旧作ひがんのひなぎくたち
閻魔王の部屋でテレビゲームをする事数時間、気付けば夕食の時間になっていた。七時には食堂へ行くよう言われていた事を思い出した駿は、閻魔王にそろそろゲームをやめて食堂へ行こうと言うも、まだ遊んでいたい閻魔王は嫌だと返してきたのでどうすれば良いんだと困ってしまう。そんな時篁 が咳払いすると声を発した。
「閻魔様、そろそろ食堂へ移動しないと晩御飯抜きになりますよ。良いんですか?」
「ごはんよりあそんでたい」
「駄目です」
「いやだー!あそんでたいー!ごかんくんもあそんでたいでしょう?」
「いや、俺は飯が食いたい」
素直にそう言うと、閻魔王は頬を膨らませて不機嫌丸出しの表情になった。
「ほら、五官 様もそう言っていますし、ゲームをやめて食堂へ行きましょう」
「ごはんたべたらまたゲームしてもいいならいく」
「……仕方ないですね、お風呂の時間までですよ」
「やったー!」
コントローラーを置くと閻魔王は勢いよく立ち上がり早足で入口まで行くと、早く行こうと二人を急かす。分かりやす過ぎる行動に駿は思わず笑ってしまう。
(こいつ見た目に反して子供っぽいとは思ってたけど、本当に子供っぽいな。小学生みてえ)
わざとゆっくり入口へ向かっていると篁も同じ事をしており、視線を合わせにやりと笑いあう。
廊下に出ると、何故だか閻魔王は駿へとしがみつき始め、困って篁へ視線を寄越すがただ微笑まれるだけである。
「歩きにくいんだけど」
「おなかがすいてうごけない。ごかんくんおんぶして」
「何言ってんだお前。少し歩くだけだろ。一人で歩け」
そう言うも、閻魔王は既に背中へと回り込み駿の肩へ手をやり、よじ登り始める。その姿が面白かったのか、篁はいつの間にかスマートフォンを取り出し撮り始めていた。
成人男性一人分の重みで潰されそうになるも、変に振り落としたりしようものなら閻魔王に怪我をさせてしまうと思った駿は、覚悟を決め背負って食堂の前まで移動する。廊下を直進した先に食堂はあり、すぐに着くと閻魔王は駿の背中から降り扉を開く。食堂の中には仕事を終えた冥官や獄卒などでごった返していた。首を左右に動かし何かを探し当てた閻魔王は「きょうはあそこだ!」と元気よく言うと、十王候補達のいる机へと走っていく。途中一度転ぶもすぐに立ち上がり皆のいる机へと向かって行った。
その様子を見届けると、篁はにこりと笑い口を開く。
「五官様、本日はあそこで食事をするみたいですね。あ、見れば分かりますよね。失礼失礼」
「いつもあそこなんですか?」
「いえ、毎回違う場所です。最初に来られた方が席を決めているんです」
「へえ、そうなんですか」
席へ向かうと既に全員おり、皆駿と閻魔王が来るのを待っていたようであった。
「待たせてしまってすみません」
宋帝王 と閻魔王の間が空いていたのでそこに腰を下ろすと、すぐに夕食が運ばれてくる。運ばれてきたメニューがピーマンの肉詰めだったので、駿は思わず顔を綻ばせる。生前彼女によく作ってもらう程の大好物だったので、初日から好きなものが食べられる喜びに駿は感謝していた。
「もしかして五官王、ピーマンの肉詰めが好きなんですか?」
駿の左側に座っていた宋帝王にそう問われ思わず驚いてしまう。
「え、何で?」
「大抵一日目は生前好きだったものが出るんですよ」
「へえ、そうなんだ。確かに一番好きな料理といったらこれだったな」
「俺も好きなので、今日は五官王に感謝するしかありませんね」
宋帝王と駿が話している一方で、この料理に眉を顰める者が二人ほどいた。駿の右側に座っていた閻魔王と、閻魔王の目の前に座っていた五道転輪王 である。二人ともピーマンがあまり好きではなかったので、本日の料理を今すぐ変更してもらいたいと思う程であったが、そんな事が出来る筈もなく暗い顔を浮かべただピーマンを睨みつけるしか出来ないでいた。

「さて、食べましょうか。いただきます」
宋帝王がそう言うと皆いただきますと言い、食事をし始めた。
