RS Re;univerSe舞台
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出逢い
「お・ま・た・せ。充電が終わったわよ」
一人の女性が研究室の奥から戻ってきた。ウェーブかかった長いピンク色の髪を揺らし、ブーツをカツカツと鳴らしながら歩く姿はモデルのようにも見える。
太さの違う配線が床中にまるで蛇のように這っていた。その全てが電流を送る基盤に繋がっている。
教授と呼ばれている女性は手の平に収まる四角い金属の端末を霧華に手渡した。
「ありがとうございます。……あ、電源入った」
受け取った端末の電源を入れ、慣れた手つきで液晶画面に触れる。その操作する様子を物珍しそうに覗き込んでいた教授と顔を上げた際に視線が合う。
「その携帯端末、電波が無いと使い物にならないんでしょう? 充電しても意味無いんじゃないかしら」
「通信はできませんけど、端末の中にあるアルバムに写真や音楽が記録されてるんです。それに目覚まし時計にも使うし」
そう言って白い背面の端末を持ち直す。
これは霧華がこの世界に召喚された時の持ち物の一つだ。前回は持ち込めずにいたが、今回は偶然にもこの端末、スマートフォンを持ち込むことができた。日常生活に欠かせない物ではあるが、無ければ無いで過ごすことができた。
しかし、こうして身近な文明の機器があるとなれば弄っていたくなるもの。スマホ依存という言葉も納得してしまうと実感していた。
「この小さな端末に様々な機能が備わっているのね。本当に素晴らしい発明品だわ」
スススッと距離を詰めてくる教授の目は爛々と輝いていた。視線は霧華の手元へ注がれている。サイエンティストにとってこの文明の機器は興味を惹く最高の品なのだろう。
分解されては叶わない。霧華はそれを後ろ手にサッと隠した。
「そーですよねー……あ、そういえば調子が悪いって言ってた戦士を呼び出す装置は直ったんですか?」
「ええ。ばっちり直したわ。配線を繋ぎ直しただけで済んだのよ。直してからまだスイッチを入れてないの。貴女、試しにやってみない?」
「いいんですか?」
このバンガードには様々な世界から呼び出された人々が集っている。多くは聖塔から解放された戦士だ。過去の英雄、はたまた異世界からの戦士もいた。塔士はその戦士達と共に塔の攻略に日々赴いている。
あらゆる発明品を作り出している彼女は戦士を人工的に呼び出すことを可能にした。その機械がこのフロアを占領しているのだ。
霧華は配線の繋がった大きなレバーに手をかけようとしたが、不安げに教授の方を見上げる。
「……爆発とかしませんよね」
「あら大丈夫よ。いつものことだから」
それを聞いて不安がさらに増す。彼女にとってはいつものことで、対処ができるのだとしても霧華にとっては初めてだ。
恐い人が来たらどうしようかと口にすれば「その時は私に任せなさい」とテレビでよく見る未来の光線銃のようなものを満面の笑みと共に携えた。
恐る恐るレバーに両手を添えて、手前にぐっと力を入れて倒す。するとバチンと大きな音を立てて配線に電流が走っていった。フロアの中央にある塔を象ったモニュメントにそれが流れ込み、登頂部から伸びた一筋の光が天井を突き抜けていく。
一際強く光った瞬間、二人は目を瞑った。周囲の機械が次第に音を静める。その直後、鳥のような鳴き声が聞こえた。
「ぴゃー」
身の丈が五十センチ程の白黒ボディ。嘴と足が黄色く、両目を繋ぐように白いラインが頭に模様として入っている。毛質は柔らかいのかふわふわと毛羽立っていた。
「これは、可愛い」
「鳥かしら。本で見たことあるような」
「見た感じペンギンですね。雛かな、ふわふわしてる」
小さなペンギンはフロアをきょろきょろと見回していた。霧華がゆっくりと近づくとその小さな生命体が首を持ち上げる。つぶらな瞳が霧華を捉えた。
「ぴい」
「可愛い。君はどこから来たの?」
「ぴーい?」
ダメ元で話しかけてみるが、やはり言葉は通じないようだった。小さな首を傾げ、パタパタと羽を動かす。その様子が愛らしく、霧華の胸はきゅんと高鳴っていた。
「教授、この子も戦士なんですか? それとも私と同じ感じで戦えないとか…」
「現状では分からないわね。でも呼び出してしまった以上は……ここで私の手伝いでもさせようかしら」
「教授の手伝い、ですか?」
その時、まるでタイミングを見計らったように教授のペット達がフロアを横切っていった。懐中時計を手にした白ウサギ、顔のパーツが付いた真っ赤な薔薇、猫のようなシマシマ尻尾の狸。元は何らかの動植物であった彼らは教授の実験により今の姿になったと噂されている。
この子がこのまま教授の元に残ることになったら。今の姿を留められないのでは。瞬時にそう悟った霧華はペンギンを抱き抱えていた。
「ここにいたらダメだっ! 教授のモルモットになっちゃう!」
「ぴ?」
