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ぺんちゃんとメジロ
「ぴぃ?」
ペンギンの頭上に一羽の小鳥がパタパタと降りてきて、止まった。
その小鳥は鮮やかな黄緑色の体を持ち、「チィー」と可愛らしい声で鳴いている。お腹はぺんちゃんとお揃いの白から灰褐色。胸元から首は黄色い羽毛。そして目の周りが白く縁どられている。
この小鳥が『メジロ』という鳥類だと知るのは、この場に居合わせる中では霧華のみ。二人のボルカノ、フィリア、ぺんちゃんにとってはただの野鳥という認識でしかない。
ぺんちゃんは頭に違和感を覚えたのか、左右に首をふるふると振る。するとメジロが滑り落ちてきた。羽ばたく素振りを全く見せなかったので、慌てて霧華がメジロを両手で受け止める。
手のひらにちょこんと乗った小さなメジロは彼らをつぶらな瞳で見上げ、小首を傾げた。この愛らしい仕草にフィリアの頬が緩む。
「か、可愛い……!こんな可愛らしい野鳥、見たことないです」
「黄緑色の羽、目が白く縁どられている。……確かに見たことがない」
「メジロって言うんですよ。久しぶりに見ました」
「成程な。名は体を表す、か」
「人間に対して随分と警戒心が薄いようだ。コイツの頭に降りてきたぐらいだ。飼い主がいるのかもしれない」
この数分間で仮説を打ち立てたボルカノではあったが、どうやらそうではなさそうだ。メジロは霧華の手の上でじっとしている。餌を強請るような仕草を見せるどころか、目をつむって体を膨らませていた。
「もしかしたら寒くて飛べなくなってるのかも」
「ぴぃ」
「寒波により飛べなくなる鳥類の話はよくある。このメジロとやらも昨夜訪れた寒波の影響で体力を消耗して……何をしている」
霧華はボルカノの顔にメジロを近づけた。突拍子もない謎の行動に彼は思わず身を引いた。メジロを乗せた霧華は訝し気な目で見てくるボルカノにこう話をする。
「温めてあげたら元気になるかなーって思いまして」
「なるほど。一理ありますね」
「温めてやったらどうだ」
賛同するフィリアだけでは留まらず、もう一人の自分にまでメジロを温めてやったらどうだと言ってくるではないか。完全に他人事とみなしている。さて、メジロに暖を分けてやるのは構わない。しかし、その態度が気に入らないとボルカノは自分を睨んだ。
「……霧華。そのメジロをこちらに、いや首じゃない。手の上に乗せてくれ」
「はい。小さいから気をつけてくださいね」
スズメよりも一回り小さい体。そっとボルカノに手渡す。
翼を一度パタつかせたメジロはボルカノの手に収まると、羽毛を膨らませたままじっと鎮座していた。
朱鳥術士は手の平に意識を集中させた。自身が操る朱鳥の力を送り込む。数秒程経った頃、メジロの周辺に暖かい空気が生まれ、小さき命を柔らかく包み込んだ。溢れ出した春の陽気が周囲にも漂い始める。桜の咲く季節を彷彿とさせるこの風に霧華は目を細めた。
「温かい、春の風が吹いてるみたい。ボルカノさん、もしかしてこれ『生命の炎』ですか?」
「ああ。寒さで体力を奪われているのならば代謝が落ちている。……対象が小さすぎて朱鳥術のコントロールに労を費やすが、造作ない」
「流石、ボルカノさんですね」
フィリアが褒め言葉を贈ると、もう一人のボルカノがふんと鼻を鳴らした。「その程度の術であればコントロールは容易いものだ」と。
「……チィー」
メジロがか細い鳴き声を上げた。膨らませていた羽毛を寝かせ、つぶらな目をパチっと開く。体を小刻みに震わせる様子もなくなり、小さな頭を傾げて興味深そうに彼らを見上げていた。
「ぴゃーあ?」
フリッパーを二度パタつかせたぺんちゃんは「具合はどうか」とメジロに訊ねた。すると、元気な鳴き声が返ってくる。
「チィ!」
「もう大丈夫そうですね。……ふふっ。手の上でぴょんぴょんしてる」
「……小さいとはいえ、爪が食い込む」
「でも、元気になったのに飛んでいこうとしませんね。もしかして、ボルカノさんに懐いたとか」
「いや、これは」
ぴょんぴょんと踊るように跳ねていたメジロは急に大人しくなり、瞬きをゆっくりと繰り返していた。うつらうつらとしている。やがてぺたんと座り込み、目を瞑る。気持ち良さそうな寝顔を見たボルカノは小さな溜息を漏らした。
「これは完全に暖を取っているようだな」
「ボルカノさんの側は温かいから。仕方ないですね」
「暫くメジロの子守でもしているといい」
これでは作業どころか書物を読むことすらできない。
どうしたものか。悩むボルカノにぺんちゃんがすっと寄り添った。と思いきや、コートの裾に潜り込む。足元にぴったりとくっつく様は暖を取っているようにも見える。
「ぴぃ!」
「……」
