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過ぎ行く季節に
「君のことだ。街のイベントに興じるものかと思っていた」
キッチンで気に入りの茶器を用意する傍ら、菓子を皿へ取り分ける霧華へそう問い掛けた。
暦の上では冬が近づき、気温は下降傾向。山脈の紅葉が美しく彩られる時期でもある。リブロフでは温泉に浸かりながら紅葉を楽しむという興もあるようだ。
先月の末にハロウィンというイベントが行われていた。元は現世を彷徨く悪魔から逃れるため、姿を化かし眩ませるためだと。それが仮装を楽しむ、はては菓子を強請りに歩くといったイベントに変化を遂げたようだった。
年月を経れば変化も致し方ないもの。それは理解できるが、害が及ぶのは御免被りたい。所用で外へ出た際に仮装した者たちに菓子をねだられ迷惑したというもの。
「んー…私、あまりそのイベント馴染みがないんですよ。小さい頃に七夕だ、クリスマスパーティーだ!とかは結構やりましたけど。飾り付けやプレゼント交換とか。ハロウィンだけはまだ浸透してなかったせいかな。仮装した記憶も無いし」
「他所の国から持ち込まれたイベントでも根付くのに時間差があるということか」
「そうですね。…時代の流れかなあ。私より若い子達はハロウィンを大いに楽しんでると思いますよ。毎年ニュースで渋谷や池袋が仮装した人達で賑わって凄いんです」
彼女は空を見ながら他人事のようにそう語る。元居た世界でそのイベントが根付いたとしても、極力関与しないといった風だ。先日の対応を見てもそう捉えることができた。
「フェイル君はバッチリ乗っかってましたね」
「随分と中途半端な幽霊の格好だった」
「おかげで怖くなかったです。お菓子も丁度焼いてたし、悪戯されなくてすみました」
一人の弟子が『Trick or treat!』という常套句を引っ提げて来訪。袖や裾を引き裂いた衣装を纏ってきた。元より驚かすつもりは無く、菓子目当てだったようだ。何をするわけでも無く、テーブルに着席してティータイムを満喫していたのだ。
「あれは完全に君が焼いた菓子目当てだな」
「ラッピングした分も持って帰ってましたもんね。美味しいって言ってくれるから作り甲斐あっていいんですけど」
そう言って霧華は微笑ましく目を細めた。フェイルが美味そうに焼きたてのクッキーを摘まんでいたのを思い出しているのだろう。
「ふざけた事を言おうものなら火でもくれてやろうかと考えていたが」
「それだと逆トリックですよ。…というかボルカノさんなら普通にやりそう」
茶葉を入れたティーポットにケトルからお湯を注げば上品な薫りが漂う。これは先日入手した貴重な茶葉で、彼女の好きなアールグレイ。紅茶はもとより嗜好品ではあるが、茶葉の好みが感化され次第に変化したのはいつだったか。
「あ、そういえばリブロフの山脈に温泉施設があるんですよね。トー……とっておきの情報をフルブライトさんから聞きました」
「…気を使うのは構わないが、もう少しマシな誤魔化し方は無いのか」
あの男から聞いたと言っているようなものだ。言いかけてから慌てて口元を押さえる仕草がそれを明確に示している。そして苦笑染みながらも「温泉行ってみたいですね」と返してきた。
「山脈の紅葉が素晴らしいとも聞く。……次の休日に行ってみるか」
「紅葉狩りもいいですね。楽しみにしてます!」
この時期だけに見られる自然の美しさを堪能するのも悪くない。北風に広葉樹の葉が散らされる前に二人で赴くのも良いだろう。
「君のことだ。街のイベントに興じるものかと思っていた」
キッチンで気に入りの茶器を用意する傍ら、菓子を皿へ取り分ける霧華へそう問い掛けた。
暦の上では冬が近づき、気温は下降傾向。山脈の紅葉が美しく彩られる時期でもある。リブロフでは温泉に浸かりながら紅葉を楽しむという興もあるようだ。
先月の末にハロウィンというイベントが行われていた。元は現世を彷徨く悪魔から逃れるため、姿を化かし眩ませるためだと。それが仮装を楽しむ、はては菓子を強請りに歩くといったイベントに変化を遂げたようだった。
年月を経れば変化も致し方ないもの。それは理解できるが、害が及ぶのは御免被りたい。所用で外へ出た際に仮装した者たちに菓子をねだられ迷惑したというもの。
「んー…私、あまりそのイベント馴染みがないんですよ。小さい頃に七夕だ、クリスマスパーティーだ!とかは結構やりましたけど。飾り付けやプレゼント交換とか。ハロウィンだけはまだ浸透してなかったせいかな。仮装した記憶も無いし」
「他所の国から持ち込まれたイベントでも根付くのに時間差があるということか」
「そうですね。…時代の流れかなあ。私より若い子達はハロウィンを大いに楽しんでると思いますよ。毎年ニュースで渋谷や池袋が仮装した人達で賑わって凄いんです」
彼女は空を見ながら他人事のようにそう語る。元居た世界でそのイベントが根付いたとしても、極力関与しないといった風だ。先日の対応を見てもそう捉えることができた。
「フェイル君はバッチリ乗っかってましたね」
「随分と中途半端な幽霊の格好だった」
「おかげで怖くなかったです。お菓子も丁度焼いてたし、悪戯されなくてすみました」
一人の弟子が『Trick or treat!』という常套句を引っ提げて来訪。袖や裾を引き裂いた衣装を纏ってきた。元より驚かすつもりは無く、菓子目当てだったようだ。何をするわけでも無く、テーブルに着席してティータイムを満喫していたのだ。
「あれは完全に君が焼いた菓子目当てだな」
「ラッピングした分も持って帰ってましたもんね。美味しいって言ってくれるから作り甲斐あっていいんですけど」
そう言って霧華は微笑ましく目を細めた。フェイルが美味そうに焼きたてのクッキーを摘まんでいたのを思い出しているのだろう。
「ふざけた事を言おうものなら火でもくれてやろうかと考えていたが」
「それだと逆トリックですよ。…というかボルカノさんなら普通にやりそう」
茶葉を入れたティーポットにケトルからお湯を注げば上品な薫りが漂う。これは先日入手した貴重な茶葉で、彼女の好きなアールグレイ。紅茶はもとより嗜好品ではあるが、茶葉の好みが感化され次第に変化したのはいつだったか。
「あ、そういえばリブロフの山脈に温泉施設があるんですよね。トー……とっておきの情報をフルブライトさんから聞きました」
「…気を使うのは構わないが、もう少しマシな誤魔化し方は無いのか」
あの男から聞いたと言っているようなものだ。言いかけてから慌てて口元を押さえる仕草がそれを明確に示している。そして苦笑染みながらも「温泉行ってみたいですね」と返してきた。
「山脈の紅葉が素晴らしいとも聞く。……次の休日に行ってみるか」
「紅葉狩りもいいですね。楽しみにしてます!」
この時期だけに見られる自然の美しさを堪能するのも悪くない。北風に広葉樹の葉が散らされる前に二人で赴くのも良いだろう。