RS Re;univerSe舞台
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君の居た世界
漆黒の空で無数の星が瞬く。宝石を散りばめたようで美しいと彼女は話していた。満天の星空を眺める機会などそうは無いと。ランスで見上げた夜空が一番だ。白く曇った吐息は束の間のうちに消えてしまった。
宿命の子がアビスに囚われた。その子を連れ戻しに行く英雄の一行と再び合間見えたのはリブロフに立ち寄っていた時のこと。
五つ目のアビスゲートが遥か東の地にあると星読みが謳い、見捨てられた大地を越えた。
よもや東の国まで足を伸ばすことになるとは思いもしまい。過去の己が口にした通り、彼女を連れてくることは叶わなかった。軽い散歩程度で戻ってこられるだろうと話していた時間が既に懐かしく思えてくる。
ムング族の集落地に宿を借り、明日の作戦に備えるべく各々休息をとっている。
横になったはいいが、小一時間程で覚醒してしまい眠りにつけずにいた。
「いい天気だな。星がよく見える」
己意外にも夜を迎え入れられずにいた者がいたようだ。背を当てていた樹木の幹に寄りかかったまま、首を声のした方へと向ける。
星灯りがあるといえ、薄暗いために顔までは認識できない。だが、落ち着いた声の調子や長いマントを羽織っているところからトーマス・ベントに違いない。
寝静まった頃を見計らいテントを出てきたが、どうやらこの男は明日の作戦に杞憂があるのだろう。己とはまた違う理由で。
「眠れなくてね」という言葉と共に肩を竦める仕草。
「明日の決戦を控えている。熟睡できる者などいるはずもない」
「貴方の言うとおりだ。みんなピリピリしているよ。特にエレンは」
「仕方あるまい。実の妹が囚われているのだろう?…とはいえ、少しは気を鎮めた方がいい。感情を抑えなければ己を滅ぼしかねん」
己自信にとってかけがえのない存在。それを奪われたとなれば、感情を乱すのも無理はない話。だが、過剰に反応しては足元さえ掬われることになる。
「ボルカノ。同行してくれて本当に助かっているよ。…貴方のような冷静な判断ができる人間がいなければ、みんな動揺を抑えられずにいただろう」
「貴殿はそのような判断ができる人間だと見受けていたが…?」
開拓者のリーダー的存在であり、武術、料理、何事もそつなくこなす。商業の才能も持ち合わせている。聞き齧った情報とこの短い旅路で感じ取ったものだ。だが、その男は小さく首を横へ振り、溜め息を漏らした。
「サラはオレたちにとって家族同然の存在なんだ。正直気が気じゃない。…サラは必ずオレ達が助け出す」
その言葉からは絶対的な意志が見てとれる。
宿命の子。聖王、魔王を凌ぐ神王の誕生だと崇められていた今世。それは救いを求める大衆の戯言。当事者及び親しい者にとってそんなことは正直どうでもいい。
『サラは私の妹。ただそれだけよ』
ただそれだけの理由でアビスにまで赴く。宿命の子としてではなく、家族友人として迎えに行くのだと彼らは話していた。
「…明日の陽動作戦、必ず成功するとは限らん。早くに感付かれれば城内での戦闘は避けられん」
「ああ。みんなにもその点は伝えてある。貴方の様に素晴らしい朱鳥術士がいるんだ。戦闘になったとしても善戦になるだろう」
「過信は災いを招く。くれぐれも気を抜かないことだ」
「そうするよ」
なぜ自分はアビスへと向かうのか。彼らの旅路に同行したのか。そう問われたとして、その理由は彼等とは異なるもの。
ただ、霧華が存在していたという証であるこの世界を失わせさせたくない。オレにとってはただそれだけのことだ。
胸元に提げた水晶の欠片を衣服の上から触れ、包み込んだ。
◆◆◆
すべてを破壊するものがその姿を変えていく。
漆黒の両翼がゆっくりと広がると、周囲一帯が禍々しい空気に覆われてしまった。途端、目眩に似た感覚に槍の柄を握りしめた。先程までとは違う、この身体を蝕む感覚。力が奪われているようだった。この決戦に挑む仲間達の体力も限界にまで来ていた。
「…負けるかっ!」ユリアンの咆哮に星屑を纏う剣が応える様に輝きを放つ。
アビスの闇に蝕まれ、一瞬でも飲まれそうになった己を叱っする。そうだ、負けられない。何のために此処まで来たと思っているんだ。オレ達の仲間を、サラを助ける為に来たんじゃないか。ここで倒れるわけには、いかない。宿命に弄ばれている彼女と少年をオレ達で救いだすんだ。
