RS Re;univerSe舞台
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テイルアタック
それはつい先日の話だとボルカノは話し始めた。
モウゼスを訪れた際に道具屋の前でばったりと出くわしたという。アザレアの色を宿したフィリアともう一人の自分に。
そこで他愛の無い会話を二、三繋いでいるうちにバンガード内で起きている怪事件についての話が長引くことになった。
「……その空き家から夜な夜な啜り泣く声が?」
「付近を通りかかった住民はそう話しているそうだ。幽霊の類いではないか、と」
「くだらんな。朽ちた民家にはそういった話が定説になる。恐怖心が産み出すものだ」
ボルカノは自身の考えに同意するように軽く頷く。確証の無い幽霊の存在ではなく、魔物や賊が棲家としているのではないかという方向に話が進められていた。しかし、フィリアはその二人の会話に混ざらずにいた。神妙な顔つきで悶々と悩んでいる様子とも捉えられた。
彼女の正面に立っていたボルカノはその様子を妙だと思い、声を掛けたのだ。
「フィリア、どうした」
「あ、いえ……別に」
「よければ君の意見を聞かせては貰えないか。面倒なことにその調査を請け負っている」
「大変ですね、そちらのボルカノさんも。……私は、なんとも言えないです。でも出来れば魔物や賊の方がいいなあ……とは思いますけど、幽霊は嫌ですもんね、うん」
なんとも歯切れが悪い言い方をしていた。
今度は彼女の横に立っていたボルカノが煮え切らない態度のフィリアに「もしや怖いのか、幽霊が」と言った。
するとフィリアは首をぶんぶんと風切り音を立てそうなぐらいに横へ振る。彼女の長いポニーテールがその動きに合わせて右へ左へと揺れた。その毛束が隣にいたボルカノの顔に当たっていたことなど微塵も気づかずに。
「怖くありません! それで、その調査依頼を手伝って欲しいとかですか?」
「……いや、そういうわけではないんだが」
「どうしたんですか?」
彼女のテイルアタックを一部始終見ていたボルカノは、顔面を押さえているもう一人の自分へ哀れむような目を向けていた。どうやら目に入ってしまったようだ。
釣られて横を振り向いたフィリアはその様子のボルカノにも同じように問う。
「……髪が。お前の髪が顔に当たった」
「えっ?! す、すみません! そんなに勢いよく…大丈夫ですかボルカノさん!」
という出来事があったとボルカノは霧華に話した。ティータイムのお茶請け話に良いだろうと思っていたのだが、彼女は苦笑いを浮かべていたので、笑い話にはならなかったかとボルカノはカップとソーサーを持ち上げた。
「髪の毛って案外当たると痛いですからね。束にして編むと縄の代わりにもなるぐらい強度が増すし」
「髪で縄を? それは君の故郷で作られているのか」
「むかーしの話です。私は実際に見たこと無いですよ」
博物館でなら見たことあるかなあと斜め上を見ながら霧華はお茶を啜っていた。
ボルカノは彼女の髪に視線を向けながらぽつりと尋ねる。
「君は伸ばさないのか」
「髪ですか? うーん……長いと結構大変なんですよ。手入れも今以上にかかるし、鞄のベルトに挟まって引っ張られるし」
「成程。色々と苦労するようだ。……まあ、君は今の髪型でも似合っている」
目を逸らし気味にボルカノはそう呟いた。その誉め言葉は届いたのか否か。「ありがとうございます」と霧華は微笑っていた。
それはつい先日の話だとボルカノは話し始めた。
モウゼスを訪れた際に道具屋の前でばったりと出くわしたという。アザレアの色を宿したフィリアともう一人の自分に。
そこで他愛の無い会話を二、三繋いでいるうちにバンガード内で起きている怪事件についての話が長引くことになった。
「……その空き家から夜な夜な啜り泣く声が?」
「付近を通りかかった住民はそう話しているそうだ。幽霊の類いではないか、と」
「くだらんな。朽ちた民家にはそういった話が定説になる。恐怖心が産み出すものだ」
ボルカノは自身の考えに同意するように軽く頷く。確証の無い幽霊の存在ではなく、魔物や賊が棲家としているのではないかという方向に話が進められていた。しかし、フィリアはその二人の会話に混ざらずにいた。神妙な顔つきで悶々と悩んでいる様子とも捉えられた。
彼女の正面に立っていたボルカノはその様子を妙だと思い、声を掛けたのだ。
「フィリア、どうした」
「あ、いえ……別に」
「よければ君の意見を聞かせては貰えないか。面倒なことにその調査を請け負っている」
「大変ですね、そちらのボルカノさんも。……私は、なんとも言えないです。でも出来れば魔物や賊の方がいいなあ……とは思いますけど、幽霊は嫌ですもんね、うん」
なんとも歯切れが悪い言い方をしていた。
今度は彼女の横に立っていたボルカノが煮え切らない態度のフィリアに「もしや怖いのか、幽霊が」と言った。
するとフィリアは首をぶんぶんと風切り音を立てそうなぐらいに横へ振る。彼女の長いポニーテールがその動きに合わせて右へ左へと揺れた。その毛束が隣にいたボルカノの顔に当たっていたことなど微塵も気づかずに。
「怖くありません! それで、その調査依頼を手伝って欲しいとかですか?」
「……いや、そういうわけではないんだが」
「どうしたんですか?」
彼女のテイルアタックを一部始終見ていたボルカノは、顔面を押さえているもう一人の自分へ哀れむような目を向けていた。どうやら目に入ってしまったようだ。
釣られて横を振り向いたフィリアはその様子のボルカノにも同じように問う。
「……髪が。お前の髪が顔に当たった」
「えっ?! す、すみません! そんなに勢いよく…大丈夫ですかボルカノさん!」
という出来事があったとボルカノは霧華に話した。ティータイムのお茶請け話に良いだろうと思っていたのだが、彼女は苦笑いを浮かべていたので、笑い話にはならなかったかとボルカノはカップとソーサーを持ち上げた。
「髪の毛って案外当たると痛いですからね。束にして編むと縄の代わりにもなるぐらい強度が増すし」
「髪で縄を? それは君の故郷で作られているのか」
「むかーしの話です。私は実際に見たこと無いですよ」
博物館でなら見たことあるかなあと斜め上を見ながら霧華はお茶を啜っていた。
ボルカノは彼女の髪に視線を向けながらぽつりと尋ねる。
「君は伸ばさないのか」
「髪ですか? うーん……長いと結構大変なんですよ。手入れも今以上にかかるし、鞄のベルトに挟まって引っ張られるし」
「成程。色々と苦労するようだ。……まあ、君は今の髪型でも似合っている」
目を逸らし気味にボルカノはそう呟いた。その誉め言葉は届いたのか否か。「ありがとうございます」と霧華は微笑っていた。