水底の式
序幕
――すいひ島。
その島には、古から伝わる話がある。
その昔、海の神の怒りを鎮めるために、百年に一度生贄を二人捧げていた。
生贄となった者が受け入れられると、お役目が終わるまで海は荒れなかった。
ある時、村に赤い瞳を持った兄妹が生まれる。二人は成長するにつれ、異質なまでに美しく育っていった。兄は青年へとなり、妹は少女から旅立とうとしていた年に、海が荒れ始めた。海の神が生贄を差し出せと言っているのだと、島民達は口々に言う。
そこで白羽の矢が立ったのが、この兄妹だった。
人を惑わせるような美しさ。異質なまでの赤い瞳。その内きっと悪い事が起きるに違いない。生贄にはうってつけだった。
兄妹は、ただそれを静かに受け入れた。
数百年に一度、海から人が現れる。その者を決して邪険にしてはならない。何故ならその方たちは、海の神の元でお役目を務めてきた尊ぶべき方だからだ。
そうしなければならないと、今に伝えられている。
