がんばれゴエモン
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鐘を報せる者
透明度が高い水色の風鈴が軒先に吊るされていた。静かに風に揺られ、ちりんちりんと高い音を立てる。
暑さを和らげてくれる音を耳で聞き、涼を感じる。その音を聞きつけた隣人が玄関から出てきた。
ゴエモンは軒先を見上げ、ちりんと鳴る風鈴に「良い音だな」と言った。
「さっき万屋で買ってきたんです。気分だけでも涼しくなると思って。ゴエモンさんの分も買ってきました」
「貰っちまっていいのか?」
「よろしかったらどうぞ。あまり高い物では無いですけど」
「ありがとよ」
値段は気にすることではないし、良い音を聞かせてくれればそれで良いものだ。
軒先に吊るされた風鈴がちりんと音を出した。気まぐれな風が二つの風鈴を揺らしていく。
屋内から風鈴を眺め、茶をたしなむ。涼しい風が時折吹き込み、キリカの長い髪を揺らしていた。
それを見ていたことに気づいたのか、キリカがゴエモンの方へ振り向く。刹那、どきりと心臓が跳ね上がる。
キリカは長い髪に触れて毛先を弄る。手から零れた髪がさらさらと肩に落ちていった。
「私、自分が居た時代では髪が短かったんですよ」
「そうだとしたら随分伸びたんじゃねえか?」
「ここに来た時、もうこの長さでした」
元の髪の長さを首の辺りに手を当てて示す。想像はつかないが、相当短かったことはわかった。
不思議なこともあるもんだと湯呑みを傾ける。サスケが買ってきたという緑茶は確かに美味い。
「長すぎてちょっと邪魔だったりするんですけどね」
「その髪型、似合ってると思うけどな。髪もきれいだしよ」
「そう、ですか…?じゃあ、伸ばそうかな」
耳に髪をかける仕草。優しい眼差しに、微笑み。
外の気温が上がったのだろうか、急に熱さを感じた。片手をひらひらと仰ぎ、温い風を肌に送っていた。
「私は海が見える町で育ったんです。季節関係なく、いつも立ち寄っていました。潮風の香りが好きだったから」
「へえ。ここも海は近いが流石に潮の香りまでは届いてこねえからなあ」
「こう暑いと海に行きたくなりますね」
「未来では暑いと人間は海に出かけんのか?」
この時代で海に潜るのは猟師や海女ばかりだ。それが数百年後には庶民も海に出かけ、涼むのだという。
"浮き輪"という物に空気を吹き込み、それを被って海に浮かぶ。小さな子どもは砂浜で城や山を作り、他にも日光浴やスイカ割りをして過ごすのだという。
話を聞いただけではよくわからないが、海は夏の楽しみの一つとして親しまれているようだった。
「なあ、もっとキリカの時代のことやキリカのこと、聞かせてくれよ」
「はい。…私もこの時代やゴエモンさんたちのこと、もっと知りたいです」
「ああ、いいぜ」
時代が変われば衣食住も変わる。キリカにとって当たり前の事がこの時代の人間には奇妙なことで、ゴエモンにとって当たり前の事が未来に通用しない物もある。物事の違いにただただ感心し、驚くばかり。
いつしか話の流れは身の回りの事柄へと移り、先日エビス丸が大食い大会に出場した話に笑いあっていた。
笑顔が絶えない中、風が風鈴を鳴らす。体の横に置いた手が不意にキリカの手と触れた。
途端に話は途切れ、互いに目を丸くする。反射的に一度手を退けたが、改めてその手を握る。
熱を帯びた頬が赤く染まっていく。掴まれた手をどうしたらよいものか、それ以前にゴエモンの真剣な眼差しから目を逸らす事が出来ずにいた。
ちりん、ちりんと風鈴の短い音色が響く。
「キリカ。…あのよ、言いたいことが、あるんだ」
「なんですか…?」
「…おめえのことが」
残りの言葉を形にするべく、口を開く。だが、それは声にはならず異様な鳴り方をした風鈴に遮られた。
玄関先を見れば激しく揺れている風鈴。その下にサスケが立っていた。風鈴は強風に煽られたようにまだ揺れている。
慌てて二人は距離を置き、何も無かったかのように振舞った。幸い、サスケは何があったのかは気づいていないようであった。
「お、お帰りなさいサスケさん」
「随分早かったじゃねえか」
「ただいまでござる。早いと言っても二日は留守にしていたでござるが」
ヤエから言伝を預かったサスケは故郷へ帰っていた。
背負っていた風呂敷包みを下ろし、土産を持ってきたと二人に渡す。竹の皮に包まれた菓子は羊羹らしい。
「ありがとうサスケさん」
「熱い緑茶に合うでござる。ああ、キリカ殿。じいさんから伝言があるでござる」