食事が始まると閻魔王と五道転輪王はアイコンタクトを交わし頷きあうと、まず五道転輪王が自分のピーマンの肉詰めを閻魔王の皿へと移し、次いで閻魔王が自分と五道転輪王の分を駿のお皿へとそっと乗せる。
二人とも篁に見られていないと思っていたのだが、しっかりと全てを見ていた篁は笑顔で二人を見つめていた。
「お二人とも、何をなさっているのですか?」
「い、いえ、篁さん、我等は何もしていないでござるよ」
「そうそう、なにもしてないよ」
「では何故五官様のお皿にお二方のピーマンの肉詰めが乗っているのでしょうね?」
「ふ、不思議ですなあ」
「ふしぎだね」
あくまで白を切るつもりでいる二人は知らん顔をして、篁から視線を逸らすが何か思い付いたのか直ぐに閻魔王は視線を戻すと大きな声で言い始めた。
「たかむらくん!きょうはごかんくんがきて、はじめてのばんごはんだから、とくべつにおれのおかずをわけてあげたんだよ」
「拙者もそうでござるよ!」
笑顔で答える二人に篁は溜息をもらすしかなかった。
「五官様、その量食べきれますか?」
「さすがに多いですね」
苦笑してそう返していると左側からお箸が伸びてくるのが見えた。どうやら宋帝王が駿のピーマンの肉詰めを奪い取るつもりらしい。取られた所でまだまだ沢山あるし良いかと思い、やらせたいようにさせていると宋帝王は驚いた表情になった。
「あれ、勝手に取ったの怒らないんですか?」
「流石に九個も食べられないし」
「そうですか、なら後二つ頂いても良いですか?」
「おう、持ってけ」
「ありがとうございます」
にこりと笑うと宋帝王はピーマンの肉詰めをあと二つ取り自分の皿へと乗せた。嬉しそうな表情だったので、駿はあげてよかったなと思っていると、横から篁の説教声が聞こえてくる。どうやら食べ物の尊さについて説教しているらしい。しかし、閻魔王は説教に慣れきってしまっているのか、素知らぬ顔でご飯を食べていた。その一方で五道転輪王は真面目に話を聞き、時折謝る声が聞こえてくる。
少々可哀想だなと思うも、あの初対面でマシンガントークをかましてきた五道転輪王をここまで大人しくさせてしまう篁に思わず関心してしまう。
(あいつもしかしたら、強く言われたら大人しくなるタイプなのかもな)
もし今度話す機会があったら試してみようと思うも、そんな強く話す事が出来るのか些か疑問に思い、やっぱりやめようと思う。そんな時、ふと食堂の入口に視線をやると現・五官王の姿が見えた。
目が合うと笑顔で五官王が近づいてくる。一旦食べるのをやめ軽く会釈をする。
「やあ、食べている時にすまないね。特に用があって来た訳ではないから食べていて構わないよ」
「えっと、用がないって何しに来たんですか?」
「本当に君がいるのか確認しに来ただけだよ。昨日の事が夢みたいだったから、もしかしたら本当に夢だったのかもしれないと思ってしまって」
「はあ、そうですか」
話している途中、説教を中断した篁が五官王の為に椅子を持ってくるも、「すぐに去るから大丈夫、ありがとう」と返されそのまま椅子を戻すのかと思いきや、篁は持ってきた椅子を閻魔王の側へと持っていくとそこに座ってしまった。
「そうだ、ピーマンの肉詰めが好物だったと俱生神達から聞いたんだけど合ってた?」
「はい、大好物です」
「それは良かった」
一口お米を頬張るも、ずっと見られていると食べづらく駿はまた箸を置いた。
「そういえば、明日以降は何をしていれば良いんですか?」
「好きな事をして過ごすと良い。現世に行っても良いし、ここで一日中寝て過ごすでも良い。三途の川方面にある町へ行ってみるのも良いだろう。四十九日まで思うままに過ごしなさい」
そう言うと五官王はウインクをした。綺麗な顔の男にウインクをされ思わずどきりとしてしまうも、何をときめいてるんだと思い首を横に振る。
「分かりました。適当に過ごします」
「もし何か困った事があったら篁に言えば良い」
