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3.元ヒーローの噂
相変わらずつれないチームメイトと司令の妹さんを見送ったあと、俺は上げていた手をおろした。
あの子も日系なんだろう。名前の響きや仕草からそんな感じがする。と、思ったけど司令も日系だったから当然か。でも、なんかこう、しっくりこねぇな。
それにしても意外だな。人と関わりたくなさそうなオーラ全開のレンが司令の頼みとはいえ、案内役引き受けるなんて。
「…よく見かけてたあの子、司令の妹さんだったんだな」
「HEY!HEY!ブラザー。独り言にしては随分大きいヨ。司令の妹さんがどうかした?」
「うわっ?!…び、びっくりした…ビリー、いつの間に。声に出しちまってたか、俺」
背後から声を掛けられ、思わず肩が跳ねてしまった。「そんなに驚くことないのに」と笑われてしまう。
イーストもどうやらパトロールから戻ってきたみたいで、これから報告書を纏めるところだと話してくれた。
「ブラザー的には司令の妹さんが気になっちゃってるワケ?」
「んー…そういうんじゃねぇけどさ。確かに、可愛くて素直そうだなぁとは思っ……いやいやそうじゃなくてだな。司令に妹がいたの初めて知ったし…それになんか真逆の性格っぽいし、見た目も」
そう声に出してようやく抱いていた違和感に気がついた。姉妹にしては似ていない。
そこに気がついたか、とゴーグルの奥の瞳が光った気がした。
上を示すサインを指で作ったお決まりのポーズ。ビリーの目線はフロアの案内板に向いていた。あの二人がまだそこで立ち止まっている。レンが左方向を示すと、そっちの方に歩いていった。
「そ〜だね。それはそうかもしれない。ホントの姉妹じゃないし」
「…なんだって?」
「司令の妹、葉月霧華さんは四年前にご両親を亡くしてるんだ。で、その時に我らの紅蓮司令が引き取ったてワケ。とお〜い親戚みたいダヨ。妹さんその時はまだ学生だったから、身を寄せたんだと思う。因みにガストと同い年だったり」
妙な違和感が確信に変わった瞬間だった。血縁でも兄弟姉妹ってのは似ないこともあるし、それを指摘するのは失礼だと思っていた。冗談混じりに言えたかもしれないけど、それもちょっとばかり言いにくい感じだったし。その理由がこれだったんだ。もし言ってたら、気まずい空気になってたかもしれないしな。
「…まじかよ。てっきり年上かと思ってたぜ。落ち着いてるし」
「大和撫子ってヤツ?着物が似合いそうだよネ」
「そうだな。俺が知ってる大和撫子とはまた違う感じ……あ、いや。司令って元ヒーローだよな。アキラと同じ系統の【サブスタンス】を扱う…リリー教官とも肩を並べたって」
友人である日本人の顔がパッと浮かんだけど、ビリーの目が光ったのを察知して慌てて話題を擦り替えた。
【HELIOS】入所式の後、司令室に集められた俺たちは第13期ヒーロー専任司令と顔を合せた。その時に軽い自己紹介みたいな感じで、司令が前線で戦うヒーローから指示を出す側に転身したという話を聞かされたんだ。
「ザッツライト!リリー教官とは先輩後輩でありながら良いタッグを組んでいたって話ダヨ。ブラザーも情報通じゃない♪」
「俺のは人伝に聞いたり、風の噂程度だけどな。……でも、なんでヒーロー辞めて司令に」
「おっと、ここからは特別料金を頂くヨ」
右手で金のマークを作って見せたビリーはニコニコと笑っている。どうやら話は上手く逸らせたみたいだ。とはいえ、ここぞと気になるところで商談に持ち込むのは流石としか言いようがない。こっちもここまで聞いておいて、疑問を解決できないのは腑に落ちないな。
「……商売上手だな、まったく。今度飯奢ってやるよ」
「Gotcha!ブラザーとは同期だし、今回はそれで手を打とうじゃないか。司令がヒーローから転身した理由は妹さんに関係あるみたいダヨ。あと、お互いにだいぶ気を遣ってるみたいダネ〜。仲は悪くないみたいだけど、司令は何かと理由をつけて妹さんをココに呼び出してるってサ」
「ああ…それで司令室の前ですれ違うことが多かったのか。…それにしても、いくら司令からとはいえ、あのレンが素直に言うこと聞くとはなあ」
「んー。それは…俺っちが思うには猫ちゃん繋がりカナ」
司令の妹さんはノースシティの公園で野良猫とよく遊んでいるらしい。レンが猫好きだって前にアキラから聞いたし、意気投合でもしたのか。あの時は本当に猫が好きじゃないだろってあの子たちに怒ってたけど。ということは、司令の妹さんは本物の猫好きってことか。
「さらにさらにお得情報もあるケド、ど~する?」
「あー…この辺でやめとくよ。これ以上は莫大な金額吹っ掛けられそうだしな」
「ザ~ンネン。欲しい情報があればいつでも依頼お待ちしてマース。あ、そ~だ。グレイもご飯に誘ってもいい?ルーキー同士、親睦も深めたいからネ」
他のチームのヤツらともゆっくり話がしたいと思ってたところだしな。その提案には俺も笑顔で返した。
「ああ、勿論いいぜ。人数は多い方が楽しいからな」
「あとあと、ボクちん的にはさっきの大和撫子の話も気になるし」
「うっ……その辺の詮索はしないでくれ、頼む」
話、上手く逸らせたと思ったんだけどな。喋っちまったら最後、どこに情報売られるかわからないぞ。気を引き締めていかねぇと。
飯に行くならレンのヤツも誘ってみるか。まぁ、返事は目に見えてるだろうけど。