「……ダメ。私達では抑えきれない!」
サラの悲痛な叫び声が一帯に響き渡った。その直後、エレンの「トーマス!」と呼ぶ声。頭上へと降り注ぐ炎塊がこちらを目掛けていた。避けるには間に合わない。衝撃を覚悟に両腕を交差させ待ち構えるも、眼前に突如として現れた炎の壁によってそれは打ち消された。先にボルカノが発動させていた朱鳥術に難を救われたようだ。
彼は額から流れ出る血を手の甲で拭い、新たな術の詠唱を始める。すると、順にオレ達の身体が緋色の光に包まれていった。温かい。力が、少しずつ戻って来るような感覚。
度々オレ達の知らない術を彼は扱っている。術の研究者であるのだから、知らないのも当然だと軽くあしらわれることもあった。それに今救われている。
その生命の炎はサラと少年の二人の元にも届いていたようだ。涙を流し俯いていた彼女の顔が、上を向く。そこでボルカノの声が響いた。
「諦めるな!世界の再生は宿命の子であるお前らにしか出来ぬ事だ!ここで世界を破壊させるだけで終わらせるんじゃない!オレ達に護りたいものがあると同様に、お前達にも護りたいものがあるのならばそれを信じ、力へと変えろ!」
この短い時間で詠唱を終えた彼が手を翳すと無数の光の柱が出現し、すべてを破壊するものを包囲する。相手の動きが鈍ったのを好機にエレンが高く跳び上がり、斧を投げ込んだ。旋回して戻って来た斧の柄を握りしめ、サラへ強く呼びかける。
「サラ。貴女を必ず連れて帰るわ!絶対に私は諦めないっ!」
「……お姉ちゃん、私……一緒に、一緒に帰りたい」
目を瞑るサラと少年は各々両手を組み合わせ、強く念じ始める。光の柱の呪縛が解かれた後もすべてを破壊するものは動きを鈍らせていた。勝機はまだ、失われていない。
「……闇を畏れるのならば、オレが地相を変える。光を導け、宿命の子よ!」
炎を纏う巨大な鳥が嘶いた。
coment:
RS3リマスターおめでとうございます!
だが、ボルカノは仲間にならなかった…。悔しさをバネに断片として一行withボルカノにしてみました。かっこいいボルカノさんが書きたかった。
ちなみにアビスの地相は朱鳥では変わらない。天術で変わる。
漆黒の空で無数の星が瞬く。宝石を散りばめたようで美しいと彼女は話していた。満天の星空を眺める機会などそうは無いと。ランスで見上げた夜空が一番だ。白く曇った吐息は束の間のうちに消えてしまった。
宿命の子がアビスに囚われた。その子を連れ戻しに行く英雄の一行と再び合間見えたのはリブロフに立ち寄っていた時のこと。
五つ目のアビスゲートが遥か東の地にあると星読みが謳い、見捨てられた大地を越えた。
よもや東の国まで足を伸ばすことになるとは思いもしまい。過去の己が口にした通り、彼女を連れてくることは叶わなかった。軽い散歩程度で戻ってこられるだろうと話していた時間が既に懐かしく思えてくる。
ムング族の集落地に宿を借り、明日の作戦に備えるべく各々休息をとっている。
横になったはいいが、小一時間程で覚醒してしまい眠りにつけずにいた。
「いい天気だな。星がよく見える」
己意外にも夜を迎え入れられずにいた者がいたようだ。背を当てていた樹木の幹に寄りかかったまま、首を声のした方へと向ける。
星灯りがあるといえ、薄暗いために顔までは認識できない。だが、落ち着いた声の調子や長いマントを羽織っているところからトーマス・ベントに違いない。
寝静まった頃を見計らいテントを出てきたが、どうやらこの男は明日の作戦に杞憂があるのだろう。己とはまた違う理由で。
「眠れなくてね」という言葉と共に肩を竦める仕草。
「明日の決戦を控えている。熟睡できる者などいるはずもない」
「貴方の言うとおりだ。みんなピリピリしているよ。特にエレンは」
「仕方あるまい。実の妹が囚われているのだろう?…とはいえ、少しは気を鎮めた方がいい。感情を抑えなければ己を滅ぼしかねん」
己自信にとってかけがえのない存在。それを奪われたとなれば、感情を乱すのも無理はない話。だが、過剰に反応しては足元さえ掬われることになる。
「ボルカノ。同行してくれて本当に助かっているよ。…貴方のような冷静な判断ができる人間がいなければ、みんな動揺を抑えられずにいただろう」
「貴殿はそのような判断ができる人間だと見受けていたが…?」
