第二幕 其の方へ行くのならば

 うみは眉をひそめた。海凪みなぎは気にせず、微笑みかける。食べにくそうにしながら食事を続ける海を、じっと見た。お箸の持ち方は綺麗だ。それに、食べ方も不快さはなかった。ご飯は米粒ひとつ残さずに食べる。

 ――綺麗に食べて貰えると嬉しいですね。

 作った甲斐があったものだ。そんな事を考えていると、海は食べている最中なのに、箸を置いた。

「見られてると食べにくいんだけど。何?」
「私の事は気にせず食べてください」
「だから、食べにくいって言ってんの。二回も言わせんなよ」
「海君、もしかして低血圧ですか?朝はあまり機嫌が良くないタイプなんですね」

 わざとらしく、にこりと笑った。それに海は舌打ちをする。

凪砂なぎさの事は好きだけど、あんたの事は好きになれねえわ」
「今、好きと言いましたね?なら、式は早い方が良いかもしれませんね。いつが良いですか?明日は……。少し早すぎですかね」
「……なんでそうなるんだよ」

 ため息をつかれる。だが、全く気にならなかった。

 そんな時、凪砂が姿を現した。

「おはよう、お兄ちゃんに海さん」
「おはよう、凪砂」

 先程の不愉快そうな表情から一変、海は嬉しそうな表情へとなった。恐らく、助かったとでも言いたいのだろう。海凪は凪砂に向かって優しく微笑んだ。

「おはようございます。凪砂、良いニュースです。海君は凪砂の事が好きみたいですよ。良かったですね」
「あっ、おい、何言ってんだよ」
「恥ずかしがらなくて良いんですよ」

 ちらりと凪砂を見る。顔を真っ赤に染めていた。嬉しいのか、口元を手で押えていた。

「海さん。……嬉しいです」

 それだけ言うと、恥ずかしかったのか凪砂は逃げるようにどこかへ行ってしまった。

「海君、良かったですね。凪砂も喜んでますよ」
「……うるせえ」

 海も顔が赤かった。やはり、二人は好きあってきている。海凪は確信した。喜びからか、自然と顔がにやけてくる。

 ――これなら、近いうちに……。

 更に顔がにやけそうになった。海凪は立ち上がると、何も言わずに部屋から出ていく。一人になったところで、声を出して笑った。

「こうも思い通りに事が運ぶと、逆に怖いですね」

 ふふっと、笑う。今日は良い日になりそうだ。そう思いながら、海凪は自室へと戻って行った。
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