霧華の腕に抱えられたペンギンは首を傾げている。何が何やら分からぬまま実験室から連れ出されたのであった。
「お・ま・た・せ。充電が終わったわよ」
一人の女性が研究室の奥から戻ってきた。ウェーブかかった長いピンク色の髪を揺らし、ブーツをカツカツと鳴らしながら歩く姿はモデルのようにも見える。
太さの違う配線が床中にまるで蛇のように這っていた。その全てが電流を送る基盤に繋がっている。
教授と呼ばれている女性は手の平に収まる四角い金属の端末を霧華に手渡した。
「ありがとうございます。……あ、電源入った」
受け取った端末の電源を入れ、慣れた手つきで液晶画面に触れる。その操作する様子を物珍しそうに覗き込んでいた教授と顔を上げた際に視線が合う。
「その携帯端末、電波が無いと使い物にならないんでしょう? 充電しても意味無いんじゃないかしら」
「通信はできませんけど、端末の中にあるアルバムに写真や音楽が記録されてるんです。それに目覚まし時計にも使うし」
そう言って白い背面の端末を持ち直す。
これは霧華がこの世界に召喚された時の持ち物の一つだ。前回は持ち込めずにいたが、今回は偶然にもこの端末、スマートフォンを持ち込むことができた。日常生活に欠かせない物ではあるが、無ければ無いで過ごすことができた。
しかし、こうして身近な文明の機器があるとなれば弄っていたくなるもの。スマホ依存という言葉も納得してしまうと実感していた。
「この小さな端末に様々な機能が備わっているのね。本当に素晴らしい発明品だわ」
スススッと距離を詰めてくる教授の目は爛々と輝いていた。視線は霧華の手元へ注がれている。サイエンティストにとってこの文明の機器は興味を惹く最高の品なのだろう。
分解されては叶わない。霧華はそれを後ろ手にサッと隠した。
「そーですよねー……あ、そういえば調子が悪いって言ってた戦士を呼び出す装置は直ったんですか?」
「ええ。ばっちり直したわ。配線を繋ぎ直しただけで済んだのよ。直してからまだスイッチを入れてないの。貴女、試しにやってみない?」
「いいんですか?」
このバンガードには様々な世界から呼び出された人々が集っている。多くは聖塔から解放された戦士だ。過去の英雄、はたまた異世界からの戦士もいた。塔士はその戦士達と共に塔の攻略に日々赴いている。
あらゆる発明品を作り出している彼女は戦士を人工的に呼び出すことを可能にした。その機械がこのフロアを占領しているのだ。
霧華は配線の繋がった大きなレバーに手をかけようとしたが、不安げに教授の方を見上げる。
「……爆発とかしませんよね」
「あら大丈夫よ。いつものことだから」
それを聞いて不安がさらに増す。彼女にとってはいつものことで、対処ができるのだとしても霧華にとっては初めてだ。
恐い人が来たらどうしようかと口にすれば「その時は私に任せなさい」とテレビでよく見る未来の光線銃のようなものを満面の笑みと共に携えた。
恐る恐るレバーに両手を添えて、手前にぐっと力を入れて倒す。するとバチンと大きな音を立てて配線に電流が走っていった。フロアの中央にある塔を象ったモニュメントにそれが流れ込み、登頂部から伸びた一筋の光が天井を突き抜けていく。
一際強く光った瞬間、二人は目を瞑った。周囲の機械が次第に音を静める。その直後、鳥のような鳴き声が聞こえた。
「ぴゃー」
身の丈が五十センチ程の白黒ボディ。嘴と足が黄色く、両目を繋ぐように白いラインが頭に模様として入っている。毛質は柔らかいのかふわふわと毛羽立っていた。
「これは、可愛い」
「鳥かしら。本で見たことあるような」
「見た感じペンギンですね。雛かな、ふわふわしてる」
小さなペンギンはフロアをきょろきょろと見回していた。霧華がゆっくりと近づくとその小さな生命体が首を持ち上げる。つぶらな瞳が霧華を捉えた。
「ぴい」
「可愛い。君はどこから来たの?」
「ぴーい?」
ダメ元で話しかけてみるが、やはり言葉は通じないようだった。小さな首を傾げ、パタパタと羽を動かす。その様子が愛らしく、霧華の胸はきゅんと高鳴っていた。
「教授、この子も戦士なんですか? それとも私と同じ感じで戦えないとか…」
「現状では分からないわね。でも呼び出してしまった以上は……ここで私の手伝いでもさせようかしら」
「教授の手伝い、ですか?」
その時、まるでタイミングを見計らったように教授のペット達がフロアを横切っていった。懐中時計を手にした白ウサギ、顔のパーツが付いた真っ赤な薔薇、猫のようなシマシマ尻尾の狸。元は何らかの動植物であった彼らは教授の実験により今の姿になったと噂されている。
この子がこのまま教授の元に残ることになったら。今の姿を留められないのでは。瞬時にそう悟った霧華はペンギンを抱き抱えていた。
「ここにいたらダメだっ! 教授のモルモットになっちゃう!」
「ぴ?」
霧華の腕に抱えられたペンギンは首を傾げている。何が何やら分からぬまま実験室から連れ出されたのであった。