RS Re;univerSe舞台
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クリスマスを共に
「つまり精霊の力を借りるということは、意思の疎通を計ることだ。分かったな」
「ぴゃあ!」
小さなペンギンは左右の翼を二度はためかせ、鳴いた。
このペンギンに物を教えるのは意外と労を費やさない。人の言葉を理解するようで、朱鳥術の教えを説けばあっさりと修得した。基本の術を始めとして熟練を必要とするファイアウォールもを物にしたのだ。ただの小型の鳥と侮ることなかれ。危害を加えようものなら猛火を奮う。
とはいえ、普段はただのペンギン。霧華は何かあれば可愛い可愛いとこのペンギンを愛でている。愛玩の対象だ。
「ぴ!」
ノックの音が聞こえたかと思えば、小さな顔を玄関の方角に向け、素早く駆けていく。その後に歩いて玄関へ向かうと、ちょうど霧華が体を屈めてペンギンの頭を撫でている所であった。
「ぺんちゃん。いい子にしてたかなー」
「ぴい! ぴーいぴーい!」
なんとも嬉しそうに鳴いている。彼女に懐いているせいか、雛が甘える様な鳴き声をよく出す。
今日は特に甘えている様に聞こえた。その原因は彼女が持っているバケツにあるようだ。鉛色のバケツにクリスマスらしい赤や緑の飾りがくくりつけられ、バケツの中にイワシが十尾程刺さっている。
「ぴゃあーぴゃあぴゃあー!」
「よしよし。ぺんちゃんはいい子だから私からクリスマスプレゼントだよー。はい、どうぞ」
霧華はイワシの尾を掴み上げ、ペンギンの嘴へ近づける。そのイワシの頭に喰いつき、一息で丸呑みにした。魚の尾が完全に見えなくなると、次のイワシを催促するように鳴く。またイワシの尾を掴むと、今度は自ら顔を近づけてイワシを丸呑みにする。余程腹を空かせているのか、物凄い勢いで次々と丸呑みにしていく。あの小さな体のどこに収まっているのか。
バケツの中に刺さっていたイワシを殆ど平らげた後、満足げに首を伸ばし翼を動かした。
「お腹がもういっぱいかな」
「ぴいー」
「満足そうだな」
オレがそう声を掛けると、首を後方に捻り、翼の付け根を器用に嘴で羽繕いを始めた。
イワシの残りが入ったバケツを霧華から預り、暖かいリビングへ招き入れる。
彼女は「寒かったあ」と手を擦り合わせながら暖炉の前にしゃがみこんだ。彼女が来る時間に合わせ暖炉の火力を調整済みだ。凍えるようなこともないだろう。都合の良いことにこのペンギンは暑さに強いようで余計な気を払わなくて済む。
玄関から爪を打ち鳴らす音を立てながら件のペンギンが歩いてきた。霧華の横に立ち、羽繕いの続きを始める。大概うろうろしていることが多いが、霧華が居ればその傍に居ようとする。
「この子は本当に君によく懐いているな」
「仲良しですよー。ボルカノさんにだって懐いてるじゃないですか。朱鳥術教えられるぐらいなんだし」
「ぴぴー」
「頭脳が発達しているのか物分かりが良い。それに才能が秘められている」
「良かったねーぺんちゃん。褒められたよ」
羽繕いを終わらせたペンギンは胴体を小刻みに震わせ、翼をはためかせた。それからその場に体をうつ伏せに倒し、目を瞑る。その姿は暖炉の前で暖を取る猫の様だ。
「……ふふ。寝顔もカワイイなー。見てるとこっちも眠くなってきそう」
「君はいつもオレの家で居眠りしているだろ」
「う……だってボルカノさん家の暖炉あったかくて心地いいんですもん。それに一番安心できるし」
そう話しながら早速欠伸を一つ。
オレが灯した炎は温かい、他の術士が灯したものとは違うと話していたことがあった。彼女が安心して寛げる場所を用意することが出来るのは自分だけだ。そう考えるのも悪くない。
「君が眠りに落ちる前にプレゼントを渡したいのだが」
「……あっ、私も。今回は力作なんですよ。工房を借りて本格的に一から作ったんです」
バッグから長方形の小さな箱を取り出し、それをオレに差し出す。その箱を持つ手指にまだ日の浅い火傷の痕が見られた。箱を受け取った際に彼女の手を包むように握る。
「それで火傷をしたのか。……痕が残ったらどうするんだ」
「大丈夫ですよこのぐらい」
「気を付けてくれ。……オレのせいで霧華が傷ついた姿を見たくない」
「もう、大袈裟ですよ。ボルカノさんこそ無茶しないでくださいね。それこそ心配なんですから」
