がんばれゴエモン
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立秋を過ぎて
立秋が過ぎ、暦の上では秋を迎えている。徐々に暑さが和らいでいき、朝と夕方は涼しいと感じられた。風が吹けば軒先の風鈴をちりんちりんと鳴らし、心地よい涼風を運んでくる。
夕方の早い時間帯、ゴエモンの家にエビス丸、ヤエ、サスケが偶然にも集まった。折角集まったのだからとキリカは夕飯を振る舞い、賑やかな食卓を囲んだ。食事を済ませた後もそれは続き、いつしか酒盛りになっていた。酒盛りと言えど、主に飲んでいるのはヤエとゴエモンの二人。エビス丸は料理をたらふく食べて満足そうに横になっている。サスケは日本酒よりも緑茶が良いと言っているし、キリカは酔うほど飲んではいない。
酒盛りが始まって半刻も経たないうちに大きな笑い声が部屋に響いていた。近所から苦情が来るのではないかと心配をしていたが、誰も怒鳴り込みに来なかった。
この声の主は驚いたことにヤエのものだ。飲み始めた頃はそうでもなかったのだが、次第に酔いが回り、上機嫌で饒舌になっていく。声量も段々と上がっていき、豪快に笑う場面も見られた。
「おいおいヤエちゃん、ちいと飲みすぎじゃねえか?」
そうゴエモンがたしなめれば、途端にヤエはむっと口を尖らせる。そして隣に座っているキリカの首に腕を回して引き寄せた。
「なによう。私が悪いっていうの?」
「別にそういうわけじゃあ」
「ふーんだ。ゴエモンさんなんかにキリカさんはあげないわ」
「ヤエさん」
「だめよキリカさん、あんな人の所にいっちゃあ。ゴエモンさんったらあーんな事やこーんな事してるんだから」
「…ヤエちゃんおいらに何か恨みでもあんのか?」
ヤエはキリカを抱え込んだままけらけらと笑っている。だがそれはぱたりと止み、まるでぜんまいが解けたように動かなくなった。大丈夫かとキリカが顔を覗き込めばヤエは寝息を立てて寝ていた。騒ぐだけ騒いで寝てしまったヤエに溜息をつくゴエモン。肩を軽く揺すっても起きる気配は全くない。
「ヤエ殿は酔いつぶれて寝てしまうと朝まで起きないでござる」
「このままにはしておけないし…。サスケさん、私の部屋までヤエさんを運ぶの手伝ってもらえますか」
「承知でござる」
サスケはヤエを軽々と持ち上げて肩に担ぎ上げた。二人が玄関から出て行く。束の間、隣から物音が聞こえてきた。彼女は朝になれば目を覚ますだろうが、酔っていた間のことは殆ど覚えていない。あの悪い酒癖はどうにかならないかともう一度溜息をついた。
猪口の酒をぐいと飲み干す。自分も少し飲みすぎたかと火照った顔に手で風を送った。家の中に居るよりは外へ出て風に当たった方が涼しいだろう。そう考えたゴエモンは腰を上げて外へ出た。
上弦の月が出ていた。空に雲の影は見当たらず、煌々と月は輝いている。
冷たい夜風を肌に感じる。昼間とは全く質の違う涼しい風だ。そういえばもう立秋を過ぎたのかと思いながら欠伸を一つ。通りで寝苦しい夜が減ったわけだ。
隣から戻ってきたキリカがゴエモンに声をかけた。ヤエを布団に寝かしつけた後、サスケも睡眠に入ったという。
今日の宴会はこれでお開きですねとキリカは笑っていた。
「良い月だな」
「ええ、本当に。二人で月見酒でもしましょうか?」
「おいおい勘弁してくれよ。おいらまで酔いつぶれちまうぜ」
「そうなったら私が介抱してあげますよ」
キリカは冗談交じりに笑っている。それなら飲んでも良いかと思えてきてしまう。
だが、それを選ばずにゴエモンは腕を伸ばしてキリカを抱き寄せた。腕の中にすっぽりと体を収め、首元に顔を埋める。
「そいつもいいが、こうしてキリカと話してる方がいい」
「…もう。ゴエモンさん酔ってるでしょ」
「ん…そうかもな。もうちっと付き合ってくれよ」
とっくに冷めていた酔いがまた回りそうだ。
