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HAPPY BIRTHDAY 2022
昼間に浜辺で行われたBBQ。本日の主役であるガスト・アドラーはその余韻に浸りながら上機嫌な足取りである場所へ向かっていた。時刻は二十時を過ぎた。
レッドサウスストリートのいつもの場所。弟分たちに呼ばれていたガストが集会場の入り口で顔を出した瞬間、数多のクラッカーが軽やかに弾けた。飛び出した紙吹雪と細い紙テープを頭から被る彼の表情に笑みが宿る。
「ハッピーバースデー! ガストさん!」
主役の到着を笑顔で出迎える彼の弟分たち。その顔ぶれの中に、思いもよらない人物がいたのでガストは目を丸くした。
彼の恋人である穂香が彼らの中心にいる。
「BBQ楽しんできた?」
「なんで、なんで穂香がここにいるんだ!?」
まさか不良の溜まり場に彼女がいるとは思いもよらない。確かに彼らと面識はあるが、まさかである。穂香はそんなガストの驚きを他所にニコニコと笑っていた。
「ロイくんに声掛けられたの。一緒にガストの誕生日祝いませんかーって」
「ホントは穂香さんと二人きりがいいってのは分かってます。でも、俺たちもガストさんの誕生日をどうしても祝いたくて……!」
「いや、気持ちはありがてぇんだけど……ちょっとびっくりしちまった。まさか穂香がここにいるなんて思いもしないし」
「朝に連絡したきりだと思った? ガストの誕生日だもの、ちゃんと祝いたい気持ちが私にもあるわよ」
朝方に穂香は祝いのメッセージを送信していた。今年は昨年のように丸一日を貰うわけにはいかないと考えた穂香はガストの合間時間を狙っていた。昼間は同期やチームと一緒に過ごすことになったと知り、さてどうしようかと考えていた所にロイから声が掛かったのだ。
「俺たちはお時間取らせませんので! 少しでも穂香さんと過ごす時間を作らせていただきますっ!」
「いや、そこまで気ぃ使ってもらわなくても……この場を設けてくれただけで有り難いっつーか」
「では、先ずはこちらの席へどうぞ!」
テーブルの短辺にあたる端の席。このシチュエーションを聞いたことがある。そう思いながらもそこへ腰を下ろす。
「お誕生日特別席です! 今から順番に俺たちがガストさんの所に行きますんで、ガストさんはその場でどーんと構えててください!」
「どーんって……」
「じゃあ一番手は俺から! ガストさん、お誕生日おめでとうございます!」
それぞれプレゼントを抱えた彼の弟分たちが順番にガストの元を訪れる。皆、笑顔で会話を弾ませていた。
腕に抱えきれないほどのプレゼントの山。最後に穂香がガストの隣にやってきた。
「ガスト、誕生日おめでとう。先に預かってるプレゼント渡すわね」
「預かってるもの?」
小さな紙袋から取り出したのはハンカチの包み。それを受け取ったガストは畳まれたハンカチをそっと開いた。
中から出てきたのは様々な木の実。赤く熟れた小さな実や艶のある紫色の果実。見た目は美味しそうな木の実だ。
「チヨスケくんから」
「……マジかよ!」
「ええ。イーストでロイくんと待ち合わせしてた時にね」
近くの樹木に止まる一羽のメジロを見つけたと穂香は話し始めた。チヨスケは穂香を認識すると、ぱたぱたと彼女の手に降りてきたという。咥えていた木の実を手の平に置き、何かを訴えるように鳴いた。
「ガストの姿がどこを探しても見当たらないって言いたげだったわ」
「マジかよ……なんか悪いことしちまった気分だ」
「多分、誕生日プレゼントじゃないかしら。次々に運んできたから。それで私が預かってきたのよ」
「そっか。じゃあ、今度見かけた時はお礼にみかんのジュースご馳走してやらないとな」
小さなファンからの贈り物を受け取ったガストはチヨスケの姿を思い浮かべ、微笑ましい表情を見せる。
「私からのプレゼントは前に欲しがってたやつにしたわ」
「サンキュー。まさか、こんな形で穂香から祝われるとは思ってなかったぜ。朝に連絡貰ってたし」
「私があれだけで済ませると思ってる? BBQに行ってくるて聞いたときはどうしようかなって思ったけど、ちょうどそこでロイくんに会ったの。で、お互い話した結果一緒にここでお祝いするのがいいんじゃないかって」
「なるほどな。俺もびっくりしたんだ。まさかチームのみんなと同期が浜辺のBBQ会場を借りて祝ってくれるなんてさ。夢なんじゃないかって思ったぐらいだ。二年前じゃ考えられないぜ」
ガストの表情は実に嬉しそうなものだった。
「その様子だと、楽しめたみたいね。良かったわ」
「おぅ。写真も沢山撮ったんだ。……お、あった。砂で猫を作ってたレンの横でマリオンもジャクリーンの像を作り始めてさ。マリオンは流石ってぐらいに巧く作ってたんだけど、レンの作った猫が……」
にこにことそれはもう楽しそうに昼間の様子を話す。お喋りが止まらない。それ程までに良い誕生日を過ごせたようだ。本当に良かった。職場での関係が上手くいかなければ、例えお人好しでも時が経てば流石に堪えてくるというものだから。