「ああ。……二度と君を一人にするような真似はしない」
持ち上げた指先にそっと唇を寄せた。
「つまり精霊の力を借りるということは、意思の疎通を計ることだ。分かったな」
「ぴゃあ!」
小さなペンギンは左右の翼を二度はためかせ、鳴いた。
このペンギンに物を教えるのは意外と労を費やさない。人の言葉を理解するようで、朱鳥術の教えを説けばあっさりと修得した。基本の術を始めとして熟練を必要とするファイアウォールもを物にしたのだ。ただの小型の鳥と侮ることなかれ。危害を加えようものなら猛火を奮う。
とはいえ、普段はただのペンギン。霧華は何かあれば可愛い可愛いとこのペンギンを愛でている。愛玩の対象だ。
「ぴ!」
ノックの音が聞こえたかと思えば、小さな顔を玄関の方角に向け、素早く駆けていく。その後に歩いて玄関へ向かうと、ちょうど霧華が体を屈めてペンギンの頭を撫でている所であった。
「ぺんちゃん。いい子にしてたかなー」
「ぴい! ぴーいぴーい!」
なんとも嬉しそうに鳴いている。彼女に懐いているせいか、雛が甘える様な鳴き声をよく出す。
今日は特に甘えている様に聞こえた。その原因は彼女が持っているバケツにあるようだ。鉛色のバケツにクリスマスらしい赤や緑の飾りがくくりつけられ、バケツの中にイワシが十尾程刺さっている。
「ぴゃあーぴゃあぴゃあー!」
「よしよし。ぺんちゃんはいい子だから私からクリスマスプレゼントだよー。はい、どうぞ」
霧華はイワシの尾を掴み上げ、ペンギンの嘴へ近づける。そのイワシの頭に喰いつき、一息で丸呑みにした。魚の尾が完全に見えなくなると、次のイワシを催促するように鳴く。またイワシの尾を掴むと、今度は自ら顔を近づけてイワシを丸呑みにする。余程腹を空かせているのか、物凄い勢いで次々と丸呑みにしていく。あの小さな体のどこに収まっているのか。
バケツの中に刺さっていたイワシを殆ど平らげた後、満足げに首を伸ばし翼を動かした。
「お腹がもういっぱいかな」
「ぴいー」
「満足そうだな」
オレがそう声を掛けると、首を後方に捻り、翼の付け根を器用に嘴で羽繕いを始めた。
イワシの残りが入ったバケツを霧華から預り、暖かいリビングへ招き入れる。
彼女は「寒かったあ」と手を擦り合わせながら暖炉の前にしゃがみこんだ。彼女が来る時間に合わせ暖炉の火力を調整済みだ。凍えるようなこともないだろう。都合の良いことにこのペンギンは暑さに強いようで余計な気を払わなくて済む。
玄関から爪を打ち鳴らす音を立てながら件のペンギンが歩いてきた。霧華の横に立ち、羽繕いの続きを始める。大概うろうろしていることが多いが、霧華が居ればその傍に居ようとする。
「この子は本当に君によく懐いているな」
「仲良しですよー。ボルカノさんにだって懐いてるじゃないですか。朱鳥術教えられるぐらいなんだし」
「ぴぴー」
「頭脳が発達しているのか物分かりが良い。それに才能が秘められている」
「良かったねーぺんちゃん。褒められたよ」
羽繕いを終わらせたペンギンは胴体を小刻みに震わせ、翼をはためかせた。それからその場に体をうつ伏せに倒し、目を瞑る。その姿は暖炉の前で暖を取る猫の様だ。
「……ふふ。寝顔もカワイイなー。見てるとこっちも眠くなってきそう」
「君はいつもオレの家で居眠りしているだろ」
「う……だってボルカノさん家の暖炉あったかくて心地いいんですもん。それに一番安心できるし」
そう話しながら早速欠伸を一つ。
オレが灯した炎は温かい、他の術士が灯したものとは違うと話していたことがあった。彼女が安心して寛げる場所を用意することが出来るのは自分だけだ。そう考えるのも悪くない。
「君が眠りに落ちる前にプレゼントを渡したいのだが」
「……あっ、私も。今回は力作なんですよ。工房を借りて本格的に一から作ったんです」
バッグから長方形の小さな箱を取り出し、それをオレに差し出す。その箱を持つ手指にまだ日の浅い火傷の痕が見られた。箱を受け取った際に彼女の手を包むように握る。
「それで火傷をしたのか。……痕が残ったらどうするんだ」
「大丈夫ですよこのぐらい」
「気を付けてくれ。……オレのせいで霧華が傷ついた姿を見たくない」
「もう、大袈裟ですよ。ボルカノさんこそ無茶しないでくださいね。それこそ心配なんですから」
「ああ。……二度と君を一人にするような真似はしない」
持ち上げた指先にそっと唇を寄せた。