「はい」
そう返事をすると五官王は頷き、やる事があるからそろそろ戻るというと食堂から姿を消した。
「さて、続き食べるか」
目の前の皿を見てみると、六つあった筈のピーマンの肉詰めが一つ減っており首を傾げていると宋帝王が駿の方を見ながらにやにやと笑い、手元のピーマンの肉詰めを食べていた。犯人が見つかったと思うも、こんな賑やかで楽しい食事をするのが久しぶりだった駿は、何も言わず残ったピーマンの肉詰めをただ食べるのだった。
「閻魔様、そろそろ食堂へ移動しないと晩御飯抜きになりますよ。良いんですか?」
「ごはんよりあそんでたい」
「駄目です」
「いやだー!あそんでたいー!ごかんくんもあそんでたいでしょう?」
「いや、俺は飯が食いたい」
素直にそう言うと、閻魔王は頬を膨らませて不機嫌丸出しの表情になった。
「ほら、
「ごはんたべたらまたゲームしてもいいならいく」
「……仕方ないですね、お風呂の時間までですよ」
「やったー!」
コントローラーを置くと閻魔王は勢いよく立ち上がり早足で入口まで行くと、早く行こうと二人を急かす。分かりやす過ぎる行動に駿は思わず笑ってしまう。
(こいつ見た目に反して子供っぽいとは思ってたけど、本当に子供っぽいな。小学生みてえ)
わざとゆっくり入口へ向かっていると篁も同じ事をしており、視線を合わせにやりと笑いあう。
廊下に出ると、何故だか閻魔王は駿へとしがみつき始め、困って篁へ視線を寄越すがただ微笑まれるだけである。
「歩きにくいんだけど」
「おなかがすいてうごけない。ごかんくんおんぶして」
「何言ってんだお前。少し歩くだけだろ。一人で歩け」
そう言うも、閻魔王は既に背中へと回り込み駿の肩へ手をやり、よじ登り始める。その姿が面白かったのか、篁はいつの間にかスマートフォンを取り出し撮り始めていた。
成人男性一人分の重みで潰されそうになるも、変に振り落としたりしようものなら閻魔王に怪我をさせてしまうと思った駿は、覚悟を決め背負って食堂の前まで移動する。廊下を直進した先に食堂はあり、すぐに着くと閻魔王は駿の背中から降り扉を開く。食堂の中には仕事を終えた冥官や獄卒などでごった返していた。首を左右に動かし何かを探し当てた閻魔王は「きょうはあそこだ!」と元気よく言うと、十王候補達のいる机へと走っていく。途中一度転ぶもすぐに立ち上がり皆のいる机へと向かって行った。
その様子を見届けると、篁はにこりと笑い口を開く。
「五官様、本日はあそこで食事をするみたいですね。あ、見れば分かりますよね。失礼失礼」
「いつもあそこなんですか?」
「いえ、毎回違う場所です。最初に来られた方が席を決めているんです」
「へえ、そうなんですか」
席へ向かうと既に全員おり、皆駿と閻魔王が来るのを待っていたようであった。
「待たせてしまってすみません」
「もしかして五官王、ピーマンの肉詰めが好きなんですか?」
駿の左側に座っていた宋帝王にそう問われ思わず驚いてしまう。
「え、何で?」
「大抵一日目は生前好きだったものが出るんですよ」
「へえ、そうなんだ。確かに一番好きな料理といったらこれだったな」
「俺も好きなので、今日は五官王に感謝するしかありませんね」
宋帝王と駿が話している一方で、この料理に眉を顰める者が二人ほどいた。駿の右側に座っていた閻魔王と、閻魔王の目の前に座っていた

「さて、食べましょうか。いただきます」
宋帝王がそう言うと皆いただきますと言い、食事をし始めた。
食事が始まると閻魔王と五道転輪王はアイコンタクトを交わし頷きあうと、まず五道転輪王が自分のピーマンの肉詰めを閻魔王の皿へと移し、次いで閻魔王が自分と五道転輪王の分を駿のお皿へとそっと乗せる。
二人とも篁に見られていないと思っていたのだが、しっかりと全てを見ていた篁は笑顔で二人を見つめていた。
「お二人とも、何をなさっているのですか?」
「い、いえ、篁さん、我等は何もしていないでござるよ」
