第二幕 其の方へ行くのならば

 「うーん……。どうしましょう」

 海凪みなぎは困っていた。婚儀の準備をしようと思ったのだが、何をどうすれば良いのか分からなかった。白っぽい服ならある。それ以外に用意するものは何だろうか。うみに聞いてみるか悩むも、準備している事はバレずに進めたい。

「思うままにやれば問題ないでしょう」

 式を挙げたら、海の神へと報告しよう。そろそろ来てもおかしくない時期だった。いつもひと月に一度来ていたのだ。という事は、一週間後には恐らく来るだろう。

 そんな事を考えながら、廊下を歩いていた。凪砂なぎさの部屋の前を通りがかる。海の声が聞こえた。どうやら二人でいるらしい。何をしているのか、海凪はそっと襖を開いて見た。何故か顔の赤い海と、真剣な表情をした凪砂がいた。次の瞬間、凪砂が海の顎をすくい、キスをする。味わうように、角度を変えて何度もしていた。そのまま、海の事を押し倒す。

 海凪はこれ以上見なくても良いと思い、そっと襖を閉めた。

 ――凪砂にも、積極的な所があったのですね。

 だが、海はあれで良いのだろうか。自分がリードしたいとは思わないのか、疑問だった。

 ――いや、これ以上は野暮ですね。それよりも、何か準備するものは……。

 にやりと笑う。お赤飯でも炊いてやろう。表面上は二人の結婚の祝杯だ。本当の所は、深く結ばれた記念だった。兄として、それくらいはやってあげたい。夕飯の時、二人のするであろう顔を思い浮かべるだけで、楽しかった。






 夕方になり、海凪は料理を運んでいた。丁度良く二人がやって来る。

 「お二人とも、今日はお赤飯を炊いてみました。美味しそうでしょう?」

 そう言うと、二人は真っ赤になった。海は何で知っているんだと言いたげな表情をしている。凪砂は視線を彷徨わせていた。

 「明日、二人の式を挙げようと思っているのです。めでたいですね」

 付け足すと、二人はどこかほっとしているように見えた。席へと座り、食事が始まる。いつも通り言葉数は少なかったが、二人の間には、確かな絆が芽生えていた。この二人を引き裂くのは、少々可哀想だ。一瞬そう思うも、海凪は直ぐに考えを否定する。

 ――凪砂。一週間後には上へ行けますからね。

 じっと凪砂を見る。視線に気が付いた凪砂は、首を傾げこちらを見返してきた。微笑んでみせると、小さく微笑まれる。何故だか、ひやりとした。
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