#06 誰も知らないあなたの顔
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「何万人、何千人という人間が、何故偽者に気づかない。」
「本物も偽者もないからさ。」
隣の光ちゃんが、顎に手を添える。
「コイツらはネットのアイドル、偶像だ。偶像ってのは、本人の意思だけでは存在しない。葉山も菅原も、自分の力だけで地位を築いたわけじゃない。周囲のファンの幻想によって祭り上げられることにより、タリスマンやスプーキーブーギーになることができた。アイドルの本音や正体と、そのキャラクターとしての理想像とはイコールじゃない。本人よりむしろファンの方が、アイドルに期待されるロールプレイを本物よりより上手く実演できたとしても不思議じゃない。」
「犯人はコイツらのファンだと…?」
『…息をして汗をかいて、ご飯を食べる、私達と同じ。』
鋭さを宿した柔らかな色の瞳に映された狡噛さんが、頷く。
「メランコリア、タリスマン、スプーキーブーギー。この三つのキャラクターを完全に熟知し模倣することができた…それだけ熱を込めてファン活動をしていた奴が、ホンボシだ。」
「それをどう見分ける?三つのアバターに共通するファンというだけで、一体何人いると思ってるんだ。」
『だけど実態は、動かしてる"誰か"は確かに存在します。』
『絞り込む条件も、そこに在ります』と光ちゃんがスクリーンを見上げる。
『まずはタリスマンから…彼のコミュフィールドの常連のうち、上位百人について一日あたりの滞在時間をグラフにして下さい。葉山公彦の死亡推定時刻を重点的に……』
「この辺のゲストの滞在時間、なあんか軒並み落ち込んでるねえ…」
「タリスマンの評判が下落した時期ですからね…」
縢くんに返しながら眺めるグラフは、確かに下降線を辿っている。
「それが、二ヶ月前のこの日を境にして持ち直す。」
そして、そのポイントはまさしく。
「ここで葉山が殺され、タリスマンが誰かに奪われた…」