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幻視が映した過去
「私の力を認めてくれた礼だ。喜んで協力しよう」
螺旋上に続いた階段の先に現れた扉。その先に居たのは真紅の衣に身を包んだ朱鳥術士。快諾した彼は炎を宿した様な琥珀色の双眼が印象的な男だった。
候国の塔士として任務を遂行する傍ら、オレは攫われた妹のリズを探すべく翻弄。
世界各地に現れている塔を攻略したうちの一つに彼、ボルカノが囚われていた。塔の最上部を目指す途中、ヴィジョンとして度々現れた彼の記憶は決して楽しい物とは言えないものだった。
異世界から呼び出された女性との出逢い。魔王の盾を巡った末に起きた惨劇。彼女に想いを寄せる姿。旅路の途中、心を通わせそうな場面もあった。けど、彼女は自分の世界へと還ってしまう結末。どうして引き留めなかったのか。オレには分からない。こうして過去に囚われるぐらいに未練だと思っているのなら、尚更。どうして。
「余所見をするなポルカ!」
前列にいた魔獣の牙を剣の腹で凌ぎ、振り払う。一瞬できた隙を後列にいたスカルアンデットに狙われていた。今からでも遅くはない、そいつを迎え撃とうとブロードソードを構える。奴が剣を振り上げた瞬間、炎の塊が頭上を通り過ぎて行った。それは轟音を上げながらスカルアンデットを灰になるまで燃やし尽くした。これで目の前の魔獣に集中できる。軽くステップを踏み、相手の虚を突いた所で魔獣を切り裂いた。
辛くも勝利を収めたオレ達は上へ続く階段を探し始めた。先を歩くグレイとライザ。二人の話を聞きながらもオレは後方を歩くボルカノを気にしていた。
この塔の内部は複雑になっていて、分かれ道が多い。上へ続く階段を探すのも苦労していた。そうこうしているうちに、また分かれ道に出くわす。ここでオレ達は二手に分かれる事とした。グレイとライザは右へ、オレとボルカノは左の廊下を進んでいく。
「ボルカノ。さっきは助かったよ。ありがとう」
「気にするな。術で味方の補助を行うのがオレの役割だ」
彼の朱鳥術はとても頼りになる。アンデットには特に有効な術ばかりだ。数多くの窮地を救われている。さっきもそうだ。あの時声を掛けてもらわなければ致命傷になる可能性もあった。
廊下の隅々をくまなく調べてみるが、上へ繋がる階段は見つからない。このまま一周して他の二人と合流する破目になりそうだ。
二人分の足音が廊下に響く。ヴィジョンと魔物もさっきの戦い以来、現れる気配がない。
「…あれから敵もヴィジョンも見当たらないな」
「油断は禁物だ。どうやらこの塔の主は戦場を潜り抜けてきた戦士のようだからな」
「分かった。……貴方は旅馴れた術士のようだ。戦術も秀でているし」
「賛辞は頂くがそれ程でもない。あのグレイといった男の方が余程」
「それでも彼女を守りながら旅をしてきた」
オレがそう言うと、ボルカノは話の途中で口を閉ざした。オレが指す彼女と彼の思う人物はどうやら一致したようだ。そうでなければあの時と同じ様な憂いに満ちた表情をしない。
足音だけが響き渡る。彼にとってこの話はタブーだったのかもしれない。それでも、オレは。
「ヴィジョンを視る力。お前はオレの過去をどこまで視た」
彼は閉ざしていた口を静かに開き、そうオレに尋ねた。どこまでと言われても彼女が喚ばれて、還るまでだ。プライドが高いと噂される彼にとっては人のプライバシーをと憤慨するのかもしれない。どう答えようか。そう迷っている間に彼は眉尻を下げて、儚い笑みを浮かべてみせた。
「最後まで視たのだろう」
「……どうして分かったんだ」
「そう分かりやすい顔をされてはな」
考えている事が全て顔に出ていると言われたようなもの。バツが悪くなりつい目を逸らした。横でクツクツと喉を鳴らして笑う声が聞こえてくる。
「……ボルカノ。どうして彼女を還してしまったんだ」
「愚問だな。オレの所為で彼女を此方に喚び出してしまった。元の世界に還してやるのが当然の責務だ」
「あんなに愛していたのに?自分の気持ちを押し殺してまで……」
そこが分からない。心の底から愛していた人を引き留めもせずに別れを告げた。最後の別れ際に彼は愛を伝えていた。でも、あれじゃあ二人とも報われないじゃないか。あんな終わり方、辛すぎる。
「オレはどんなことがあっても大切な人とは別れたくない。何があっても。……離れている間ずっと苦しい思いをするだけだ」
「……お前にとってはそうかもしれんな」
「貴方もそうだ。そうでなきゃ、そんなに悲しい表情をするはずがない」
見据えた先にはさっきよりも沈んだ表情の彼。彼は短い溜息を吐き出し、一歩先を進む。
「この世界でならもう一度逢えるかもしれない。霧華さんに」
「冗談はよしてくれ。仮に何万分の一の確率だとしても、お前の妹を救い出す確率の方が遥かに上だ」
「可能性はゼロじゃない。……奇跡だってあるかもしれない」
「…まったく。お前も大概お人好しだな。……どうしてオレの周りにはこういう奴等ばかりが集まるのか」
ふと立ち止まったボルカノが呆れた様に呟いた。振り向いた彼の顔から少しだけ憂いが晴れている。オレがそう思いたかっただけかもしれない。それでもいい。
大切な人と離れ離れになる哀しさ、苦しさを知っている。同じ思いをしている彼の力になりたかった。