開拓者のリーダー的存在であり、武術、料理、何事もそつなくこなす。商業の才能も持ち合わせている。聞き齧った情報とこの短い旅路で感じ取ったものだ。だが、その男は小さく首を横へ振り、溜め息を漏らした。
「サラはオレたちにとって家族同然の存在なんだ。正直気が気じゃない。…サラは必ずオレ達が助け出す」
その言葉からは絶対的な意志が見てとれる。
宿命の子。聖王、魔王を凌ぐ神王の誕生だと崇められていた今世。それは救いを求める大衆の戯言。当事者及び親しい者にとってそんなことは正直どうでもいい。
『サラは私の妹。ただそれだけよ』
ただそれだけの理由でアビスにまで赴く。宿命の子としてではなく、家族友人として迎えに行くのだと彼らは話していた。
「…明日の陽動作戦、必ず成功するとは限らん。早くに感付かれれば城内での戦闘は避けられん」
「ああ。みんなにもその点は伝えてある。貴方の様に素晴らしい朱鳥術士がいるんだ。戦闘になったとしても善戦になるだろう」
「過信は災いを招く。くれぐれも気を抜かないことだ」
「そうするよ」
なぜ自分はアビスへと向かうのか。彼らの旅路に同行したのか。そう問われたとして、その理由は彼等とは異なるもの。
ただ、霧華が存在していたという証であるこの世界を失わせさせたくない。オレにとってはただそれだけのことだ。
胸元に提げた水晶の欠片を衣服の上から触れ、包み込んだ。
◆◆◆
すべてを破壊するものがその姿を変えていく。
漆黒の両翼がゆっくりと広がると、周囲一帯が禍々しい空気に覆われてしまった。途端、目眩に似た感覚に槍の柄を握りしめた。先程までとは違う、この身体を蝕む感覚。力が奪われているようだった。この決戦に挑む仲間達の体力も限界にまで来ていた。
「…負けるかっ!」ユリアンの咆哮に星屑を纏う剣が応える様に輝きを放つ。
アビスの闇に蝕まれ、一瞬でも飲まれそうになった己を叱っする。そうだ、負けられない。何のために此処まで来たと思っているんだ。オレ達の仲間を、サラを助ける為に来たんじゃないか。ここで倒れるわけには、いかない。宿命に弄ばれている彼女と少年をオレ達で救いだすんだ。
「……ダメ。私達では抑えきれない!」
サラの悲痛な叫び声が一帯に響き渡った。その直後、エレンの「トーマス!」と呼ぶ声。頭上へと降り注ぐ炎塊がこちらを目掛けていた。避けるには間に合わない。衝撃を覚悟に両腕を交差させ待ち構えるも、眼前に突如として現れた炎の壁によってそれは打ち消された。先にボルカノが発動させていた朱鳥術に難を救われたようだ。
彼は額から流れ出る血を手の甲で拭い、新たな術の詠唱を始める。すると、順にオレ達の身体が緋色の光に包まれていった。温かい。力が、少しずつ戻って来るような感覚。
度々オレ達の知らない術を彼は扱っている。術の研究者であるのだから、知らないのも当然だと軽くあしらわれることもあった。それに今救われている。
その生命の炎はサラと少年の二人の元にも届いていたようだ。涙を流し俯いていた彼女の顔が、上を向く。そこでボルカノの声が響いた。
「諦めるな!世界の再生は宿命の子であるお前らにしか出来ぬ事だ!ここで世界を破壊させるだけで終わらせるんじゃない!オレ達に護りたいものがあると同様に、お前達にも護りたいものがあるのならばそれを信じ、力へと変えろ!」
この短い時間で詠唱を終えた彼が手を翳すと無数の光の柱が出現し、すべてを破壊するものを包囲する。相手の動きが鈍ったのを好機にエレンが高く跳び上がり、斧を投げ込んだ。旋回して戻って来た斧の柄を握りしめ、サラへ強く呼びかける。
「サラ。貴女を必ず連れて帰るわ!絶対に私は諦めないっ!」
「……お姉ちゃん、私……一緒に、一緒に帰りたい」
目を瞑るサラと少年は各々両手を組み合わせ、強く念じ始める。光の柱の呪縛が解かれた後もすべてを破壊するものは動きを鈍らせていた。勝機はまだ、失われていない。
「……闇を畏れるのならば、オレが地相を変える。光を導け、宿命の子よ!」
炎を纏う巨大な鳥が嘶いた。
coment:
RS3リマスターおめでとうございます!
だが、ボルカノは仲間にならなかった…。悔しさをバネに断片として一行withボルカノにしてみました。かっこいいボルカノさんが書きたかった。
ちなみにアビスの地相は朱鳥では変わらない。天術で変わる。
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