RS Re;univerSe舞台
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鈍感な微笑み
「あ、霧華さんとトーマス」
もう一人のボルカノに仕事で呼ばれたフィリアは彼と西の森へ共にしていた。群生する薬草の生態調査を終え、まだ明るいうちにバンガードへ戻って来た。
ふと、広場のイルカ像前で見知った顔を見つけ、隣を歩くボルカノに声をかけたつもりだったのだが。
途端にボルカノの不機嫌指数が一つ。いや、それどころか二つ以上もぎゅんっと上がった。フィリアから見ても分かる程に彼の機嫌が急降下している。
「……どうかしましたか?」
無粋とは思いながらもそう尋ねたが、案の定ボルカノは「何でもない」と不機嫌な色を返す。
一方、広場の中央で霧華とトーマスは談笑を繰り広げているようだ。屈託のない笑みを浮かべる彼女。それに比例するようにボルカノの表情が険しくなる。
あの二人は親睦関係にあると聞いてはいたが、まさかこの人が妬くまでとはフィリアも思ってはいなかったようだ。
「行くぞ」
わざとらしく視線を外したボルカノが広場を避けるように歩き出した。
分かりやすい人だなあ。そう胸の内で呟いたフィリアは彼の後を追いかけて行った。
◇◆◇
「霧華さんってボルカノさんのことどう思ってるんですか」
小さく切り分けたブルーベリーパイをフォークに突き刺し、それを頬張ろうとした所にフィリアはそう投げかけた。霧華の手は一度そこでぴたりと止まる。先に質問に答えるか、このブルーベリーパイを味わってからにしようか悩んでいるようにも見える。二秒ほど悩んだ結果、ブルーベリーパイを頬張った。
バンガード市内の広場に面した喫茶店。甘酸っぱいブルーベリーをふんだんに使用したパイが美味しいと評判の店にフィリアは霧華と訪れていた。先日、良かったら一緒に行かないかと初めてお茶に誘われたのだ。
この喫茶店には何度か来たことがある。定番のショートケーキ、サクサクのミルフィーユ、薫り高い紅茶のシフォンケーキ。どれも外れたことがないので、これは次の限定ケーキも期待ができると思っている店だった。
ブルーベリーパイも甘酸っぱさが引き立っていてとても美味しい。メニューの一番上にあるフルーツタルトも美味しそうだった。
「どっちのですか?」
ブルーベリーパイを飲み込んだ霧華はフィリアにそう尋ね返した。
ああ、確かに。先程の質問だけではどちらか特定ができない。違う時点とはいえ、同一人物が存在していると何かとややこしい。
「えっと、そちらのボルカノさんです」
「こっちのボルカノさんですか? どうって……いい人だと思ってますよ」
少しも気恥ずかしい素振りなど見せず、あっけらかんとして霧華は答えた。元より否定的な答えは無いだろうと踏んでいたフィリアではあるが、あまりにもあっさりとした答えにモヤモヤとしていた。
これは明らかに彼の片思いだ。そうでなければ、他の男性と一緒にいる場面であのような表情はしないし、何よりいつも彼女を気遣っている。見ていて分かりやすいのだ。他者である自分ですらそう感じ取っているというのに、本人がこれでは彼も相当な苦労をしているのではないか。
「いい人止まりですか」
「うーん……いい人でもあるし、頼れる人ですよ。というよりも、頼りにしてるのがボルカノさんぐらいしかいなくて。だから、信頼できるいい人です」
頑張ってくださいボルカノさん。そして霧華さんその気持ちに気づいてあげてください。
フィリアはその微笑みが眩しいと目を背けながらそう願うのであった。
「あ、霧華さんとトーマス」
もう一人のボルカノに仕事で呼ばれたフィリアは彼と西の森へ共にしていた。群生する薬草の生態調査を終え、まだ明るいうちにバンガードへ戻って来た。
ふと、広場のイルカ像前で見知った顔を見つけ、隣を歩くボルカノに声をかけたつもりだったのだが。
途端にボルカノの不機嫌指数が一つ。いや、それどころか二つ以上もぎゅんっと上がった。フィリアから見ても分かる程に彼の機嫌が急降下している。
「……どうかしましたか?」
無粋とは思いながらもそう尋ねたが、案の定ボルカノは「何でもない」と不機嫌な色を返す。
一方、広場の中央で霧華とトーマスは談笑を繰り広げているようだ。屈託のない笑みを浮かべる彼女。それに比例するようにボルカノの表情が険しくなる。
あの二人は親睦関係にあると聞いてはいたが、まさかこの人が妬くまでとはフィリアも思ってはいなかったようだ。
「行くぞ」
わざとらしく視線を外したボルカノが広場を避けるように歩き出した。
分かりやすい人だなあ。そう胸の内で呟いたフィリアは彼の後を追いかけて行った。
◇◆◇
「霧華さんってボルカノさんのことどう思ってるんですか」
小さく切り分けたブルーベリーパイをフォークに突き刺し、それを頬張ろうとした所にフィリアはそう投げかけた。霧華の手は一度そこでぴたりと止まる。先に質問に答えるか、このブルーベリーパイを味わってからにしようか悩んでいるようにも見える。二秒ほど悩んだ結果、ブルーベリーパイを頬張った。
バンガード市内の広場に面した喫茶店。甘酸っぱいブルーベリーをふんだんに使用したパイが美味しいと評判の店にフィリアは霧華と訪れていた。先日、良かったら一緒に行かないかと初めてお茶に誘われたのだ。
この喫茶店には何度か来たことがある。定番のショートケーキ、サクサクのミルフィーユ、薫り高い紅茶のシフォンケーキ。どれも外れたことがないので、これは次の限定ケーキも期待ができると思っている店だった。
ブルーベリーパイも甘酸っぱさが引き立っていてとても美味しい。メニューの一番上にあるフルーツタルトも美味しそうだった。
「どっちのですか?」
ブルーベリーパイを飲み込んだ霧華はフィリアにそう尋ね返した。
ああ、確かに。先程の質問だけではどちらか特定ができない。違う時点とはいえ、同一人物が存在していると何かとややこしい。
「えっと、そちらのボルカノさんです」
「こっちのボルカノさんですか? どうって……いい人だと思ってますよ」
少しも気恥ずかしい素振りなど見せず、あっけらかんとして霧華は答えた。元より否定的な答えは無いだろうと踏んでいたフィリアではあるが、あまりにもあっさりとした答えにモヤモヤとしていた。
これは明らかに彼の片思いだ。そうでなければ、他の男性と一緒にいる場面であのような表情はしないし、何よりいつも彼女を気遣っている。見ていて分かりやすいのだ。他者である自分ですらそう感じ取っているというのに、本人がこれでは彼も相当な苦労をしているのではないか。
「いい人止まりですか」
「うーん……いい人でもあるし、頼れる人ですよ。というよりも、頼りにしてるのがボルカノさんぐらいしかいなくて。だから、信頼できるいい人です」
頑張ってくださいボルカノさん。そして霧華さんその気持ちに気づいてあげてください。
フィリアはその微笑みが眩しいと目を背けながらそう願うのであった。