ニューミリオンでは様々な問題が起きている。だが、そこで活躍するヒーローたちを、ガストをこれからも側で応援していきたい。心からそう思う穂香であった。
昼間に浜辺で行われたBBQ。本日の主役であるガスト・アドラーはその余韻に浸りながら上機嫌な足取りである場所へ向かっていた。時刻は二十時を過ぎた。
レッドサウスストリートのいつもの場所。弟分たちに呼ばれていたガストが集会場の入り口で顔を出した瞬間、数多のクラッカーが軽やかに弾けた。飛び出した紙吹雪と細い紙テープを頭から被る彼の表情に笑みが宿る。
「ハッピーバースデー! ガストさん!」
主役の到着を笑顔で出迎える彼の弟分たち。その顔ぶれの中に、思いもよらない人物がいたのでガストは目を丸くした。
彼の恋人である穂香が彼らの中心にいる。
「BBQ楽しんできた?」
「なんで、なんで穂香がここにいるんだ!?」
まさか不良の溜まり場に彼女がいるとは思いもよらない。確かに彼らと面識はあるが、まさかである。穂香はそんなガストの驚きを他所にニコニコと笑っていた。
「ロイくんに声掛けられたの。一緒にガストの誕生日祝いませんかーって」
「ホントは穂香さんと二人きりがいいってのは分かってます。でも、俺たちもガストさんの誕生日をどうしても祝いたくて……!」
「いや、気持ちはありがてぇんだけど……ちょっとびっくりしちまった。まさか穂香がここにいるなんて思いもしないし」
「朝に連絡したきりだと思った? ガストの誕生日だもの、ちゃんと祝いたい気持ちが私にもあるわよ」
朝方に穂香は祝いのメッセージを送信していた。今年は昨年のように丸一日を貰うわけにはいかないと考えた穂香はガストの合間時間を狙っていた。昼間は同期やチームと一緒に過ごすことになったと知り、さてどうしようかと考えていた所にロイから声が掛かったのだ。
「俺たちはお時間取らせませんので! 少しでも穂香さんと過ごす時間を作らせていただきますっ!」
「いや、そこまで気ぃ使ってもらわなくても……この場を設けてくれただけで有り難いっつーか」
「では、先ずはこちらの席へどうぞ!」
テーブルの短辺にあたる端の席。このシチュエーションを聞いたことがある。そう思いながらもそこへ腰を下ろす。
「お誕生日特別席です! 今から順番に俺たちがガストさんの所に行きますんで、ガストさんはその場でどーんと構えててください!」
「どーんって……」
「じゃあ一番手は俺から! ガストさん、お誕生日おめでとうございます!」
それぞれプレゼントを抱えた彼の弟分たちが順番にガストの元を訪れる。皆、笑顔で会話を弾ませていた。
腕に抱えきれないほどのプレゼントの山。最後に穂香がガストの隣にやってきた。
「ガスト、誕生日おめでとう。先に預かってるプレゼント渡すわね」
「預かってるもの?」
小さな紙袋から取り出したのはハンカチの包み。それを受け取ったガストは畳まれたハンカチをそっと開いた。
中から出てきたのは様々な木の実。赤く熟れた小さな実や艶のある紫色の果実。見た目は美味しそうな木の実だ。
「チヨスケくんから」
「……マジかよ!」
「ええ。イーストでロイくんと待ち合わせしてた時にね」
近くの樹木に止まる一羽のメジロを見つけたと穂香は話し始めた。チヨスケは穂香を認識すると、ぱたぱたと彼女の手に降りてきたという。咥えていた木の実を手の平に置き、何かを訴えるように鳴いた。
「ガストの姿がどこを探しても見当たらないって言いたげだったわ」
「マジかよ……なんか悪いことしちまった気分だ」
「多分、誕生日プレゼントじゃないかしら。次々に運んできたから。それで私が預かってきたのよ」
「そっか。じゃあ、今度見かけた時はお礼にみかんのジュースご馳走してやらないとな」
小さなファンからの贈り物を受け取ったガストはチヨスケの姿を思い浮かべ、微笑ましい表情を見せる。
「私からのプレゼントは前に欲しがってたやつにしたわ」
「サンキュー。まさか、こんな形で穂香から祝われるとは思ってなかったぜ。朝に連絡貰ってたし」
「私があれだけで済ませると思ってる? BBQに行ってくるて聞いたときはどうしようかなって思ったけど、ちょうどそこでロイくんに会ったの。で、お互い話した結果一緒にここでお祝いするのがいいんじゃないかって」
「なるほどな。俺もびっくりしたんだ。まさかチームのみんなと同期が浜辺のBBQ会場を借りて祝ってくれるなんてさ。夢なんじゃないかって思ったぐらいだ。二年前じゃ考えられないぜ」
ガストの表情は実に嬉しそうなものだった。
「その様子だと、楽しめたみたいね。良かったわ」
「おぅ。写真も沢山撮ったんだ。……お、あった。砂で猫を作ってたレンの横でマリオンもジャクリーンの像を作り始めてさ。マリオンは流石ってぐらいに巧く作ってたんだけど、レンの作った猫が……」
にこにことそれはもう楽しそうに昼間の様子を話す。お喋りが止まらない。それ程までに良い誕生日を過ごせたようだ。本当に良かった。職場での関係が上手くいかなければ、例えお人好しでも時が経てば流石に堪えてくるというものだから。
ニューミリオンでは様々な問題が起きている。だが、そこで活躍するヒーローたちを、ガストをこれからも側で応援していきたい。心からそう思う穂香であった。