「そうそう、なにもしてないよ」
「では何故五官様のお皿にお二方のピーマンの肉詰めが乗っているのでしょうね?」
「ふ、不思議ですなあ」
「ふしぎだね」
あくまで白を切るつもりでいる二人は知らん顔をして、篁から視線を逸らすが何か思い付いたのか直ぐに閻魔王は視線を戻すと大きな声で言い始めた。
「たかむらくん!きょうはごかんくんがきて、はじめてのばんごはんだから、とくべつにおれのおかずをわけてあげたんだよ」
「拙者もそうでござるよ!」
笑顔で答える二人に篁は溜息をもらすしかなかった。
「五官様、その量食べきれますか?」
「さすがに多いですね」
苦笑してそう返していると左側からお箸が伸びてくるのが見えた。どうやら宋帝王が駿のピーマンの肉詰めを奪い取るつもりらしい。取られた所でまだまだ沢山あるし良いかと思い、やらせたいようにさせていると宋帝王は驚いた表情になった。
「あれ、勝手に取ったの怒らないんですか?」
「流石に九個も食べられないし」
「そうですか、なら後二つ頂いても良いですか?」
「おう、持ってけ」
「ありがとうございます」
にこりと笑うと宋帝王はピーマンの肉詰めをあと二つ取り自分の皿へと乗せた。嬉しそうな表情だったので、駿はあげてよかったなと思っていると、横から篁の説教声が聞こえてくる。どうやら食べ物の尊さについて説教しているらしい。しかし、閻魔王は説教に慣れきってしまっているのか、素知らぬ顔でご飯を食べていた。その一方で五道転輪王は真面目に話を聞き、時折謝る声が聞こえてくる。
少々可哀想だなと思うも、あの初対面でマシンガントークをかましてきた五道転輪王をここまで大人しくさせてしまう篁に思わず関心してしまう。
(あいつもしかしたら、強く言われたら大人しくなるタイプなのかもな)
もし今度話す機会があったら試してみようと思うも、そんな強く話す事が出来るのか些か疑問に思い、やっぱりやめようと思う。そんな時、ふと食堂の入口に視線をやると現・五官王の姿が見えた。
目が合うと笑顔で五官王が近づいてくる。一旦食べるのをやめ軽く会釈をする。
「やあ、食べている時にすまないね。特に用があって来た訳ではないから食べていて構わないよ」
「えっと、用がないって何しに来たんですか?」
「本当に君がいるのか確認しに来ただけだよ。昨日の事が夢みたいだったから、もしかしたら本当に夢だったのかもしれないと思ってしまって」
「はあ、そうですか」
話している途中、説教を中断した篁が五官王の為に椅子を持ってくるも、「すぐに去るから大丈夫、ありがとう」と返されそのまま椅子を戻すのかと思いきや、篁は持ってきた椅子を閻魔王の側へと持っていくとそこに座ってしまった。
「そうだ、ピーマンの肉詰めが好物だったと俱生神達から聞いたんだけど合ってた?」
「はい、大好物です」
「それは良かった」
一口お米を頬張るも、ずっと見られていると食べづらく駿はまた箸を置いた。
「そういえば、明日以降は何をしていれば良いんですか?」
「好きな事をして過ごすと良い。現世に行っても良いし、ここで一日中寝て過ごすでも良い。三途の川方面にある町へ行ってみるのも良いだろう。四十九日まで思うままに過ごしなさい」
そう言うと五官王はウインクをした。綺麗な顔の男にウインクをされ思わずどきりとしてしまうも、何をときめいてるんだと思い首を横に振る。
「分かりました。適当に過ごします」
「もし何か困った事があったら篁に言えば良い」
「はい」
そう返事をすると五官王は頷き、やる事があるからそろそろ戻るというと食堂から姿を消した。
「さて、続き食べるか」
目の前の皿を見てみると、六つあった筈のピーマンの肉詰めが一つ減っており首を傾げていると宋帝王が駿の方を見ながらにやにやと笑い、手元のピーマンの肉詰めを食べていた。犯人が見つかったと思うも、こんな賑やかで楽しい食事をするのが久しぶりだった駿は、何も言わず残ったピーマンの肉詰めをただ食べるのだった。