ひがんのひなぎくたち
二十二、命日②
気が付けば、後ろから閻魔王と
「
「うらやましい」
五官王は勢い良く後ろを向く。まさか、見られているとは思っていなかった。顔が熱くなるのを感じた。
「か、勝手に見んな」
「隠すようなものでも無いんだし、別に良いじゃん」
「そうだよ」
二人とも、悪戯っぽく笑う。これ以上見られないように、五官王はぬいぐるみと手紙を箱へ戻した。
「そのぬいぐるみ、きっと手作りなんだろうね。羨ましい」
変成王の言葉を無視して、五官王は何も言わずに席へと戻る。視線を感じてそちらを見ると、
その後、茶化されながらも、命日祝いはつつがなく続いた。
終わり解散した後、五官王は自室へと戻った。ベッドへ腰掛け、プレゼントの箱を開く。猫のぬいぐるみをそっと取り出し、じっと見詰める。優しく、ぬいぐるみを撫でた。
生前、二人で暮らす部屋を探していた時のことだ。動物を飼っても大丈夫な場所を見つけた。
由佳との幸せな未来を、五官王は一瞬で母親に奪われた。ずっと歪な愛情を向けてきた母親だった。きっと、由佳との結婚が気に食わなかったのだろう。思わず、ぬいぐるみを持っている手に力が入った。母親の事を考えると、吐き気がしてくる。これ以上考えないようにしよう。そう思うも、中々出来ずにいた。
そんな時、ノックの音が聞こえた。ぬいぐるみを机の上へ置き、扉を開ける。そこには、変成王と閻魔王がいた。
「なんだよ」
「そろそろ寂しくなる頃合かと思って」
「きちゃった」
にこやかに笑いながら、部屋の主を無視して二人は中へと入って行く。寂しくはなかった。だが、ちょうど良かったのかもしれない。扉を閉めて、後を追う。
何故だか二人は勝手にベッドの上へと登ると、飛び跳ね始めた。
「何やってんだ……」
「五官君、隙あり!」
笑顔で変成王は五官王に向かって枕を投げつけた。油断をしていたので、顔面に直撃する。床へ落ちた枕を拾い上げると、変成王に投げると見せかけ、閻魔王へ投げつけた。
「ひとにものなげつけたら、だめなんだよ」
そう言うも、閻魔王は五官王へと投げる。それを躱すと、今度は変成王へ向かって投げた。
時刻は午後九時。本来なら、そろそろ静かにしなければならない。けれど、楽しくて気にしていなかった。三人で盛り上がっていると、部屋の扉が少し乱暴に開け放たれた。
「皆様、今が何時だか分かっておられますか?それに閻魔様。九時までにお風呂へ入る約束を、お忘れではありませんよね?」
にこやかに言う篁だが、目は笑っていない。すぐさま枕投げをやめ、謝罪の言葉を言う。閻魔王は二人にお休みと言うと、篁と共に出て行った。
残された五官王と変成王は、静かにベッドへと腰掛ける。
「篁さんって、たまに怖いよね」
「それな」
「そう言えば、五官君。彼女からプレゼント貰えて、本当に良かったね」
羨ましいと言いながら、変成王はそのままベッドへ仰向けになった。
「僕も死んでから数十年間命日にもやし貰ってたけど、その子が亡くなってからは、もう誰ももやしくれなくなっちゃったなあ」
「なんだよもやしって」
「僕の許嫁がね、もやし好きだって言ってたの覚えてたみたいで、毎年もやしがお供えしてあったんだ。そういう少し天然っぽい所が凄く可愛かったな」
「ふーん、そっか。確かに可愛いかもな」
でしょ、と言いながら寝返りを打ち、変成王はそのまま眠る体制へとなった。寝るなよと言うが、聞こえてないふりをしそのまま目を閉じてしまう。体を揺さぶるも、ここで絶対寝てやるという意志は固く、全く動こうとしなかった。
「お前がそこで寝たら俺はどこで寝れば良いんだよ」
「床?」
「ふざけんな」
そうぼやきながらも、人がいる安心感からか先程の気持ちが和らいだ。睡魔がやってくる。変成王に半分占拠されてしまったベッドの隅に丸くなるように寝転がり、五官王は瞼を閉じた。