第三幕 悠久の終焉

 失態を犯してしまった翌日。海凪みなぎ凪砂なぎさに呼ばれ屋敷の庭へと来ていた。凪砂が呼んだのだから、うみが隣にいる必要はあるのだろうか。そんな事を考えてしまう。

 「用とは、いったい何ですか?」
 「……あのね、お兄ちゃん」

 数度口を開きかけては、閉ざしてしまう。隣にいた海は、凪砂に小声で何か言うと口を開いた。

 「こないだ、陸に上がる方法を聞いたんだ。それで、あんたか凪砂。どっちかを解放するってさ」
 「そう、ですか」

 二人に戻る方法を知られてしまった。これは、まずいかもしれない。この後、海の言おうとしている事が、海凪には分かってしまった。だから、先に言わせまいとした。

 「ならば、凪砂。あなたが陸へ行ってください。私はそれだけを、ずっと願っていました」
 「……お兄ちゃん。嫌だ」
 「私も凪砂と離れるのは寂しいです。ですが、折角のチャンスなのです。私の事は気にせ――」
 「お兄ちゃんが行って。私、海とならずっとここにいられる。海もそれで良いって言ってくれた。だからお兄ちゃんが行って」

 それは、駄目だ。海の事は好かない。だから、こんな男とずっと一緒にいるのは許せなかった。海凪はにこりと笑う。

 「凪砂。凪砂は私の言う事を聞いていれば良いんです。分かっていますよね」

 その言葉に、凪砂はショックを受けたような表情へとなった。今のは、言葉が良くなかったかもしれない。そう思うも、本当の事なのだから、仕方ないだろう。

 「……凪砂、こんな奴早く」

 海がポケットから何か出したような気がした。それを受け取ると、凪砂は小さく頷いた。

 「お兄ちゃん……。今までありがとう」

 ゆっくりと近づいてくる。何をするつもりなのだろうか。凪砂が、抱き着いてくる。やはり、上へ行く気になったのだろうか。そう思っていると、凪砂の持っていたものが光り始めた。

 「……さようなら。お元気で」

 泡が、海凪の周りに集まり始めた。浮遊する感覚がある。これは、本当にまずい。

 「凪砂っ!」

 そう呼ぶも、凪砂は笑って海凪の事を見ていた。物凄い勢いで上へと押し上げられていく。戻ろうと足掻くも、それは叶わなかった。
4/4ページ
スキ