「オレだって妹を、リズを探す為に協力してもらっているんだ。だから、ボルカノの大切な人を探すのをオレも手伝うよ」
「私の力を認めてくれた礼だ。喜んで協力しよう」
螺旋上に続いた階段の先に現れた扉。その先に居たのは真紅の衣に身を包んだ朱鳥術士。快諾した彼は炎を宿した様な琥珀色の双眼が印象的な男だった。
候国の塔士として任務を遂行する傍ら、オレは攫われた妹のリズを探すべく翻弄。
世界各地に現れている塔を攻略したうちの一つに彼、ボルカノが囚われていた。塔の最上部を目指す途中、ヴィジョンとして度々現れた彼の記憶は決して楽しい物とは言えないものだった。
異世界から呼び出された女性との出逢い。魔王の盾を巡った末に起きた惨劇。彼女に想いを寄せる姿。旅路の途中、心を通わせそうな場面もあった。けど、彼女は自分の世界へと還ってしまう結末。どうして引き留めなかったのか。オレには分からない。こうして過去に囚われるぐらいに未練だと思っているのなら、尚更。どうして。
「余所見をするなポルカ!」
前列にいた魔獣の牙を剣の腹で凌ぎ、振り払う。一瞬できた隙を後列にいたスカルアンデットに狙われていた。今からでも遅くはない、そいつを迎え撃とうとブロードソードを構える。奴が剣を振り上げた瞬間、炎の塊が頭上を通り過ぎて行った。それは轟音を上げながらスカルアンデットを灰になるまで燃やし尽くした。これで目の前の魔獣に集中できる。軽くステップを踏み、相手の虚を突いた所で魔獣を切り裂いた。
辛くも勝利を収めたオレ達は上へ続く階段を探し始めた。先を歩くグレイとライザ。二人の話を聞きながらもオレは後方を歩くボルカノを気にしていた。
この塔の内部は複雑になっていて、分かれ道が多い。上へ続く階段を探すのも苦労していた。そうこうしているうちに、また分かれ道に出くわす。ここでオレ達は二手に分かれる事とした。グレイとライザは右へ、オレとボルカノは左の廊下を進んでいく。
「ボルカノ。さっきは助かったよ。ありがとう」
「気にするな。術で味方の補助を行うのがオレの役割だ」
彼の朱鳥術はとても頼りになる。アンデットには特に有効な術ばかりだ。数多くの窮地を救われている。さっきもそうだ。あの時声を掛けてもらわなければ致命傷になる可能性もあった。
廊下の隅々をくまなく調べてみるが、上へ繋がる階段は見つからない。このまま一周して他の二人と合流する破目になりそうだ。
二人分の足音が廊下に響く。ヴィジョンと魔物もさっきの戦い以来、現れる気配がない。
「…あれから敵もヴィジョンも見当たらないな」
「油断は禁物だ。どうやらこの塔の主は戦場を潜り抜けてきた戦士のようだからな」
「分かった。……貴方は旅馴れた術士のようだ。戦術も秀でているし」
「賛辞は頂くがそれ程でもない。あのグレイといった男の方が余程」
「それでも彼女を守りながら旅をしてきた」
オレがそう言うと、ボルカノは話の途中で口を閉ざした。オレが指す彼女と彼の思う人物はどうやら一致したようだ。そうでなければあの時と同じ様な憂いに満ちた表情をしない。
足音だけが響き渡る。彼にとってこの話はタブーだったのかもしれない。それでも、オレは。
「ヴィジョンを視る力。お前はオレの過去をどこまで視た」
彼は閉ざしていた口を静かに開き、そうオレに尋ねた。どこまでと言われても彼女が喚ばれて、還るまでだ。プライドが高いと噂される彼にとっては人のプライバシーをと憤慨するのかもしれない。どう答えようか。そう迷っている間に彼は眉尻を下げて、儚い笑みを浮かべてみせた。
「最後まで視たのだろう」
「……どうして分かったんだ」
「そう分かりやすい顔をされてはな」
考えている事が全て顔に出ていると言われたようなもの。バツが悪くなりつい目を逸らした。横でクツクツと喉を鳴らして笑う声が聞こえてくる。
「……ボルカノ。どうして彼女を還してしまったんだ」
「愚問だな。オレの所為で彼女を此方に喚び出してしまった。元の世界に還してやるのが当然の責務だ」
「あんなに愛していたのに?自分の気持ちを押し殺してまで……」
そこが分からない。心の底から愛していた人を引き留めもせずに別れを告げた。最後の別れ際に彼は愛を伝えていた。でも、あれじゃあ二人とも報われないじゃないか。あんな終わり方、辛すぎる。
「オレはどんなことがあっても大切な人とは別れたくない。何があっても。……離れている間ずっと苦しい思いをするだけだ」
「……お前にとってはそうかもしれんな」
「貴方もそうだ。そうでなきゃ、そんなに悲しい表情をするはずがない」
見据えた先にはさっきよりも沈んだ表情の彼。彼は短い溜息を吐き出し、一歩先を進む。
「この世界でならもう一度逢えるかもしれない。霧華さんに」
「冗談はよしてくれ。仮に何万分の一の確率だとしても、お前の妹を救い出す確率の方が遥かに上だ」
「可能性はゼロじゃない。……奇跡だってあるかもしれない」
「…まったく。お前も大概お人好しだな。……どうしてオレの周りにはこういう奴等ばかりが集まるのか」
ふと立ち止まったボルカノが呆れた様に呟いた。振り向いた彼の顔から少しだけ憂いが晴れている。オレがそう思いたかっただけかもしれない。それでもいい。
大切な人と離れ離れになる哀しさ、苦しさを知っている。同じ思いをしている彼の力になりたかった。
「オレだって妹を、リズを探す為に協力してもらっているんだ。だから、ボルカノの大切な人を探すのをオレも手伝うよ」