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3.夕方のコーヒーブレイク
黒霧。ヴィラン連合の死柄木一味の一員。そいつの個性はワープゲート。空間の移動を可能とする。
せやからその類いの個性の持ち主かと思っとった。もしくは、ヴィラン連合に何らかの理由で送り込まれたか。最初はそう、思っとった。
せやけど、話を聞いてるとどうもそんな感じとちゃう。
本人が言うには個性もヒーローも存在しない世界で生きてきたと。こっちとしてはそんな世界があるんかと驚きもした。国や地名は同じ、生活様式も然程変わらん。ただ、個性を持つ人間が存在していない。それだけといえばそれだけやが、こっちにしてみりゃかなりデカイ問題や。想像してみい。自分がこの個性を活かして生きとんのに、それが無い世界ではどう生きとんのか。俺には全く想像できへんわ。
まあ、嘘を付いているような娘には思えんかった。自信無さそうに俯きながら喋るんはどっか環に似とるし。
「あの、有り難うございます。…部屋まで用意していただいて」
一先ず保護っちゅう名目で事務所に身を置くことにしてもろうた。この世界の事をなんも知らん一般市民を外に住まわせるんは危険だと考えた。そりゃ無個性の人間は居るには居る。せやけど彼等にとって当たり前の日常があの娘にとっては非日常。下手したら恐怖に身がすくんで動けなくなるんちゃうかと。外出を禁止するつもりは無いが、一人で出歩かせんのは危険や。暫くは誰かを付き添わせるんが最良やろ。
この娘の寝泊まりする部屋を用意する為に、物置変わりの部屋を急遽三人で片付けた。インターンで来てくれとる切島くんが特に張り切って荷物を運び出しとってくれたかろ助かったわ。
粗方部屋が整ったところでコーヒータイムと声をかけた。
ソファの隅に座る姿は只でさえ細いのが余計に小さく見えた。完全に借りてきた猫状態やな。はよう緊張解してやらんとな。ここでの生活がいつまで続くか分からんし。
「気にせんでええよ。それよか狭い部屋ですまんなぁ。窓開けて換気はしたさかい。埃っぽさは無くなると思うんやけど。必要なもんの買い出しは明日にしよや。疲れとるやろうし。最低限のもんは今環と切島くんが買いに行っとる」
「お気遣いすみません。その、ヒーローのお仕事もあるのに…お時間とらせてしまって」
「なんや謝ってばかりやなぁ」
責めたつもりはない。軽い冗談のつもりで言ったのが真に受けたのか、また言葉を詰まらせ俯いてしまった。謝るのが癖になっとるみたいなもんやろか。
「ほんまに気にせんでええんや。…俺ら三人とも君を助けたいと思ってんねん。せやから頼ってくれてええねん。俺も環も切島くんも君のこと嘘つきとは思ってへん」
黒い目に光がきらりと見えた気がした。そのすぐ後に深く俯いたので、敢えて触れずにおく。見知らぬ土地に急に放り出されて、不安にならない人間なんておらへんわな。
「ありがとうございます」
蚊の鳴くような細い声がテーブルを挟んだ向かい側から聞こえた。
黒霧。ヴィラン連合の死柄木一味の一員。そいつの個性はワープゲート。空間の移動を可能とする。
せやからその類いの個性の持ち主かと思っとった。もしくは、ヴィラン連合に何らかの理由で送り込まれたか。最初はそう、思っとった。
せやけど、話を聞いてるとどうもそんな感じとちゃう。
本人が言うには個性もヒーローも存在しない世界で生きてきたと。こっちとしてはそんな世界があるんかと驚きもした。国や地名は同じ、生活様式も然程変わらん。ただ、個性を持つ人間が存在していない。それだけといえばそれだけやが、こっちにしてみりゃかなりデカイ問題や。想像してみい。自分がこの個性を活かして生きとんのに、それが無い世界ではどう生きとんのか。俺には全く想像できへんわ。
まあ、嘘を付いているような娘には思えんかった。自信無さそうに俯きながら喋るんはどっか環に似とるし。
「あの、有り難うございます。…部屋まで用意していただいて」
一先ず保護っちゅう名目で事務所に身を置くことにしてもろうた。この世界の事をなんも知らん一般市民を外に住まわせるんは危険だと考えた。そりゃ無個性の人間は居るには居る。せやけど彼等にとって当たり前の日常があの娘にとっては非日常。下手したら恐怖に身がすくんで動けなくなるんちゃうかと。外出を禁止するつもりは無いが、一人で出歩かせんのは危険や。暫くは誰かを付き添わせるんが最良やろ。
この娘の寝泊まりする部屋を用意する為に、物置変わりの部屋を急遽三人で片付けた。インターンで来てくれとる切島くんが特に張り切って荷物を運び出しとってくれたかろ助かったわ。
粗方部屋が整ったところでコーヒータイムと声をかけた。
ソファの隅に座る姿は只でさえ細いのが余計に小さく見えた。完全に借りてきた猫状態やな。はよう緊張解してやらんとな。ここでの生活がいつまで続くか分からんし。
「気にせんでええよ。それよか狭い部屋ですまんなぁ。窓開けて換気はしたさかい。埃っぽさは無くなると思うんやけど。必要なもんの買い出しは明日にしよや。疲れとるやろうし。最低限のもんは今環と切島くんが買いに行っとる」
「お気遣いすみません。その、ヒーローのお仕事もあるのに…お時間とらせてしまって」
「なんや謝ってばかりやなぁ」
責めたつもりはない。軽い冗談のつもりで言ったのが真に受けたのか、また言葉を詰まらせ俯いてしまった。謝るのが癖になっとるみたいなもんやろか。
「ほんまに気にせんでええんや。…俺ら三人とも君を助けたいと思ってんねん。せやから頼ってくれてええねん。俺も環も切島くんも君のこと嘘つきとは思ってへん」
黒い目に光がきらりと見えた気がした。そのすぐ後に深く俯いたので、敢えて触れずにおく。見知らぬ土地に急に放り出されて、不安にならない人間なんておらへんわな。
「ありがとうございます」
蚊の鳴くような細い声がテーブルを挟んだ向かい側から聞こえた。