相変わらずつれないチームメイトと司令の妹さんを見送ったあと、俺は上げていた手をおろした。
あの子も日系なんだろう。名前の響きや仕草からそんな感じがする。と、思ったけど司令も日系だったから当然か。でも、なんかこう、しっくりこねぇな。
それにしても意外だな。人と関わりたくなさそうなオーラ全開のレンが司令の頼みとはいえ、案内役引き受けるなんて。
「…よく見かけてたあの子、司令の妹さんだったんだな」
「HEY!HEY!ブラザー。独り言にしては随分大きいヨ。司令の妹さんがどうかした?」
「うわっ?!…び、びっくりした…ビリー、いつの間に。声に出しちまってたか、俺」
背後から声を掛けられ、思わず肩が跳ねてしまった。「そんなに驚くことないのに」と笑われてしまう。
イーストもどうやらパトロールから戻ってきたみたいで、これから報告書を纏めるところだと話してくれた。
「ブラザー的には司令の妹さんが気になっちゃってるワケ?」
「んー…そういうんじゃねぇけどさ。確かに、可愛くて素直そうだなぁとは思っ……いやいやそうじゃなくてだな。司令に妹がいたの初めて知ったし…それになんか真逆の性格っぽいし、見た目も」
そう声に出してようやく抱いていた違和感に気がついた。姉妹にしては似ていない。
そこに気がついたか、とゴーグルの奥の瞳が光った気がした。
上を示すサインを指で作ったお決まりのポーズ。ビリーの目線はフロアの案内板に向いていた。あの二人がまだそこで立ち止まっている。レンが左方向を示すと、そっちの方に歩いていった。
「そ〜だね。それはそうかもしれない。ホントの姉妹じゃないし」
「…なんだって?」
「司令の妹、葉月霧華さんは四年前にご両親を亡くしてるんだ。で、その時に我らの紅蓮司令が引き取ったてワケ。とお〜い親戚みたいダヨ。妹さんその時はまだ学生だったから、身を寄せたんだと思う。因みにガストと同い年だったり」
妙な違和感が確信に変わった瞬間だった。血縁でも兄弟姉妹ってのは似ないこともあるし、それを指摘するのは失礼だと思っていた。冗談混じりに言えたかもしれないけど、それもちょっとばかり言いにくい感じだったし。その理由がこれだったんだ。もし言ってたら、気まずい空気になってたかもしれないしな。
「…まじかよ。てっきり年上かと思ってたぜ。落ち着いてるし」
「大和撫子ってヤツ?着物が似合いそうだよネ」
「そうだな。俺が知ってる大和撫子とはまた違う感じ……あ、いや。司令って元ヒーローだよな。アキラと同じ系統の【サブスタンス】を扱う…リリー教官とも肩を並べたって」
友人である日本人の顔がパッと浮かんだけど、ビリーの目が光ったのを察知して慌てて話題を擦り替えた。
【HELIOS】入所式の後、司令室に集められた俺たちは第13期ヒーロー専任司令と顔を合せた。その時に軽い自己紹介みたいな感じで、司令が前線で戦うヒーローから指示を出す側に転身したという話を聞かされたんだ。
「ザッツライト!リリー教官とは先輩後輩でありながら良いタッグを組んでいたって話ダヨ。ブラザーも情報通じゃない♪」
「俺のは人伝に聞いたり、風の噂程度だけどな。……でも、なんでヒーロー辞めて司令に」
「おっと、ここからは特別料金を頂くヨ」
右手で金のマークを作って見せたビリーはニコニコと笑っている。どうやら話は上手く逸らせたみたいだ。とはいえ、ここぞと気になるところで商談に持ち込むのは流石としか言いようがない。こっちもここまで聞いておいて、疑問を解決できないのは腑に落ちないな。
「……商売上手だな、まったく。今度飯奢ってやるよ」
「Gotcha!ブラザーとは同期だし、今回はそれで手を打とうじゃないか。司令がヒーローから転身した理由は妹さんに関係あるみたいダヨ。あと、お互いにだいぶ気を遣ってるみたいダネ〜。仲は悪くないみたいだけど、司令は何かと理由をつけて妹さんをココに呼び出してるってサ」
「ああ…それで司令室の前ですれ違うことが多かったのか。…それにしても、いくら司令からとはいえ、あのレンが素直に言うこと聞くとはなあ」
「んー。それは…俺っちが思うには猫ちゃん繋がりカナ」
司令の妹さんはノースシティの公園で野良猫とよく遊んでいるらしい。レンが猫好きだって前にアキラから聞いたし、意気投合でもしたのか。あの時は本当に猫が好きじゃないだろってあの子たちに怒ってたけど。ということは、司令の妹さんは本物の猫好きってことか。
「さらにさらにお得情報もあるケド、ど~する?」
「あー…この辺でやめとくよ。これ以上は莫大な金額吹っ掛けられそうだしな」
「ザ~ンネン。欲しい情報があればいつでも依頼お待ちしてマース。あ、そ~だ。グレイもご飯に誘ってもいい?ルーキー同士、親睦も深めたいからネ」
他のチームのヤツらともゆっくり話がしたいと思ってたところだしな。その提案には俺も笑顔で返した。
「ああ、勿論いいぜ。人数は多い方が楽しいからな」
「あとあと、ボクちん的にはさっきの大和撫子の話も気になるし」
「うっ……その辺の詮索はしないでくれ、頼む」
話、上手く逸らせたと思ったんだけどな。喋っちまったら最後、どこに情報売られるかわからないぞ。気を引き締めていかねぇと。
飯に行くならレンのヤツも誘ってみるか。まぁ、返事は目に見えてるだろうけど。
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