに、ずっと長い間そうしている気がする。
彼が読む本は殆どが化学や錬金術の類のもの。
読み終わった本をたまに私もぺらぺらと捲ってみるけど、書いてあることが難しすぎた。
なんとか読み進めようとしてると 「眉間に皺が寄ってる」とエドに言われてしまったこともある。
難しい本を読んでるイメージが強いけど、たまに物語りも借りているようで、ソファに寝転がりながらそれを読んでいた。
居眠りして手から本が滑り落ちてることもあるけど。
「今日は天気もいいし、一駅歩いちゃおうか」
「賛成。少しは運動しないと体が鈍っちまう」
「そうね。冬はどうしても運動不足になるし」
私の住む地域は雪が多い方だ。
積もった雪が溶けずに残って根雪になる。
当然外気温も低い。凍る歩道を好んでジョギングしている人もいるけど、私はごめんかな。
三月下旬になれば雪も溶けはじめて、暖かくなる。
桜の開花は四月下旬になるけど、今も一歩一歩春に近づいている。
プラス外気温が増えたこの頃は手袋をつけないで出かけることが増えた。
風がなく、太陽が出ている日はあったかい。
逆を言えば風が吹いていると、うっかり薄着の時は凍えるみたく寒い。
特に今頃は風がとても冷たく感じられる。
私は暑さに弱くて、寒さにも弱い。
どちらかといえば寒い方がマシかもしれない。
北国生まれなせいもあるけど、熱い時は着る物に限度がある。
冬は着込めば寒さをしのげる、という理由が一番。
隣を歩く彼も寒がりだ。
このくらいの気温でも「さみいいい」と冷たい風が吹くたびに身を震わせている。
それなのにどうして一駅も歩こうっていう提案に乗ってきたんだろう。
「エド、寒くない?」
「……このぐらい、どうってことない」
マフラーに顔を埋めながら答える彼の姿に説得力はない。
荷物を持たない左腕をコートのポケットに突っ込んでいた。
声も少し震えている。
「私は手袋忘れたから冷たくて、寒いかな」
「キリカの手、すぐ冷たくなるもんな」
「周りの気温が低いと冷たくなるのよ。私、変温動物なのかも」
「そんなに皮膚が柔らかい変温動物がいるかよ。トカゲとかヘビじゃあるまいし」
「だって部屋が少し寒いだけでそうなるんだもの」
「ふーん」
少しでも寒くないようにと袖に隠していた手をエドが握ってきた。
とても温かい。私の手とは大違い。ちゃんと熱を持ってる。
「ホントに冷たいな。ちゃんと血通ってんのか?」
「通ってますよ。エドの手はあったかいね。私の手よりも大きいし」
「……その言葉に『身長の割には』とか含んでねーか」
「思ってないよ、そんなこと。エドはまだまだこれから伸びるよ、きっと」
「おう。勿論だ!」
エドは笑顔で返してくれた。
それにしても、やっぱり男の人なんだなって思わされる。
手の平はごつごつして、皮膚が固いけど、あったかい。
彼の世界はココと違う。
傷跡が同年代と比べて多いような来もする。
私の知らない、彼の世界で色々な経験をしてきたんだろう。
辛いことも、悲しいこともたくさん。
私にはきっと数えきれないほどの。
「エド。このまま手、繋いでてもいい?」
「い、いいけど」
「エドの手、あったかい」
「カイロ代わりかよ」
少し不満げに言いながらも、エドが手を握り直してくれた。
「ありがとうございます」
貸し出しカウンターのお姉さんから本の山を受け取った。
それを空いている机まで運んでから、エコバックを取り出す。
大小ある本をエコバックに収まりよく詰めていく。
一つの袋に収まったのだけど、やっぱり二つに分けた方が良かったかも。
片手で持つには重い。
もうひとつ花柄のエコバックを鞄から出そうと思っていたら、目の前から本の袋が消えた。
エドがその袋を重さなんてなんのその。軽そうに持っている。
「エド、半分持つよ」
「いいよ。自分で読むやつだし」
「そう?」
「レディに荷物を持たせるのはマナー違反、ってやつだからな」
エドは変な顔をしながら誰かの口調を真似るように喋った。