「猫どころか鳥も引き寄せるボルカノさん、さすがですね」
両鳥ともに満足しているようだ。
「ぴぃ?」
ペンギンの頭上に一羽の小鳥がパタパタと降りてきて、止まった。
その小鳥は鮮やかな黄緑色の体を持ち、「チィー」と可愛らしい声で鳴いている。お腹はぺんちゃんとお揃いの白から灰褐色。胸元から首は黄色い羽毛。そして目の周りが白く縁どられている。
この小鳥が『メジロ』という鳥類だと知るのは、この場に居合わせる中では霧華のみ。二人のボルカノ、フィリア、ぺんちゃんにとってはただの野鳥という認識でしかない。
ぺんちゃんは頭に違和感を覚えたのか、左右に首をふるふると振る。するとメジロが滑り落ちてきた。羽ばたく素振りを全く見せなかったので、慌てて霧華がメジロを両手で受け止める。
手のひらにちょこんと乗った小さなメジロは彼らをつぶらな瞳で見上げ、小首を傾げた。この愛らしい仕草にフィリアの頬が緩む。
「か、可愛い……!こんな可愛らしい野鳥、見たことないです」
「黄緑色の羽、目が白く縁どられている。……確かに見たことがない」
「メジロって言うんですよ。久しぶりに見ました」
「成程な。名は体を表す、か」
「人間に対して随分と警戒心が薄いようだ。コイツの頭に降りてきたぐらいだ。飼い主がいるのかもしれない」
この数分間で仮説を打ち立てたボルカノではあったが、どうやらそうではなさそうだ。メジロは霧華の手の上でじっとしている。餌を強請るような仕草を見せるどころか、目をつむって体を膨らませていた。
「もしかしたら寒くて飛べなくなってるのかも」
「ぴぃ」
「寒波により飛べなくなる鳥類の話はよくある。このメジロとやらも昨夜訪れた寒波の影響で体力を消耗して……何をしている」
霧華はボルカノの顔にメジロを近づけた。突拍子もない謎の行動に彼は思わず身を引いた。メジロを乗せた霧華は訝し気な目で見てくるボルカノにこう話をする。
「温めてあげたら元気になるかなーって思いまして」
「なるほど。一理ありますね」
「温めてやったらどうだ」
賛同するフィリアだけでは留まらず、もう一人の自分にまでメジロを温めてやったらどうだと言ってくるではないか。完全に他人事とみなしている。さて、メジロに暖を分けてやるのは構わない。しかし、その態度が気に入らないとボルカノは自分を睨んだ。
「……霧華。そのメジロをこちらに、いや首じゃない。手の上に乗せてくれ」
「はい。小さいから気をつけてくださいね」
スズメよりも一回り小さい体。そっとボルカノに手渡す。
翼を一度パタつかせたメジロはボルカノの手に収まると、羽毛を膨らませたままじっと鎮座していた。
朱鳥術士は手の平に意識を集中させた。自身が操る朱鳥の力を送り込む。数秒程経った頃、メジロの周辺に暖かい空気が生まれ、小さき命を柔らかく包み込んだ。溢れ出した春の陽気が周囲にも漂い始める。桜の咲く季節を彷彿とさせるこの風に霧華は目を細めた。
「温かい、春の風が吹いてるみたい。ボルカノさん、もしかしてこれ『生命の炎』ですか?」
「ああ。寒さで体力を奪われているのならば代謝が落ちている。……対象が小さすぎて朱鳥術のコントロールに労を費やすが、造作ない」
「流石、ボルカノさんですね」
フィリアが褒め言葉を贈ると、もう一人のボルカノがふんと鼻を鳴らした。「その程度の術であればコントロールは容易いものだ」と。
「……チィー」
メジロがか細い鳴き声を上げた。膨らませていた羽毛を寝かせ、つぶらな目をパチっと開く。体を小刻みに震わせる様子もなくなり、小さな頭を傾げて興味深そうに彼らを見上げていた。
「ぴゃーあ?」
フリッパーを二度パタつかせたぺんちゃんは「具合はどうか」とメジロに訊ねた。すると、元気な鳴き声が返ってくる。
「チィ!」
「もう大丈夫そうですね。……ふふっ。手の上でぴょんぴょんしてる」
「……小さいとはいえ、爪が食い込む」
「でも、元気になったのに飛んでいこうとしませんね。もしかして、ボルカノさんに懐いたとか」
「いや、これは」
ぴょんぴょんと踊るように跳ねていたメジロは急に大人しくなり、瞬きをゆっくりと繰り返していた。うつらうつらとしている。やがてぺたんと座り込み、目を瞑る。気持ち良さそうな寝顔を見たボルカノは小さな溜息を漏らした。
「これは完全に暖を取っているようだな」
「ボルカノさんの側は温かいから。仕方ないですね」
「暫くメジロの子守でもしているといい」
これでは作業どころか書物を読むことすらできない。
どうしたものか。悩むボルカノにぺんちゃんがすっと寄り添った。と思いきや、コートの裾に潜り込む。足元にぴったりとくっつく様は暖を取っているようにも見える。
「ぴぃ!」
「……」
「猫どころか鳥も引き寄せるボルカノさん、さすがですね」
両鳥ともに満足しているようだ。