鋼の錬金術師
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こころづよさ
困った。
ここまで酷いことになるのは何年ぶりだろう。
体を起こせないぐらい頭が重い。
それに喉がひどく痛くて、唾を飲み込むのも辛い。
昨日は喉の違和感だけだったのに、ここまで酷くなると思ってなかった。
なんて、そう言えばウソになる。
私が体調を崩すときは大体パターンが決まっていて、前日の喉の違和感と体全体の寒気。
枕元に置いてある体温計を銜えて、額の汗を拭った。
窓ががたがたと揺れた気がした。
耳が篭っていて音がよく聞こえないけど、外は風が強いのかもしれない。
ピピピッ
電子体温計の数値は平熱を遥かに上回っていた。
目覚ましはまだ鳴っていない。でもあと五分で鳴りだす。
現在時刻を改めて確認した私はため息をついた。
今日は日曜日。
仕事のことは考えなくてすむけど、今日中になんとか回復しないと明日が辛い。
病院は休診日だし、一人暮らしだとこういう時に本当に困る。
全部自分でやらなきゃいけないから。
実家で生活していた時のことを感謝しなくちゃいけない。
そんなことをぐるぐる考えていても現状は変わらないのもわかっている。
私は重たくてだるい体を起こしてベッドから降りた。
カーテンを開けるのはやめておこう。
朝ごはんを食べたらすぐに休むつもりだし。
パジャマの上から部屋着のパーカーを被って部屋を出る。
足の裏が冷たいのか、フローリングが冷たいのかもはやわからなかった。
リビングに通じるドアを開けて、真っ先に目に飛び込んできたのは明るい金髪。
それを見て私はようやく思い出して、妙な安心感に包まれた。
私は、今は一人じゃなかったんだ。
こちらから「おはよう」と声をかけるより早く、窓際に立っていたエドが振り向いた。
一瞬で私の様子を察してしまったのか、彼の表情が曇る。
「おい、大丈夫か。顔色すっげー悪いしそれに、あっつ!熱あるじゃねーか!」
どうやら私の額は体温計いらずみたい。
一瞬だけ触れたエドの手の方が冷たく感じた。
「風邪、引いちゃったみたいで」
自分に聞こえる声は喉の調子が悪いせいか、耳が悪いのか。
元気のないくぐもった声に聞こえた。
「だったら起きてこないで寝てた方がいい。ほら、戻った戻った!」
「あ、でも」
回れ右させられて自分の部屋に押し戻されていく。
そのままベッドに押し込まれて掛け布団を被せられてしまった。
側にはエドが仁王立ちしている。
「今日一日大人しく寝てろ。今氷持ってくるから」
「うん。……あ、ちょうど氷切らしてたかも」
冬場は氷を使うことが滅多にないから、あまり補充していない。
もしかしたら製氷機はすっからかんかも。
でも、エドはそんなこと関係ないという風に笑っていた。
「おいおい、オレを誰だと思ってんだ?いいからちょっと待ってろ。あ、洗面器借りるぞ!」
慌しく部屋を出るエドを見送って、私はパーカーを脱いだ。
夜中に結構な汗をかいていたみたいだし、下着も取り替えたい。
でもその暇はなく、すぐにエドが洗面器を抱えて戻ってきた。
その洗面器には水が張ってあった。
どこから見つけてきたのか、空の氷のうまで脇に抱えている。
「氷のう、よく見つけたね」
「キッチンの戸棚にしまってあるの見つけたんだ」
洗面器の水面が大きく波打っている。
それを床に置いて、エドも両膝をそこについた。
「へへ、見てろよ」
ニカッと笑ったエドは両手を一度合わせる。
その二つの手から静電気のような輪の光が現れた。
彼が両手を洗面器にかざすと、あの時のように眩しい光が溢れた。
軽く目をつぶって、開くと洗面器が大変なことになっていた。
洗面器の水は凍り付いていて、細い氷の柱が何本も突き出ていた。
細いといっても私の力じゃ折れなさそうな太さ。
それを意図も簡単にへし折って、さらにそれを半分、三つに折っていく。
氷の欠片になったものを氷のうに集めていった。
「じゃーん。これで頭が冷やせるだろ」
渡された氷のうはひんやりとしていて気持ちがいい。
エドの錬金術を見るのはこれで二度目だった。
ぽかんとそれを見ていた私は素直にすごいと思っていた。
「すごいね。……エドがいてくれて良かった」
「それってオレが便利だから~とかじゃないだろうな?」
「ふふっ。もちろんよ。さっきだってそう、この家には私一人しかいないんだって思ってたらエドがいた。貴方がいてくれて心強いの」
「それならよし。氷なくなったら言ってくれ、すぐ作るからよ」
「ありがとう。一応製氷機に水も入れておいてほしいな。何度も氷作ってたらエドが疲れちゃうもの」
「このぐらい疲れるうちに入んねーって。あと必要なもんは……そうだ、飯は?食欲あるか」
「ほら寝てろって」とまたベッドの中に押し込まれた。
氷のうを額に乗せるととてもひんやりした。
食欲は正直ない。喉が腫れたように痛いし。
「ん、……リンゴジュース飲みたい」
「だよな。喉の調子悪そうだし、風邪によさそうなもん作ってくるよ」
「ごめんね」
「いーってこと。前も言っただろ、少しは甘えろって。……彼氏なんだし」
尻すぼみのエドの言葉に思わず笑ってしまう。
私は甘えられる人がいて本当に幸せ。そう感じた。
「今日は付っきりで看病してやるからな。何でも言ってくれ」
「頼もしいわ。でも、着替える時はちょっと席外してね?」
「んなっ、わ、わかってらあ!」
