第一幕 斯くも暗き水底で
腕によりをかけて、海凪 は料理を作った。品数も多く、彩も綺麗だ。我ながら上手く出来たと、自画自賛する。後はこれを運ぶだけだ。そんな時、凪砂 が現れた。
「お兄ちゃん。海 さん、喉が渇いたみたいなの。何かある?」
「温かいお茶でも淹れましょうか」
にこやかに返す。だが、海凪は内心怒っていた。大事な凪砂を使いっ走りに使うとは、横柄にも程がある。
「私が持っていくので、凪砂は海君の所に戻っていてください」
「……お兄ちゃん。私がやりたい」
いつもなんでも海凪に頼っていた妹が、自らやりたいと言う。驚くも、もしかしたら海の事が気に入ったのかもしれない。だからこそ、自分が出来る事をやりたいと思ったのだろう。海凪は嬉しかった。だが、もしお湯で火傷をしてしまったら恐ろしい。なので、淹れる所までは海凪がやった。お盆に湯呑と急須を乗せると、凪砂へ渡した。
「気を付けてくださいね」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん」
控え目に、凪砂は笑った。それに微笑み返してやる。凪砂が出ていくと、海凪は完成した料理を宴会場へと運んだ。全て運び終えたところで、丁度良く凪砂と海が現れた。
「うわ、すっげ」
安直な感想に、海凪はふっと笑った。もっと言葉を尽くして褒められないのかと、思ってしまう。
凪砂は椅子を引くと、海に座るよう促した。その様子を見て、何故だか心がざわつく。
――それ位、自分でやったらどうなんですかね。
そこまで考えて、海凪ははっとした。もしかしなくても、自分はあまり海の事が好きではないんじゃないか。だが、すぐに否定をする。今まで、ずっと凪砂と二人きりだったのだ。だからこそ、異物でもある海が気になってしまうのだろう。きっと、一緒に過ごしていけば慣れていく筈だ。そう思い、海凪は席へと座った。
「では、凪砂と海君の出会いを祝して、乾杯」
飲み物を持ち、海凪は言った。言い終えると同時に、一斉に飲み物を飲む。
ささやかな宴が始まった。海は何も言わずに目の前の料理に舌鼓をうつ。美味しいの一言も無い。だが、美味しいのだろう。幸せそうな顔で食べていた。
「海さん。お兄ちゃんの料理、美味しい?」
「え、あ、うん。……これ、海凪が作ったんだ。すげえな」
凄いと言われ、海凪は嬉しかった。先ほどまでの海への不快感が、少しだけ無くなったようにも感じる。
数百年も料理をしていれば、これ位朝飯前だ。魚は一人でも捌けるようになるし、飽きてしまわないよう、料理のレパートリーだって増えていく。色々な料理を出して、海を驚かせてやりたい。そんな感情が芽生えた。
気分の良いまま、海凪は口を開いた。
「婚儀はいつにしましょうか」
「お兄ちゃん。
「温かいお茶でも淹れましょうか」
にこやかに返す。だが、海凪は内心怒っていた。大事な凪砂を使いっ走りに使うとは、横柄にも程がある。
「私が持っていくので、凪砂は海君の所に戻っていてください」
「……お兄ちゃん。私がやりたい」
いつもなんでも海凪に頼っていた妹が、自らやりたいと言う。驚くも、もしかしたら海の事が気に入ったのかもしれない。だからこそ、自分が出来る事をやりたいと思ったのだろう。海凪は嬉しかった。だが、もしお湯で火傷をしてしまったら恐ろしい。なので、淹れる所までは海凪がやった。お盆に湯呑と急須を乗せると、凪砂へ渡した。
「気を付けてくださいね」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん」
控え目に、凪砂は笑った。それに微笑み返してやる。凪砂が出ていくと、海凪は完成した料理を宴会場へと運んだ。全て運び終えたところで、丁度良く凪砂と海が現れた。
「うわ、すっげ」
安直な感想に、海凪はふっと笑った。もっと言葉を尽くして褒められないのかと、思ってしまう。
凪砂は椅子を引くと、海に座るよう促した。その様子を見て、何故だか心がざわつく。
――それ位、自分でやったらどうなんですかね。
そこまで考えて、海凪ははっとした。もしかしなくても、自分はあまり海の事が好きではないんじゃないか。だが、すぐに否定をする。今まで、ずっと凪砂と二人きりだったのだ。だからこそ、異物でもある海が気になってしまうのだろう。きっと、一緒に過ごしていけば慣れていく筈だ。そう思い、海凪は席へと座った。
「では、凪砂と海君の出会いを祝して、乾杯」
飲み物を持ち、海凪は言った。言い終えると同時に、一斉に飲み物を飲む。
ささやかな宴が始まった。海は何も言わずに目の前の料理に舌鼓をうつ。美味しいの一言も無い。だが、美味しいのだろう。幸せそうな顔で食べていた。
「海さん。お兄ちゃんの料理、美味しい?」
「え、あ、うん。……これ、海凪が作ったんだ。すげえな」
凄いと言われ、海凪は嬉しかった。先ほどまでの海への不快感が、少しだけ無くなったようにも感じる。
数百年も料理をしていれば、これ位朝飯前だ。魚は一人でも捌けるようになるし、飽きてしまわないよう、料理のレパートリーだって増えていく。色々な料理を出して、海を驚かせてやりたい。そんな感情が芽生えた。
気分の良いまま、海凪は口を開いた。
「婚儀はいつにしましょうか」