少し大人っぽい感じの雰囲気の人。
でも、その言い方と表情からその人のことをあまり好いていないみたい。
誰かの真似かと聞いてみたら、逆に聞き返されてしまった。
「誰かの受け売り?」
「え、なんで」
「今、エドじゃない声が出てた」
「そんな気色悪い声出てたか?」
「うん」
きっと気づかないうちに真似をしていたんだろうな。
彼は心底嫌そうな、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
土曜日の午後。
こうやって二人で図書館に通うのが習慣になっていた。
もう何回目になるだろう。まだ片手で数えるぐらいしかないのに、ずっと長い間そうしている気がする。
彼が読む本は殆どが化学や錬金術の類のもの。
読み終わった本をたまに私もぺらぺらと捲ってみるけど、書いてあることが難しすぎた。
なんとか読み進めようとしてると 「眉間に皺が寄ってる」とエドに言われてしまったこともある。
難しい本を読んでるイメージが強いけど、たまに物語りも借りているようで、ソファに寝転がりながらそれを読んでいた。
居眠りして手から本が滑り落ちてることもあるけど。
「今日は天気もいいし、一駅歩いちゃおうか」
「賛成。少しは運動しないと体が鈍っちまう」
「そうね。冬はどうしても運動不足になるし」
私の住む地域は雪が多い方だ。
積もった雪が溶けずに残って根雪になる。
当然外気温も低い。凍る歩道を好んでジョギングしている人もいるけど、私はごめんかな。
三月下旬になれば雪も溶けはじめて、暖かくなる。
桜の開花は四月下旬になるけど、今も一歩一歩春に近づいている。
プラス外気温が増えたこの頃は手袋をつけないで出かけることが増えた。
風がなく、太陽が出ている日はあったかい。
逆を言えば風が吹いていると、うっかり薄着の時は凍えるみたく寒い。
特に今頃は風がとても冷たく感じられる。
私は暑さに弱くて、寒さにも弱い。
どちらかといえば寒い方がマシかもしれない。
北国生まれなせいもあるけど、熱い時は着る物に限度がある。
冬は着込めば寒さをしのげる、という理由が一番。
隣を歩く彼も寒がりだ。
このくらいの気温でも「さみいいい」と冷たい風が吹くたびに身を震わせている。
それなのにどうして一駅も歩こうっていう提案に乗ってきたんだろう。
「エド、寒くない?」
「……このぐらい、どうってことない」
マフラーに顔を埋めながら答える彼の姿に説得力はない。
荷物を持たない左腕をコートのポケットに突っ込んでいた。
声も少し震えている。
「私は手袋忘れたから冷たくて、寒いかな」
「キリカの手、すぐ冷たくなるもんな」
「周りの気温が低いと冷たくなるのよ。私、変温動物なのかも」
「そんなに皮膚が柔らかい変温動物がいるかよ。トカゲとかヘビじゃあるまいし」
「だって部屋が少し寒いだけでそうなるんだもの」
「ふーん」
少しでも寒くないようにと袖に隠していた手をエドが握ってきた。
とても温かい。私の手とは大違い。ちゃんと熱を持ってる。
「ホントに冷たいな。ちゃんと血通ってんのか?」
「通ってますよ。エドの手はあったかいね。私の手よりも大きいし」
「……その言葉に『身長の割には』とか含んでねーか」
「思ってないよ、そんなこと。エドはまだまだこれから伸びるよ、きっと」
「おう。勿論だ!」
エドは笑顔で返してくれた。
それにしても、やっぱり男の人なんだなって思わされる。
手の平はごつごつして、皮膚が固いけど、あったかい。
彼の世界はココと違う。
傷跡が同年代と比べて多いような来もする。
私の知らない、彼の世界で色々な経験をしてきたんだろう。
辛いことも、悲しいこともたくさん。
私にはきっと数えきれないほどの。
「エド。このまま手、繋いでてもいい?」
「い、いいけど」
「エドの手、あったかい」
「カイロ代わりかよ」
少し不満げに言いながらも、エドが手を握り直してくれた。