私より真っ赤な顔をしたエドが部屋を出て行った。
ちょっとからかいすぎちゃったかな。
困った。
ここまで酷いことになるのは何年ぶりだろう。
体を起こせないぐらい頭が重い。
それに喉がひどく痛くて、唾を飲み込むのも辛い。
昨日は喉の違和感だけだったのに、ここまで酷くなると思ってなかった。
なんて、そう言えばウソになる。
私が体調を崩すときは大体パターンが決まっていて、前日の喉の違和感と体全体の寒気。
枕元に置いてある体温計を銜えて、額の汗を拭った。
窓ががたがたと揺れた気がした。
耳が篭っていて音がよく聞こえないけど、外は風が強いのかもしれない。
ピピピッ
電子体温計の数値は平熱を遥かに上回っていた。
目覚ましはまだ鳴っていない。でもあと五分で鳴りだす。
現在時刻を改めて確認した私はため息をついた。
今日は日曜日。
仕事のことは考えなくてすむけど、今日中になんとか回復しないと明日が辛い。
病院は休診日だし、一人暮らしだとこういう時に本当に困る。
全部自分でやらなきゃいけないから。
実家で生活していた時のことを感謝しなくちゃいけない。
そんなことをぐるぐる考えていても現状は変わらないのもわかっている。
私は重たくてだるい体を起こしてベッドから降りた。
カーテンを開けるのはやめておこう。
朝ごはんを食べたらすぐに休むつもりだし。
パジャマの上から部屋着のパーカーを被って部屋を出る。
足の裏が冷たいのか、フローリングが冷たいのかもはやわからなかった。
リビングに通じるドアを開けて、真っ先に目に飛び込んできたのは明るい金髪。
それを見て私はようやく思い出して、妙な安心感に包まれた。
私は、今は一人じゃなかったんだ。
こちらから「おはよう」と声をかけるより早く、窓際に立っていたエドが振り向いた。
一瞬で私の様子を察してしまったのか、彼の表情が曇る。
「おい、大丈夫か。顔色すっげー悪いしそれに、あっつ!熱あるじゃねーか!」
どうやら私の額は体温計いらずみたい。
一瞬だけ触れたエドの手の方が冷たく感じた。
「風邪、引いちゃったみたいで」
自分に聞こえる声は喉の調子が悪いせいか、耳が悪いのか。
元気のないくぐもった声に聞こえた。
「だったら起きてこないで寝てた方がいい。ほら、戻った戻った!」
「あ、でも」
回れ右させられて自分の部屋に押し戻されていく。
そのままベッドに押し込まれて掛け布団を被せられてしまった。
側にはエドが仁王立ちしている。
「今日一日大人しく寝てろ。今氷持ってくるから」
「うん。……あ、ちょうど氷切らしてたかも」
冬場は氷を使うことが滅多にないから、あまり補充していない。
もしかしたら製氷機はすっからかんかも。
でも、エドはそんなこと関係ないという風に笑っていた。
「おいおい、オレを誰だと思ってんだ?いいからちょっと待ってろ。あ、洗面器借りるぞ!」
慌しく部屋を出るエドを見送って、私はパーカーを脱いだ。
夜中に結構な汗をかいていたみたいだし、下着も取り替えたい。
でもその暇はなく、すぐにエドが洗面器を抱えて戻ってきた。
その洗面器には水が張ってあった。
どこから見つけてきたのか、空の氷のうまで脇に抱えている。
「氷のう、よく見つけたね」
「キッチンの戸棚にしまってあるの見つけたんだ」
洗面器の水面が大きく波打っている。
それを床に置いて、エドも両膝をそこについた。
「へへ、見てろよ」
ニカッと笑ったエドは両手を一度合わせる。
その二つの手から静電気のような輪の光が現れた。
彼が両手を洗面器にかざすと、あの時のように眩しい光が溢れた。
軽く目をつぶって、開くと洗面器が大変なことになっていた。
洗面器の水は凍り付いていて、細い氷の柱が何本も突き出ていた。
細いといっても私の力じゃ折れなさそうな太さ。
それを意図も簡単にへし折って、さらにそれを半分、三つに折っていく。
氷の欠片になったものを氷のうに集めていった。
「じゃーん。これで頭が冷やせるだろ」
渡された氷のうはひんやりとしていて気持ちがいい。
エドの錬金術を見るのはこれで二度目だった。
ぽかんとそれを見ていた私は素直にすごいと思っていた。
「すごいね。……エドがいてくれて良かった」
「それってオレが便利だから~とかじゃないだろうな?」
「ふふっ。もちろんよ。さっきだってそう、この家には私一人しかいないんだって思ってたらエドがいた。貴方がいてくれて心強いの」
「それならよし。氷なくなったら言ってくれ、すぐ作るからよ」
「ありがとう。一応製氷機に水も入れておいてほしいな。何度も氷作ってたらエドが疲れちゃうもの」
「このぐらい疲れるうちに入んねーって。あと必要なもんは……そうだ、飯は?食欲あるか」
「ほら寝てろって」とまたベッドの中に押し込まれた。
氷のうを額に乗せるととてもひんやりした。
食欲は正直ない。喉が腫れたように痛いし。
「ん、……リンゴジュース飲みたい」
「だよな。喉の調子悪そうだし、風邪によさそうなもん作ってくるよ」
「ごめんね」
「いーってこと。前も言っただろ、少しは甘えろって。……彼氏なんだし」
尻すぼみのエドの言葉に思わず笑ってしまう。
私は甘えられる人がいて本当に幸せ。そう感じた。
「今日は付っきりで看病してやるからな。何でも言ってくれ」
「頼もしいわ。でも、着替える時はちょっと席外してね?」
「んなっ、わ、わかってらあ!」
私より真っ赤な顔をしたエドが部屋を出て行った。
ちょっとからかいすぎちゃったかな。