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分かりやすい人
「フィリアさんってボルカノさんのこと好きなんですよね」
前触れもなく放たれた言葉。フィリアは思わず右手に持っていた薬草に火を点けてしまう所であった。それは何とか未遂に留まり、茎の部分が熱くなっただけで済んだ。内心ほっと胸を撫で下ろし、カウンター越しでニコニコと笑っている霧華へ目を向ける。平静を装ってはいるが、動揺がバレてしまったのではないかとフィリアは危惧していた。
霧華はバンガードの道具屋でジニー・ナイツと共に働いている。接客が随分板についていると以前尋ねた所、三百年前の世界でも雑貨屋の手伝いをしていたそうだ。
次の塔遠征に向け、こうして道具屋へ足を運んだフィリアだが、まさかこんな質問をされるとは思ってもいなかった。まだ心臓が早鐘を打ち続けている。それを何とか抑え、平常心を努めた。
「な、なんですか急に。どうして、そう思うんです?」
「何となーくですけど。そっちのボルカノさんと話してる時、フィリアさん笑顔が輝いているように見えて。もしかしたらと」
思わずフィリアは口元を手で覆い隠した。俄かに頬が火照る。彼と居る時、自分はそんな表情をしているのかと。しかもそれを霧華に指摘されてしまい複雑な気分となる。なにせ彼女は鈍いのだ。相手からどれだけ想われようと、微塵も気づいていないのだ。その犠牲となっているもう一人のボルカノが不憫で仕方が無いと思うぐらいには。
いや、もしかすると自分に関することには疎くとも、周囲の人間関係をよく観察しているのかもしれない。それはそれで大した能力だ。
どうしたものか。何と答えよう。上手く誤魔化せる手立ては無いかと考えを一巡した結果、相手に話を振り返した。
「……霧華さんはどうなんですか」
「え、私ですか? どうって」
「好き、なんじゃないですか? そちらのボルカノさんのこと」
ここでフィリアはじっと霧華を観察するように見つめた。表情に僅か一つでも恥じらいを見せるのならば、こちらも動きやすくなるというもの。
「好きですよ? 人として」
しかし、彼女は恥じらいや慌てた様子どころかそう答えたのである。いい笑顔で。
フィリアの賭けは失敗に終わってしまった。あまりにも拍子抜けしてしまい、彼女の言葉を繰り返した。
「人として」
「はい。朱鳥術使わせたら右に出る人がいないぐらい強いし、気遣いもできるし、優しいし……本当に頼りになる人ですからね」
それは相手が霧華さんだからです。声を大にしてそう言いたいフィリアであったが、これ以上深堀するのは危険だと察知。軽い眩暈を覚えながらも、財布から薬草と術酒の代金をカウンターへことりと置いた。
「……すみません、そろそろ行かないといけないので。お代はこちらで」
「あ、引き留めちゃってすみません。袋に詰めますね」
カウンターの上にそっと手放した薬草は既に常温へと戻っている。紙袋に術酒の瓶と薬草を収め、袋の口を二度折り返してからフィリアへと手渡した。
「頑張ってくださいね」
その励ましの言葉と笑みは遠征に向けてなのか、はたまた別の意味なのか。訊き返すこともできず、フィリアは「ありがとうございます」とだけ残して雑貨屋を後にした。
「フィリアさんってボルカノさんのこと好きなんですよね」
前触れもなく放たれた言葉。フィリアは思わず右手に持っていた薬草に火を点けてしまう所であった。それは何とか未遂に留まり、茎の部分が熱くなっただけで済んだ。内心ほっと胸を撫で下ろし、カウンター越しでニコニコと笑っている霧華へ目を向ける。平静を装ってはいるが、動揺がバレてしまったのではないかとフィリアは危惧していた。
霧華はバンガードの道具屋でジニー・ナイツと共に働いている。接客が随分板についていると以前尋ねた所、三百年前の世界でも雑貨屋の手伝いをしていたそうだ。
次の塔遠征に向け、こうして道具屋へ足を運んだフィリアだが、まさかこんな質問をされるとは思ってもいなかった。まだ心臓が早鐘を打ち続けている。それを何とか抑え、平常心を努めた。
「な、なんですか急に。どうして、そう思うんです?」
「何となーくですけど。そっちのボルカノさんと話してる時、フィリアさん笑顔が輝いているように見えて。もしかしたらと」
思わずフィリアは口元を手で覆い隠した。俄かに頬が火照る。彼と居る時、自分はそんな表情をしているのかと。しかもそれを霧華に指摘されてしまい複雑な気分となる。なにせ彼女は鈍いのだ。相手からどれだけ想われようと、微塵も気づいていないのだ。その犠牲となっているもう一人のボルカノが不憫で仕方が無いと思うぐらいには。
いや、もしかすると自分に関することには疎くとも、周囲の人間関係をよく観察しているのかもしれない。それはそれで大した能力だ。
どうしたものか。何と答えよう。上手く誤魔化せる手立ては無いかと考えを一巡した結果、相手に話を振り返した。
「……霧華さんはどうなんですか」
「え、私ですか? どうって」
「好き、なんじゃないですか? そちらのボルカノさんのこと」
ここでフィリアはじっと霧華を観察するように見つめた。表情に僅か一つでも恥じらいを見せるのならば、こちらも動きやすくなるというもの。
「好きですよ? 人として」
しかし、彼女は恥じらいや慌てた様子どころかそう答えたのである。いい笑顔で。
フィリアの賭けは失敗に終わってしまった。あまりにも拍子抜けしてしまい、彼女の言葉を繰り返した。
「人として」
「はい。朱鳥術使わせたら右に出る人がいないぐらい強いし、気遣いもできるし、優しいし……本当に頼りになる人ですからね」
それは相手が霧華さんだからです。声を大にしてそう言いたいフィリアであったが、これ以上深堀するのは危険だと察知。軽い眩暈を覚えながらも、財布から薬草と術酒の代金をカウンターへことりと置いた。
「……すみません、そろそろ行かないといけないので。お代はこちらで」
「あ、引き留めちゃってすみません。袋に詰めますね」
カウンターの上にそっと手放した薬草は既に常温へと戻っている。紙袋に術酒の瓶と薬草を収め、袋の口を二度折り返してからフィリアへと手渡した。
「頑張ってくださいね」
その励ましの言葉と笑みは遠征に向けてなのか、はたまた別の意味なのか。訊き返すこともできず、フィリアは「ありがとうございます」とだけ残して雑貨屋を後にした。