ただその酔いは酒によるものではない。それに気がついていたキリカは自分も充分酔っていると頬を寄せた。
立秋が過ぎ、暦の上では秋を迎えている。徐々に暑さが和らいでいき、朝と夕方は涼しいと感じられた。風が吹けば軒先の風鈴をちりんちりんと鳴らし、心地よい涼風を運んでくる。
夕方の早い時間帯、ゴエモンの家にエビス丸、ヤエ、サスケが偶然にも集まった。折角集まったのだからとキリカは夕飯を振る舞い、賑やかな食卓を囲んだ。食事を済ませた後もそれは続き、いつしか酒盛りになっていた。酒盛りと言えど、主に飲んでいるのはヤエとゴエモンの二人。エビス丸は料理をたらふく食べて満足そうに横になっている。サスケは日本酒よりも緑茶が良いと言っているし、キリカは酔うほど飲んではいない。
酒盛りが始まって半刻も経たないうちに大きな笑い声が部屋に響いていた。近所から苦情が来るのではないかと心配をしていたが、誰も怒鳴り込みに来なかった。
この声の主は驚いたことにヤエのものだ。飲み始めた頃はそうでもなかったのだが、次第に酔いが回り、上機嫌で饒舌になっていく。声量も段々と上がっていき、豪快に笑う場面も見られた。
「おいおいヤエちゃん、ちいと飲みすぎじゃねえか?」
そうゴエモンがたしなめれば、途端にヤエはむっと口を尖らせる。そして隣に座っているキリカの首に腕を回して引き寄せた。
「なによう。私が悪いっていうの?」
「別にそういうわけじゃあ」
「ふーんだ。ゴエモンさんなんかにキリカさんはあげないわ」
「ヤエさん」
「だめよキリカさん、あんな人の所にいっちゃあ。ゴエモンさんったらあーんな事やこーんな事してるんだから」
「…ヤエちゃんおいらに何か恨みでもあんのか?」
ヤエはキリカを抱え込んだままけらけらと笑っている。だがそれはぱたりと止み、まるでぜんまいが解けたように動かなくなった。大丈夫かとキリカが顔を覗き込めばヤエは寝息を立てて寝ていた。騒ぐだけ騒いで寝てしまったヤエに溜息をつくゴエモン。肩を軽く揺すっても起きる気配は全くない。
「ヤエ殿は酔いつぶれて寝てしまうと朝まで起きないでござる」
「このままにはしておけないし…。サスケさん、私の部屋までヤエさんを運ぶの手伝ってもらえますか」
「承知でござる」
サスケはヤエを軽々と持ち上げて肩に担ぎ上げた。二人が玄関から出て行く。束の間、隣から物音が聞こえてきた。彼女は朝になれば目を覚ますだろうが、酔っていた間のことは殆ど覚えていない。あの悪い酒癖はどうにかならないかともう一度溜息をついた。
猪口の酒をぐいと飲み干す。自分も少し飲みすぎたかと火照った顔に手で風を送った。家の中に居るよりは外へ出て風に当たった方が涼しいだろう。そう考えたゴエモンは腰を上げて外へ出た。
上弦の月が出ていた。空に雲の影は見当たらず、煌々と月は輝いている。
冷たい夜風を肌に感じる。昼間とは全く質の違う涼しい風だ。そういえばもう立秋を過ぎたのかと思いながら欠伸を一つ。通りで寝苦しい夜が減ったわけだ。
隣から戻ってきたキリカがゴエモンに声をかけた。ヤエを布団に寝かしつけた後、サスケも睡眠に入ったという。
今日の宴会はこれでお開きですねとキリカは笑っていた。
「良い月だな」
「ええ、本当に。二人で月見酒でもしましょうか?」
「おいおい勘弁してくれよ。おいらまで酔いつぶれちまうぜ」
「そうなったら私が介抱してあげますよ」
キリカは冗談交じりに笑っている。それなら飲んでも良いかと思えてきてしまう。
だが、それを選ばずにゴエモンは腕を伸ばしてキリカを抱き寄せた。腕の中にすっぽりと体を収め、首元に顔を埋める。
「そいつもいいが、こうしてキリカと話してる方がいい」
「…もう。ゴエモンさん酔ってるでしょ」
「ん…そうかもな。もうちっと付き合ってくれよ」
とっくに冷めていた酔いがまた回りそうだ。
ただその酔いは酒によるものではない。それに気がついていたキリカは自分も充分酔っていると頬を寄せた。