第三幕 悠久の終焉

 食器と、料理に使ったであろう鍋類を洗う。この後やる事もなかったので、ゆっくりと時間をかけて綺麗にした。これなら、次も気持ちよく使えるだろう。海凪みなぎは満足すると、自室へと戻って行った。

 ベッドの下からとある箱を出す。蓋を開けると、そこには凪砂なぎさから貰った手紙や折り紙がぎっしりと入っていた。一番手前にあったものを手に取る。可愛らしいカエルの折り紙だ。これは、凪砂が初めて折ったものだった。

 ――これを作る時は、大変でしたね。

 上手く折れないと言って、凪砂は拗ねてしまったのだ。だが、海凪は根気よく教えてやった。その甲斐もあり、見事カエルが完成した。思わず、笑みがこぼれた。

 ふと、大昔の事を思い出す。まだ陸にいた時の事だ。この赤い瞳のせいで、海凪は誰からも愛して貰えなかった。だからこそ、年の離れた、同じ色の瞳の凪砂が大切だった。あの子がいなければ、海凪はひとりぼっちだったのだ。

「……凪砂」

 ぽつりと、名前を呼ぶ。あと数日で凪砂と離れ離れになってしまう。身代わりになる人が現れなければ、ずっと会えないままだ。海凪は鼻がツンと痛くなったような気がした。

 ――もう、数日しかないんですよね。

 本当なら凪砂と一緒に過ごしたかった。だが、凪砂は常に海と一緒にいる。これで海凪がいたら、二人の時間を邪魔しているだけだ。それは、したくなかった。

 これ以上何も考えたくない。そう思った海凪は、ベッドへ潜り込むとそのまま目を閉じた。
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