「なあに?」
「時代転送装置が直ったとのこと」
透明度が高い水色の風鈴が軒先に吊るされていた。静かに風に揺られ、ちりんちりんと高い音を立てる。
暑さを和らげてくれる音を耳で聞き、涼を感じる。その音を聞きつけた隣人が玄関から出てきた。
ゴエモンは軒先を見上げ、ちりんと鳴る風鈴に「良い音だな」と言った。
「さっき万屋で買ってきたんです。気分だけでも涼しくなると思って。ゴエモンさんの分も買ってきました」
「貰っちまっていいのか?」
「よろしかったらどうぞ。あまり高い物では無いですけど」
「ありがとよ」
値段は気にすることではないし、良い音を聞かせてくれればそれで良いものだ。
軒先に吊るされた風鈴がちりんと音を出した。気まぐれな風が二つの風鈴を揺らしていく。
屋内から風鈴を眺め、茶をたしなむ。涼しい風が時折吹き込み、キリカの長い髪を揺らしていた。
それを見ていたことに気づいたのか、キリカがゴエモンの方へ振り向く。刹那、どきりと心臓が跳ね上がる。
キリカは長い髪に触れて毛先を弄る。手から零れた髪がさらさらと肩に落ちていった。
「私、自分が居た時代では髪が短かったんですよ」
「そうだとしたら随分伸びたんじゃねえか?」
「ここに来た時、もうこの長さでした」
元の髪の長さを首の辺りに手を当てて示す。想像はつかないが、相当短かったことはわかった。
不思議なこともあるもんだと湯呑みを傾ける。サスケが買ってきたという緑茶は確かに美味い。
「長すぎてちょっと邪魔だったりするんですけどね」
「その髪型、似合ってると思うけどな。髪もきれいだしよ」
「そう、ですか…?じゃあ、伸ばそうかな」
耳に髪をかける仕草。優しい眼差しに、微笑み。
外の気温が上がったのだろうか、急に熱さを感じた。片手をひらひらと仰ぎ、温い風を肌に送っていた。
「私は海が見える町で育ったんです。季節関係なく、いつも立ち寄っていました。潮風の香りが好きだったから」
「へえ。ここも海は近いが流石に潮の香りまでは届いてこねえからなあ」
「こう暑いと海に行きたくなりますね」
「未来では暑いと人間は海に出かけんのか?」
この時代で海に潜るのは猟師や海女ばかりだ。それが数百年後には庶民も海に出かけ、涼むのだという。
"浮き輪"という物に空気を吹き込み、それを被って海に浮かぶ。小さな子どもは砂浜で城や山を作り、他にも日光浴やスイカ割りをして過ごすのだという。
話を聞いただけではよくわからないが、海は夏の楽しみの一つとして親しまれているようだった。
「なあ、もっとキリカの時代のことやキリカのこと、聞かせてくれよ」
「はい。…私もこの時代やゴエモンさんたちのこと、もっと知りたいです」
「ああ、いいぜ」
時代が変われば衣食住も変わる。キリカにとって当たり前の事がこの時代の人間には奇妙なことで、ゴエモンにとって当たり前の事が未来に通用しない物もある。物事の違いにただただ感心し、驚くばかり。
いつしか話の流れは身の回りの事柄へと移り、先日エビス丸が大食い大会に出場した話に笑いあっていた。
笑顔が絶えない中、風が風鈴を鳴らす。体の横に置いた手が不意にキリカの手と触れた。
途端に話は途切れ、互いに目を丸くする。反射的に一度手を退けたが、改めてその手を握る。
熱を帯びた頬が赤く染まっていく。掴まれた手をどうしたらよいものか、それ以前にゴエモンの真剣な眼差しから目を逸らす事が出来ずにいた。
ちりん、ちりんと風鈴の短い音色が響く。
「キリカ。…あのよ、言いたいことが、あるんだ」
「なんですか…?」
「…おめえのことが」
残りの言葉を形にするべく、口を開く。だが、それは声にはならず異様な鳴り方をした風鈴に遮られた。
玄関先を見れば激しく揺れている風鈴。その下にサスケが立っていた。風鈴は強風に煽られたようにまだ揺れている。
慌てて二人は距離を置き、何も無かったかのように振舞った。幸い、サスケは何があったのかは気づいていないようであった。
「お、お帰りなさいサスケさん」
「随分早かったじゃねえか」
「ただいまでござる。早いと言っても二日は留守にしていたでござるが」
ヤエから言伝を預かったサスケは故郷へ帰っていた。
背負っていた風呂敷包みを下ろし、土産を持ってきたと二人に渡す。竹の皮に包まれた菓子は羊羹らしい。
「ありがとうサスケさん」
「熱い緑茶に合うでござる。ああ、キリカ殿。じいさんから伝言があるでござる」
「なあに?」
「時代転送装置が直ったとのこと」